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Channel: 山梨百名山から見る風景
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スズランほころぶ 芦川スズランの森  平成30年5月14日

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 午後から内科の受診があったのだが、想定外に早く診察が終わり時刻はまだ3時半を過ぎたばかりだ。日が長くなったことだし、短時間の散策ならば可能な時間だ。芦川のスズランの森を訪れてみることにする。ルートを短絡して敷地内の裏側に位置する駐車場に車を乗りつける。小川を渡ってすぐ向こうにスズランの森が広がっている。


    芦川スズランの森。電気保護柵が周辺に張り巡らされている。


    圧巻のスズランの葉。少しだけ咲き始めている。


    咲き始めたスズラン


    同上


    イカリソウがたくさん咲いている。


    満開のイカリソウ。

 今回の目的はこのスズランでは無く、柵の外にあるツルシロカネソウの群落である。三ツ峠や黒岳から節刀ヶ岳に至る山塊にもあるのだが、鹿の食害か激減してしまっており、かつての大きな群落は消失してしまっている。スズランの森では保護柵の外にあるのだが、訪れる人が多いためか食害から逃れて比較的多くの株が残っている。


    森を映す小川の流れ


    ツルシロカネソウの群落。葉はたくさんあるが花はまばらにしか咲いていない。


    ツルシロカネソウ


    葉は多いが花を付けているのはほんの少し。今年は外れ年のようだ。


    こちらは茶色い葉のツルシロカネソウ


    シコクスミレの葉


    花は結実している。


    ラショウモンカズラとマムシグサ


    仏炎苞と付属体が緑色。ホソバテンナンショウのように見えるが?


    別株。葉は広めで全縁。マムシグサ(カントウマムシグサ)になるのか?良く分からないテンナンショウ属。

 スズランは今年は当たり年のようで期待できそうである。期待していたツルシロカネソウはどうやら外れらしい。

 花の撮影をしていると管理人さんがやって来ていろいろと情報交換することが出来た。保護柵で囲ってもらうまではいろいろと苦労があったようで、陳述書を何度も書いてやっと甲府市のほうで柵を設置してくれたそうだ。スゲやススキがはびこってしまった場所はスズランの根を傷つけないように丁寧に除去を行い、ようやくここまで復活してきたと伺った。周辺の黒岳の食害の状況や昨年保護ネットを設置した事などもお話しして、同じ思いで植物の保護に携わっていることが良く分かった。我々も頑張らなければならないと新たに思わされた。

やはり見つからないあの花 山梨県境付近の東海自然歩道へ  平成30年5月16日

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 レッドデータブックのデータとネット上の記事を探し見しながら、このあたりのあるのでは?と目星をつけて出かけてみる。あまり時間がとれないので全行程を歩くのは無理で、疑わしきポイントまで短絡して歩く。


    苔類、シダ類は全くわからない。さらに木も全くダメ。勉強しなければ。


    こちらも良く分からないテンナンショウ属。仏炎苞、付属体とも緑色のタイプだが、葉には浅い鋸歯がある。


    こっちは緑と黒紫が混合したタイプ。同じ場所で同じものだろう。


    何だか良く分からないので、全部マムシグサということにしておこう。


    少し湿った林床にはクワガタソウ。


    少し明るいところにはムラサキサギゴケ。


    花ばかり見ていてあまり良く観察したことが無かったが、地面を這うように輪生する根生葉があった。


    それっぽい葉が・・・と思ったがニリンソウ。


    セントウソウ(セリ科セントウソウ属)


    クルマムグラ(アカネ科ヤエムグラ属)。


    クルマムグラ。茎に毛が生えていない。


    水の流れる場所では無くて湿った林の中に生えていたハナネコノメソウ。


    咲き終えたハナネコノメソウ。

 枯れた沢沿いの場所が怪しいかと樹林の中とススキ野原を横切って現地まで短絡したが、残念ながらお目当ての花は発見できなかった。その花とは、今年の課題の花、トウゴクサバノオである。もう花期は過ぎているはずなので葉っぱと特徴的なサバの尻尾のような種が見られればと思ったのだが発見できなかった。


    ヒメレンゲ(ベンケイソウ科キリンソウ属)。普通は根元から分かれるように固まって咲くが・・・


    バラバラに咲いていると別の花のように見えてしまう。


    こういうふうに絨毯状に咲いているのは初めて見た。


    出口のところにアマドコロ。


    茎に稜がある。


    道路脇の花壇に咲いていたサクラソウ。

 今回もまたあてが外れたトウゴクサバノオである。富士山の静岡県側ではさほど難無く見られるようであるが山梨県側はどうも手強いようだ。探し続けていればそのうちきっとお目にかかれる日が来るだろう。

河口湖界隈を花散策  平成30年5月18日

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 別の場所にまだ見たことが無い花を探しに行こうかと思ったのだが、歩くと頭がクラクラして体調が悪過ぎ、とてもではないが山に登れる気がしない。さほど歩かなくても良さそうな場所に変更して花の写真を撮りに行くが、おそらく1ヶ所目はもうすでに花が終わっている公算が強い。


    いつもとはちょっと違うルートで現地に入る。ササバギンラン。


    これもササバギンラン。風が強くて揺れまくり、なかなか撮らせてくれない。


    それっぽいのがあったが、葉っぱも花もちょっと違う。小型のササバギンラン、あるいはギンラン。


    やっと見つけた一株はもう花が終わっていて倒れてしまっていた。残念。


    道路の脇にはオドリコソウの大群落。


    オドリコソウ。雑草の如くたくさん生えていた。

 見たかったラン科の花は予想していた以上に訪問時期が遅く、しかも一株だけしかお目にかかれずに撤退となる。

 次の場所に移動する。初めて訪れる場所だがそれなりに数はあるらしいので、たぶん行けば見つかるだろう。


    居ました、コアツモリソウ。しかし思っていたほど数は無い。


    パラパラと林の中に散在している。


    山肌が乾燥している印象を受けるこの場所はこの花が生育するためにはあまり快適な環境とは思えない。数を減らしてしまうのではないだろうか?

 さらにもう1ヶ所行ったことが無い場所に行ってみる。こちらはほとんど花は期待できないが、今後咲くであろう花のための下見である。


    滝


    こっちは有名な滝。アジサイ属の木があるのを確認する。


    普通のマムシグサ・・・だろう。


    痛そうなアザミに蔓が絡んでいる。


    初見のヒレがついたアザミ、ヒレアザミ。ヨーロッパから東アジア原産の帰化植物らしい。


    ヒロメノトガリアミガサタケ。

 さほど歩いたわけでもないがクタクタである。とりあえず花の様子を見てきたというところだが、あまり満足感は無い。やはり花に出会えずとも足で探したほうが私には似合っているようだ。しかし、寝不足は体に堪える。まだ数日は体調が戻らなそうだ。

植物調査および鹿食害調査で南アルプスへ  平成30年5月19日

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 山梨県山岳連盟自然保護グループの南アルプス植物調査および鹿食害調査があり同行させていただいた。今回訪れる場所は山岳レインジャー活動で毎年どこかの山岳会が調査に訪れている場所であり、他の山岳会に先がけて自然保護グループが訪れることとなった。この調査に同行させていただくのは2年ぶりである。


    今回は自然保護グループの活動における中心的な人物ばかりが集まった。


    メンバーの一人が大きなカツラの木に着生している植物を発見。望遠レンズで覗いてみるとヤシャビシャクだった。花は満開。


    この界隈に生えているテンナンショウ属はほとんどがユモトマムシグサだった。


    ユモトマムシグサ。鋸歯のある5枚の葉、葉よりも上に出る仏炎苞が特徴。


    白いサナギイチゴ


    ピンクのサナギイチゴ


    アオチドリ。葉がちぎれていて食害に遭っている。


    まだ花が開いていないアオチドリだが、こちらも葉がちぎれている。


    まだ開花していないヒメムヨウラン。1本は折れてしまっている。


    イチヨウラン。山梨県レッドデータブック2018年版ではⅡ類からⅠB類に格上げされた。


    イチヨウラン。この界隈のイチヨウランはウズラ葉だった。


    イワセントウソウ。風で揺れるうえに花が小さくてピントが合わせにくい。


    ホテイラン。今回の一番の調査対象種。


    白いホテイラン。アルビノでは無くて花がしおれかけて色が抜けたもの。背萼片(花の上に出ている3本の萼片)が倒れている。


    苔が減って斜面が乾燥化しつつあり、年々数を減らしつつあるこの場所のホテイラン。危険な状況にある。

 2ヶ所を巡り、ホテイランは開花している株だけで20株以上確認は出来たが、葉を含めた個体数でも50株程度しか確認できなかった。生存して行くうえでギリギリの個体数しか無いと推定される。鹿の直接の食害というわけでは無く、食害による二次的変化の山肌の乾燥化、温暖化による影響、登山者の増加による山肌の荒れと硬化など、複合的な要因がこの花の減少につながっていると推測される。保護柵の設置が良いのであろうが、確実な効果が得られるかどうかは疑問があり、実際の保護はかなり難しいのではないかと思われる。

ミツバツツジ咲く三ツ峠  平成30年5月20日

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 三ツ峠ネットワークで新たな保護柵設置のために人手が必要だという連絡が山岳連盟自然保護グループからのメールで届いた。6月の山岳連盟主催の三ツ峠清掃登山では講師を仰せつかっており、作成したスライドが三ツ峠山荘のパソコンで正常に動いてくれるのかどうかを確認しておかなければならないことや、中村さんに相談しておきたいこともあったりしていずれにせよ三ツ峠には近々行かねばならなかったため、この保護柵設置作業に参加させていただいた。

 朝7時に御坂の登山口に集合するが、当直疲れがまだ抜けずなんとか時間には間に合ったものの何となく船酔いしたような頭がクラクラした感じが抜けない。歩き始めるとあっという間に息が上がり心臓が煽る。メンバーには先に行ってもらい三ツ峠山荘前に8時半の集合時間から遅れること15分、やっと三ツ峠山荘に到着したが、既にメンバーは作業場のほうに移動した後だった。


    マムシグサだが、葉っぱが5枚、しかしユモトマムシグサとは仏炎苞の形が違う。


    後ろから見た姿は恵比寿さまの耳たぶのように大きな仏炎苞の横の部分が垂れ下がっている。


    これは間違いない。


    初めて見る(いや、以前にも見ていたが気付かなかっただけ)ミミガタテンナンショウ。


    少しピンク色がかったツルシロカネソウ。


    葉っぱが5枚、ゴヨウイチゴ(だと思う)。

 前日に三ツ峠ネットワークのメンバーにより大部分の作業が終えており、残った部分のネット張りとポール強化のためのワイヤー張りをお手伝いさせていただき、午前中で作業は完了した。さすがに個人でやっている茅ヶ岳や湯村山のネットとは次元が違う、頑丈な保護柵が完成した。手慣れた三ツ峠ネットワークの人たちの手際良さに感心したが、さらにネット張りのテクニックは大いに勉強になった。今後の保護柵設置にいろいろ活用出来そうである。


    出来上がった頑丈な保護柵。

 朝はガスっていた空もお昼が近付くにつれてガスが晴れ、青空と富士山が姿を現した。ミツバツツジが見ごろを迎えており、山頂界隈は登山客でごった返していた。満開のミツバツツジを前景に、三脚を担いで山頂界隈から富士山を撮り歩く。


    ミツバツツジが見ごろを迎えていた三ツ峠。


    山頂のミツバツツジと富士山


    ミツバツツジと富士山


    同上


    同上


    同上

 存分にミツバツツジを楽しんだ後に三ツ峠山荘に立ち寄らせていただき、コーヒーをご馳走になりながら昼食となる。小屋主の中村さんを交えて1時間ほど花談義し、パワーポイントの動作も確認させていただいて下山となった。保護柵の設置も勉強になって良かったが、これほどたくさん咲いた三ツ峠のミツバツツジを見るのは初めてで、かつこんな綺麗な富士山が眺められるとは全くの想定外だった。こんなことならもう少ししっかりした三脚を持って来るんだったと少しばかり後悔しながら下山となった。

ISS撮影ならず 竜ヶ岳  平成30年5月20日

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 昨日の午後8時ごろ、および本日の午後7時ごろ南東の低空を国際宇宙ステーションISSが通り過ぎて行くはずだ。竜ヶ岳か高下あたりから見ると富士山の山頂を弧を描いて通り過ぎて行き、ちょうど明るい木星が富士山の上あたりで輝いている構図になる・・・はずだった。前日の夕方はスッキリとした空が広がってISS撮影には好条件となったのだが、止むごと無き用事のために撮影には行けず仕舞いになった。この日もお昼頃から綺麗な富士山が姿を現し、三ツ峠から下山した午後4時ごろでも若干の雲が出たものの富士山は見えていた。寝不足の疲れは残っているもののこの好機を逃すわけには行かない。相棒のうーさんと一緒に竜ヶ岳に登る。


    休憩ベンチのある展望台から見る富士山。これだけ青空が見えていれば今日のISSはいただき!と思ったが・・・。


    東屋に到着。この頃には空は灰色の雲に覆われてしまう。

 予定では東屋から登ったところの斜面あたりを撮影場所に予定していたのだが空模様が怪しくなってきたので東屋から狙うことにした。時刻は午後6時、ISSが富士山頂を飛んで行くのは7時15分ごろのはずだ。カメラ2台をセットして待つが、雲が晴れる様子は無く厳しそうな空模様になってしまう。


    到着した頃にはまだ少しは青空が見えていて、少しは期待が持てたのだが・・・


    午後7時ごろには富士山山頂の裏側に雲が出てしまう。


    そろそろ富士山の裾野にISSが現われている頃だがこれでは見えそうもない。明るい木星が見えていない。


    山頂をISSが越えて行く頃だが、全く見えず。


    期待して登って来たが残念。本日のISSは敗退。撤収して下山する。

 半月に近い月が雲を透かしてようやく見えたいたが、西の空でひときわ明るく輝いている金星も見えなかった。富士山頂に輝く木星とISSのコラボレーション撮影の絶好の機会だったのだが敗退となる。またの機会を待とう。

カモメラン保護作戦 御坂山塊の山へ  平成30年5月21日

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 そろそろカモメランが花穂を出している頃だろう。保護のために昨年2ヶ所で保護ネットを設置したが、強風に耐えきれずにポールの大部分が曲がるか折れてしまっているのだが、メインテナンスに行けていない。冬の間に荷揚げする予定でいたのだがこれも行けずにこの季節になってしまった。しかし今後当直やら学会やらいろいろと行事が詰まっており、週末に時間がとれる保証は無く、無理してでも平日に時間を作って行くしか手段が無くなってしまった。多くの登山者が楽しみにしている最大の群生場所は昨年の夏に大規模な鹿の食害と踏み荒らしに遭って悲劇的な状況になってしまったのを目撃している。登山者の楽しみを奪わないようにと配慮してロープだけ張ったのだが、鹿は全く遠慮が無くほとんどの葉が消滅し、カモメランを守ることが出来ずに涙が出るほどに悲しい思いを味わってきた。もうそんな思いはしたくないので、保護ネットの設置は開花する前の最重要課題である。

 仕事を片付けて資材を購入し、登山口に到着したのはもう午後4時近くになってしまった。ポール20本を担いで現地に到着したのは5時半になってしまう。


    いざ、出陣。


    普通のマムシグサ


    中腹のユモトマムシグサ。


    ほとんどが鋸歯のある5枚葉である。


    新緑の森を見上げる。


    ミツバツツジが見ごろ。


    現地到着。良くこの状態で一冬越せたものである。とりあえずは倒れていない。もう1ヶ所も同じような状態だった。


    本日荷揚げした荷物。

 まずは食害に遭った場所を見に行ってみる。おそらくはほとんど葉が出ていないだろうと予想していたのだが、以外にも葉は出ており、幼弱な小葉も見える。


    食害に遭った場所。想定していたよりも葉が出ている。しかし、花穂はほとんど出ていない。


    ざっと見て確認できたのは1本だけだった。昨年は50本くらい花穂を確認しているので激減である。

 これだけ葉が出ているのであれば、新たな食害に遭わなければ保護してまた花を咲かせてやることが出来るのではないだろうか。場所の広さから見て必要なポールは30本くらいと予想される。本日の荷揚げ分だけでは足りないのでここは後日にして、昨年囲った場所の1ヶ所を先に修復する。


    昨年囲った場所の内側。葉数があまり増えているようには見えない。


    しかし花穂は確実に増えている。囲う前の一昨年は1本、昨年は3本、そして今年は8本の花穂が確認できた。保護ネットの効果が現れたとみて良いだろう。


    もう開花している気の早い株もあった。


    ポールを抜いてみるとほぼ全てのポールが折れ曲がってしまっていた。折れているものもある。    

 ほとんどのポールが地面に差した部分で折れ曲がってしまっており、真直ぐに出来るものは真直ぐに直して新しいポールを添えて2本にして差し直す。折れてしまっているものはネットから外して新しいポールに変えて、補強具として再利用する。あっという間に午後7時を過ぎて暗くなりヘッドライトを点灯しての作業となる。中途半端にネットを開放した状態で作業を終えるわけにも行かず、8時半を過ぎて不完全ながらなんとか1シーズン耐えられるくらいの保護ネットが完成した。もう真っ暗になっていて作業後の証拠写真は撮れなかった。

 もはや夕闇の中を下山するのだから、何時になっても同じである。久しぶりに展望台からの夜景を見に行く。ちょうど良くミツバツツジが咲いていた。


    河口湖の夜景と富士山。左上の明るい星は木星。


    ミツバツツジと夜富士。

 必ずまた来るからとカモメランに挨拶して下山する。10時に駐車場に到着、自宅に着いたのは11時になってしまった。

 おそらくあと2回くらい行かないと山頂付近の群生地は囲い切れないのではないかと思う。他の場所に他の花も見に行きたいのだが、優先順位はこちらの保護ネットが上である。来週のうちにはなんとかしてやらなければならない。

続カモメラン保護作戦  平成30年5月25日

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 先日保護柵の修復に訪れた御坂山塊のカモメランだが、今回は新たに山頂付近の最大の群生地を囲うために再訪した。当直明けできわめて体調が悪いが、混雑が予想される週末を避けると日程的にこの日か翌週の月曜日しか行ける日が無い。ポール30本が最低限必要なので、ザックに20本、片手に5本ずつのポールを持って登る。


    今日は今までで最も多い数のポールを荷揚げする。


    柵に囲われていない場所のカモメランは葉数も花数も激減している。昨年は10本くらい咲いたはずだが確認できたのは1本だけ、しかも食害を受けたらしい。


    1ヶ所目の保護柵。ここは林の中でほとんどポールは損傷されていない。


    この場所はカモメランだけでなく他の植物も囲い込んでいる。ユキザサ、ショウマ類、ツルシロカネソウなど。


    カモメランはしっかりと蕾を付けてくれた。


    前回補修した2ヶ所目の保護柵。手前の4~5本が修復完了しておらず、まずはこちらを修復する。


    折れたポールを再利用して強化した。


    蕾だった花が咲き始めていた。


    ここを囲った理由はこの場所のカモメランが特殊な花を付けるからである。


    上萼片が白、唇弁が濃い紫色のウズラ模様が入るこの山特有のカモメラン。


    本日荷揚げした30本のポールとネット。これに前回残ったポール6本と残置していったワイヤー、ネットを加えて後ろ側の群生地を囲い込む。

 午後5時から今回の目的である山頂付近の群生地のネット張りにとりかかる。保護ロープの外側にまずポールを立ててその後保護ロープを取り外し、ポールにネットを固定して行く。さらにポールを強化するために登山道側は残ったポールで補強し、裏側はワイヤーを張って補強する。登山道側にワイヤーを張ると見えにくいワイヤーに誤って登山者が足を引っかけてしまうかも知れないための配慮である。

 6時過ぎ、空腹のため休憩するついでに展望台に行ってみる。ミツバツツジは満開を過ぎて散り始めていた。


    黒岳展望台から見るミツバツツジと富士山


    同上


    十二ヶ岳・節刀ヶ岳方面。朝霧高原は霧におおわれていて毛無山塊が雲海に浮かんでいた。

 作業に戻るが、あっという間に日が暮れてヘッドライト装着しての作業となる。夜の9時半近くになってようやく保護柵が完成した。これで一冬越せるのかどうかは心配であるが、おそらく登山者の踏み荒らしや鹿の食害を受ける秋までのシーズンはなんとか耐えられるだろうと思う。さあ、カモメランよ、復活してまたたくさん花を咲かせてくれ。


    出来上がった保護柵。

 疲れ切ったフラフラの体で転倒に細心の注意を払いながら、10時20分に下山した。

 今年も山岳レインジャー活動の一環でここのカモメラン調査が行われる。おそらくは悲惨な報告がなされることだろう。この場所だけでは無くて瑞牆山のカモメランもかなり数を減らしていてほとんど花が咲かなくなってしまっているとの報告を受けている。富士見平小屋に用事があることだし、6月になったら見に行ってみようと思う。そして保護できるならば、早急に行動を起こさなければならないだろう。

レンゲツツジ咲く甘利山へ(前編)  平成30年5月27日

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 例年ならばレンゲツツジには若干時期が早いのだが花期の早い今年ならばもう咲いているかも知れない。空は霞んでいて富士山は見えない公算が強いが、他にも見たい花があったので今までにまだ歩いたことが無い椹池からのコースを歩いてみることにする。


    椹池の駐車場と白鳳荘。真直ぐに進むと甘利山への登山道に入る。


    椹池の近くに咲くクリンソウ


    マムシグサ。葉が広く普通のマムシグサと思われる。


    こちらは葉が細いタイプ。ホソバテンナンショウになるのではないだろうか?いずれも広義のマムシグサに含まれる。


    登山道脇に生えていたササバギンラン。もうすぐ咲きそうだ。


    ユキザサ


    タニギキョウももうすぐ咲きそうだ。


    ツクバキンモンソウ


    笹の茂る登山道の森の中に点々とヤマツツジが咲いている。


    甘利山への分岐に到着。

 椹池の案内板に書かれたコースタイムでは甘利山山頂まで1時間半だったが、この分岐まで1時間半かかった。山頂はもうすぐのはずだが、色気を出して直進してその先にあるピークに立ち寄ってみることにした。その先は笹藪の中のやや不明瞭な道でグッと下り坂になっていた。


    途中から富士山が見えた。


    グッと下り坂になる。どこまで下るこの道?


    下にヤマツツジが咲き道が見えてきた。目指していたのはその先にある小ピーク。


    小ピークの山頂には祠が立っていた。ここが南甘利山と思っていたがどうもそうでは無いらしい。

 GPSではこの小ピークまで破線の道がついており、てっきりここが南甘利山だと思っていたがどうやらそうでは無いらしい。下って来た登山道の出口に付いていた案内板を見ると「南甘利山を経て椹池」と書かれていて、どうやら途中で通り過ぎた小ピークが南甘利山だったのかも知れない。祠の立つピークで小休止して軽く食事をとるが、持ってきたはずのパンを車の中に置いてきてしまったようで、予備のパンを半分とおやつで済ませる。


    立ち寄った池の周辺はクリンソウのパラダイスだった。


    圧巻のクリンソウ群落。山梨県内で最大級の群生地。


    クリンソウ満開


    綺麗な水が湧き出していた。


    しかし鹿の食害跡があり、池の周辺には鹿の足跡がたくさんあり、水場になっているらしい。いつやられるかも知れないクリンソウの群落。

 素晴らしいクリンソウの群生地に出会うことが出来た。このようなパラダイスがあるとは知らず、ここで30分以上時間を費やして存分に写真を撮らせてもらった。手放しでこの景色を楽しんでいられるわけではなく、クリンソウの中には鹿の食害を受けているものも見受けられ、いつ食べられてもおかしくない状況にあった。周辺のバイケイソウが刈り倒されているところを見ると、この環境を維持するために手入れしてくれている人たちがいるようである。

 予定よりもだいぶ時間を超過してしまったが、この先GPSに出ていない道(らしきもの)をたどって甘利山に向かう(後篇に続く)。

レンゲツツジ咲く甘利山へ(後編)  平成30年5月27日

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 椹池から南甘利山と思われるピークを越えてその先の祠のある小ピークにまで行き、池に立ち寄ってクリンソウの群落を楽しんで来た。これから甘利山に登り上げるのだが、道標は付いていないものの尾根に行き着けそうな笹の中の細い道があったのでそれを登ってみることにする。途中で道が無くなってしまうのではないかと心配したが、上に行くほど笹が刈り払われて道は明瞭になっていた。


    池のほとりのクリンソウとヤマツツジ


    笹原の中の道を登る。GPSにこのルートは載っていない。


    40分ほど登って稜線に抜け出た。向こうは奥甘利山。


    甘利山山頂に向かう。


    レンゲツツジは5分から7分咲き。あと1週間もすれば満開になりそうだ。


    山頂付近にはサクラスミレが散在していた。

 甘利山山頂に到着したのは午後3時になってしまった。11時に椹池を出発して1時に到着の予定だったのだが、寄り道をして写真もたくさん撮ったので大幅に時間がかかってしまったが、それに見合うだけの良い風景は見てきた。満足である。富士山は霞んでしまっているがなんとか見えているだけましだろう。三脚を担いで写真を撮りながらゆっくりとグリーンロッジの駐車場に下りる。


    山頂から見下ろすレンゲツツジの群生地。下側はあまり花付きが良いとは言えない。


    霞んでいるが富士山が見えている。


    レンゲツツジと富士山


    大きなヤマツツジと富士山

 グリーンロッジの駐車場には午後4時15分ごろに到着した。あとは道路に沿って付いている登山道をひたすら下山するだけである。途中に広大な植林地を保護柵で囲っている場所があり、その中にはたくさんのラショウモンカズラが囲われて咲いていた。食害で数が減っている花だけに、目的が違うにしろ囲われて保護されていることは良いことである。5時45分に椹池に下山した。

 今回見たかった花はレンゲツツジの他に以下の2種類である。情報をいただいていたのでそれほど難無く探し出すことが出来た。


    ヤマブキソウ。山梨県で自生のこの花に出会うのはなかなか難しい。訪問時期が遅く咲いていたのはこの1株だけだったが、個体数も少ない。


    ほとんどが結実していた。


    もうひとつがこのヒトツボクロ。少し薄暗い森を好むうえに保護色の黒っぽい葉なので見つけにくい。


    花が咲くにはまだ2週間くらい先になりそうだ。個体数もあまり多いとは言えない。

 クリンソウとレンゲツツジの他に探していた絶滅危惧種の2種類の花を見て歩いてきた有意義な山歩きだった。ヒトツボクロは今まで富士山麓でしか見たことが無かったが他にもあちらこちらで見つかってきており、茅ヶ岳にも数は少ないながらあるという情報もいただいている。

着生ランを再訪する 南部町へ  平成30年5月28日

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 2週間ほど前に訪れた際はまだ蕾だったマメヅタランの花がそろそろ咲いている頃だと思う。高い木の上でしかも距離のある場所に着生しているこのランは風が吹いていると木が揺れてブレた写真しか撮れない。かつ、天候が悪いと光が入らずシャッタースピードが遅くなってこれまた良い画像が得られず、撮影技術が難しいだけでなく気象条件にも左右される。この日の天候は曇だが風は少なく穏やかな天候である。良い日を待ってなどと言っていると花期を逃してしまううえに行ける日も限られてしまう。午後から出かけてみる。


    マメヅタランが咲いている。200㎜望遠レンズでこの程度しか追えない。しかも、木の葉が視野の邪魔をするようになってきた。


    570㎜望遠に変える。ちょうど満開のマメヅタラン。山梨県で見ることが出来るのが嬉しい。


    さらに1140㎜。


    トリーミング。唇弁があって確かにランの形をしている。


    別の木


    トリーミング。びっしりと咲いている。


    こちらはムギラン。


    570㎜望遠。花ははっきり分からない。


    1140mmで覗いてみるとそれらしきものが付いている。


    真ん中上の黄緑色の飛び出ているもの、さらにその下にも花らしきものが何個か付いている。


    別の場所。蕾らしきものが4つか5つ見える。


    周辺の木を探してみるが、あったのは別の花。


    テイカカズラ(キョウチクトウ科 テイカカズラ属)

 お目当てだったマメヅタランはちょうど満開の良い時期に訪問出来たが、ムギランはあと2週間くらい先になりそうだ。1140㎜望遠にするとレンズのF値が11くらいの暗いレンズになってしまうため、Iso640に上げてもシャッタースピードが10秒よりも遅くなってしまい、再三撮影した画像でも使い物になるのは10枚に1枚程度しか無かった。やはり木の上の高い場所に居る植物の撮影は難しい。

 もう1ヶ所、沢沿いに咲く別のランの様子を見に行く。


    ユキノシタが咲いていた。


    ユキノシタ


    イワタバコはもう少しで咲きそうである。


    様子を見に行ったのはこの筋の入った美しい葉を持つラン。今年は花付きが良さそうである。


    あと1ヶ月くらいだろうか。開花が楽しみである。

 ムギランとマメヅタランは周辺の木を探して歩いてみたが、新たに着生している木は見つからなかった。沢まで下りてみれば見つかるかも知れないが、現在沢に下りる道は崩落のため通行禁止になっている。もうひとつの美しい葉のランも含めて、この3種は今年発刊された山梨県レッドデータブック2018年版で新たに絶滅危惧種ⅠB類に登録された貴重な植物である。

富士北麓花散策  平成30年5月29日

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 「花咲かじじい作戦」を展開している山の様子を見に行きたかったのだが朝から天候が不順で雨が降ったり止んだりしている。登山口に向かう途中で雨足が強くなってきたため登るのは止めてあまり登らない場所の花散策に切り替える。今回の場所は5月11日にも訪問しているがお目当てのスズムシソウやコアツモリソウはまだほとんどが蕾だった。それから2週間以上が過ぎてもう少し時期が遅いかも知れない。


    いつもとはルートを変えて枯れた沢の中を歩いてみる。少し荒れた沢。


    クルマムグラ。環境的にツルシロカネソウがあるのではないかと思ったが見つからず。


    沢の中にもコアツモリソウが咲いていた。

 沢の中は荒れていたが、ところどころ砂防工事を行った跡が見られた。あまり目ぼしい花は見つからずに沢を抜け出てスズムシソウが咲く場所に到着する。


    スズムシソウ。花期を少し過ぎているがまだ咲いている。


    周辺に幼弱な葉が沢山出ているのが嬉しい。


    昨年よりも数は多い。

 コアツモリソウの咲く森に入ってみる。前回とは別の場所である。


    満開のコアツモリソウ。少し痛み出している株もあった。


    この場所は例年とあまり変わっていない。

 さらにいつもとは違う森をさまよってみた。


    杉の林床はアオフタバランの海になっていた。圧巻の数。


    ミヤマウズラの葉


    キッコウハグマの葉だと思うが、ずいぶん大きい。


    コアツモリソウが点々と咲いている。


    大型のコアツモリソウ


    鹿道をたどって上に登って行くと、暗い杉の林床を抜け出てカラマツ林の明るい森に出た。


    これを登れば正規の登山道に出られそうだが・・・GPSを持って来るんだった。軽装で来たので水や食料も持っておらず、ここまでで撤退して下りる。


    ササバギンランがちらほら。


    ウマノスズクサの葉だと思う。


    枯れた沢を横切る。


    その先には立派な道があった。林業作業道だろう。


    その道沿いにもコアツモリソウ。


    スズムシソウも少しだけあった。

 作業道から外れて森の中を進むと、今までに歩いたことの無い林道に抜け出た。その林道をしばらく歩くと、駐車した場所からさほど遠くない場所に戻った。この界隈はいつも観察に行っている場所だけでなく、周辺の森も豊かな植生を持つアオフタバランやコアツモリソウの天国であることがわかる。道路の拡張工事が行われて影響が出るのではないかと心配していたが今のところは問題なさそうである。    





イナモリソウ?いや、ちょっと違う 上野原市へ  平成30年5月30日

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 5月連休に歩いた山で偶然出会ったイナモリソウらしき葉の花がそろそろ咲いている頃ではないだろうか。見つけた時には固い小さな蕾が付いていた。富士北麓の森を散策して車に戻ったのは3時過ぎ、夕方7時から会議があるのでそれまでに甲府に戻れば良い。高速を使って上野原まで移動してなんとか間に合いそうな時間である。神社の駐車場まで行くとパラパラと雨が降り出したので傘を差しながら散策する。


    神社の鳥居。階段は雨で滑りそうなので慎重に昇る。


    小さな菊発見。小型なので珍しいものを発見したかと思ったが・・・


    小型のハキダメギクだった。


    境内の中に咲いていた花。少し痛み出している。


    だがまだ十分に見られる。


    イナモリソウ・・・のようだが、初めて見るので自信が無い。


    花が細いような気がする。


    さて、この花は?


    甲府に戻ってから図鑑で調べると、イナモリソウよりも花弁が細い。


    ネットで調べてようやく正体が判明。ホシザキイナモリソウというイナモリソウの変種だった。

 ホシザキイナモリソウ(アカネ科 イナモリソウ属)はネットの検索で出てくるのはほとんどが高尾山のものばかりだった。神社の境内の中だけ咲いているので最初は誰かが植えたものかと思ったが、分布域から見て自生のものと見て良いだろう。山梨県ではレアものと見て良いだろう。

「花咲かじじい作戦」赤信号  平成30年6月2日

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 一昨年は姿を見せなかった花咲かじじい作戦を展開中の某草だが、保護柵で囲ってあげたところ昨年はなんとか葉だけ出してくれて一安心していた。今年もきっと葉を出してくれているだろうと期待して訪れてみる。昨年の秋に保護柵は破損されていないことは確認しているので鹿の食害に遭っていることはまず考えにくい。


    この山は深刻な食害に遭っている。鹿の踏み跡だらけ、このあたりにあったスズムシソウは消滅してしまった。


    よほど食べ物が無いらしく、あまり食べないウバユリまでが食べられている。


    ようやく見つけたクモキリソウ属の葉だが、まだ開花前の花穂が出ており、形から見てこれはクモキリソウだろう。


    花穂は出ていないが、こちらはおそらくスズムシソウ。見つかったのは2株のみで花は付いていない。


    現地に到着。保護柵はしっかりと立っているが、テンニンソウとキク科の植物がだいぶ増えていた。


    柵の中を覗いてみるが・・・どこをどう探しても某草は見つからない。今年は葉を出していないようだ。

 残念ながら花咲かじじい作戦展開中の草は姿が見えない。周辺のテンニンソウとキク科の植物、さらにスゲを除去して作業を終える。保護柵の中の様子は昨年と大きく変化した様子は無いように見える。しいていえば、スゲが思った以上に増殖が速いことだろうか。昨年の秋にも除去作業を行っているがあっという間にはびこってしまっている。しかし、某草が出なくなってしまうほどの変化とは思えないのだが・・・?何をどうすればこの草を復活させることができるのか?植物の保護は思っていた以上に難しいことを思い知らされた。かなりがっかりして下山となった。


    下山中に見つけたクモキリソウ属。小さな花穂が出ておりクモキリソウと思われる。

 出ない年もあると聞いているので、これであきらめたわけではない。引き続きこの場所のメインテナンスを続行する。

カモメランを観察に行く 御坂某山  平成30年6月2日

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 この山のカモメランは保護柵の修復と新たな設置のために今シーズン2度訪れているが、ポールと機材の荷揚げと作業のために、カモメランをゆっくりと観察している余裕など無かった。そのため保護柵の外でどれくらいの数が残っているのかはカウントが出来ていない。まだ保護柵が不完全な場所があるのだが、今回は作業では無く観察のために訪問する。久しぶりのポール無しでの登山であるが、部分的な修復が必要かも知れないのでワイヤーとネットは持って行くことにする。


    ユモトマムシグサがまだ咲き残っていた。この1ヶ所でしか見つからない。


    柵の外で咲いていたカモメラン。


    例年は10株くらい咲いていた場所だが、今年は5株だけだった。葉の数も減少している。左側には食害の跡が見られる。


    直接の食害跡が散見される。


    こちらは花穂が食べられている。


    最も問題なのはこの環境である。中央に立つ木の周辺にカモメランがあるが、周りは食害の影響で下草が無くなり山肌が乾燥している。これこそが数を減らす最大の原因。

 保護柵を設置した場所に到着する。柵の周辺にもカモメランがあったのだが、今年は葉っぱだけ確認出来るものの咲いている株は1株しか見られなかった。この場所も下草が減ってヤマタイミンガサがはびこるようになってしまっている。一方、保護柵で囲った内側はショウマ類やユキザサなどが元気に葉を出しており、植生の差は歴然としている。


    柵の外に咲いていたツルシロカネソウ


    かなり不完全ながら、囲っただけの効果は現れている。ショウマ類、ユキザサ、ツルシロカネソウ等、元気に茂っており周辺との植生の差は歴然としている。


    ポールが1本折れてしまっていたので落ちていた木の枝でとりあえずは修復しておく。一冬は越せないので年内中に修理が必要になるだろう。


    柵の中は快適らしい。昨年よりもはるかにたくさんのカモメランが咲いてくれた。


    元気なカモメラン。バンザイしたくなるほどに嬉しい。


    5月に修復を行った保護柵。一冬越せるかどうかは微妙なところだ。


    この柵の中も今までに無くたくさんのカモメランが咲いてくれた。葉の数はそれほど増えているわけでは無さそうだ。


    カウントすると全部で9株咲いていた。バンザイ。


    これが前回夜の9時過ぎまでかかって設置した柵。かなり頑丈に出来たと思うが、台風を凌げるかどうかは不安である。


    昨年の夏に大規模な食害に遭って株数が半分以下になってしまった。根は残っていたようで予想していたよりは葉数があった。


    表側のいちばん咲いていた場所は今年は1株しか咲いていない。残念でならない。


    裏側の被害が少なかった場所はこの2株と少し離れた場所に1株咲いていた。例年ならば50株くらい咲く場所が今年は4株だけしか咲かなかった。


    カモメランに混じってヒメムヨウランが一株。

 他にも群生していた場所があったので立ち寄ってみたが、その場所は葉も見つからず、消滅してしまったようだ。オオヤマサギソウも完全に姿を消してしまっている。そして、よほど食べ物が無くなってきたようで普段は食べないヤマタイミンガサまでが食害を受けていた。


    食害を受けたヤマタイミンガサ。

 もう少し囲ってあげたい場所もあるのだが、高さが1.2mほどの低い保護柵ではいつ鹿が乗り越えてくるかわからない。鹿が自由に身動きできない程度のある大きさの柵を複数設置するほうがこの高さのネットでは鹿対策に有効なのではないかと考えている。とりあえずは今シーズンの花の時期に間に合わせてやれることはやったと思っている。あとは、いつか行政のほうでもっと頑丈な柵で広く囲ってくれるのを待つことになる。さあ、復活してくれ、カモメランよ。


アズマシャクナゲ咲く瑞牆山へ  平成30年6月3日

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 ブログの記録を振り返って見ると、この山を訪れるのは平成25年の5月連休以来5年ぶりとなる。今回は植物の調査もあるのだが、以前から富士見平小屋に写真を持って行くと言いながらずっと届けていなかった新緑の瑞牆山の写真の荷揚げ、7月下旬の月食の際にお世話になる予定なのでその挨拶、さらには山頂付近の展望地のGPS座標の取得など多くの目的がある。ちょうどアズマシャクナゲの季節で山頂は混雑が予想されるので遅めの出発で登山者が居なくなった頃を狙って山頂付近に登るプランを立てる。


    登山道入り口からさほど遠く無い場所にあったクリンソウの群落は激減してしまっていた。盗掘もあったらしいが、それよりも食害が深刻なのだろう。


    林道脇の瑞牆山展望台から見上げる瑞牆山。この場所からの北天を廻る星空を狙っていたが、左右と上部の視野が若干悪い。


    沢と森の様子は5年前とはすっかり変わってしまっていた。沢の周辺から斜面にかけては足の踏み場が無いほどにサンリンソウやヒメイチゲなどが茂っていたはずだが、ほぼ消滅。


    富士見平小屋に到着する。

 12時ごろに富士見平小屋に立ち寄ると小屋主の相川さんが大歓迎してくれて、コーヒーやケーキをご馳走になってしまい、さらにはいろいろな情報をいただき、1時間以上も小屋で過ごさせていただいた。1時10分過ぎに小屋を出発し、瑞牆山山頂を目指すことになる。普通に歩けば午後3時には山頂に到着できるであろうが、あちらこちらをうろつきながら三脚とカメラを出して写真を撮りながら歩くので全くピッチが上がらない。


    天鳥川下降点手前の展望台から見る瑞牆山。ほぼ真北に瑞牆山が位置する好ポジションだが左右の視野が若干悪い。


    天鳥川沿いに咲いていたミツバツツジ


    キバナノコマノツメ群生


    キバナノコマノツメ


    コミヤマカタバミ


    山腹にアズマシャクナゲが群生しているが、これでも今年は花数が少ないほうである。


    森の中に咲くアズマシャクナゲ。


    高度を上げると花の色も濃く美しくなってくる。


    アズマシャクナゲ、その向こうには大ヤスリ岩が見えてきた。


    奥秩父らしい上品なピンク色のコイワカガミ


    コイワカガミ


    見たかった花は山頂近くのこの岩に付いている。


    クモイコザクラ。後ろはハコネコメツツジ。いずれも山梨県では絶滅危惧種。

 今回の目的地は山頂では無くてその西側にある岩のところにある展望デッキである。あまり知られていないが平坦な場所があって休憩に適しており眺望も抜群である。7月の月食の月をこの辺りから観察するとちょうど甲斐駒ケ岳の真上に沈んで行くはずで、今回はこの場所の正確なGPS座標を記録するのが目的のひとつである。


    展望デッキ付近のアズマシャクナゲ


    展望デッキのアズマシャクナゲと瑞牆山山頂。


    瑞牆山山頂と金峰山


    大ヤスリ岩と茅ヶ岳


    ついでに望遠レンズで大ヤスリ岩の上を見てみると、ハコネコメツツジの群生になっていた。さらに岩に付いた黒いものはイワタケ。


    400㎜望遠で捉えた甲斐駒ケ岳。もう少しズームをかけても良さそうなので、570㎜望遠を担ぎ上げることになるだろう。

 登る途中で出会った下山中の小学生に、こんな時間から登ったら夜になっちゃうだろうと説教を受けてしまった。4時に展望デッキに到着し、いろいろと写真を撮っているとあっという間に時間が過ぎて4時半になってしまった。山頂は目の前であるが立ち寄らずに下山することにした。

 6時10分に富士見平小屋に到着し、小屋に挨拶して下山する。薄暗くなってきたがちょっと別の場所の植物の様子を見ながら下山し、7時に駐車場に到着した。しばらくぶりに登った感触としては、思ったよりも大変なこと、しかし夜間に登るにはあまり問題無さそうに思う。あとは月食の日に晴れることを願うばかりである。


    富士見平小屋下の展望台は木が伐採されて眺望が良くなっていた。廻る北天の空を狙うならばこの場所がいちばん良さそうである。

危機的な状況に陥っている瑞牆山周辺のカモメラン  平成30年6月3日

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 瑞牆山を訪れた最大の目的がこのカモメランの調査と言って良いであろう。

 年々数を減らしているという山岳レインジャー活動の報告を目にしていたが、まだ大丈夫だろうと思っていた。ところが昨年の報告で葉はあるものの花がひとつも咲いていないという報告を受けた。さらに今年の調査の第1報では葉も見当たらないという。もし本当ならばそれはまずい。自分の目で確かめてみないといけない。


    激減したクリンソウ。これを見ただけでもかなりの変化が起こっていることは想像がつく。


    この沢はかつてサンリンソウがこれでもかというくらいに咲いていたはずだが、少ししか見当たらない。


    わずかに咲き残っていたサンリンソウ。ヒメイチゲは見当たらない。


    花は全く見当たらないが、かろうじて葉は残っていたカモメラン。


    直接の食害の跡も見られる。しかし、いちばんの問題は下草が無くなって山肌が乾燥化したことだろう。


    もう1ヶ所別の場所を訪れてみる。このあたりも下草がほとんど無くなっている。


    ここにも葉はあるが花はひとつも見つからない。


    散在的に葉は残っているが・・・


    どこを探しても花は見つからなかった。

 がっかりして富士見平小屋に到着すると、休憩しているグループの方から声をかけられた。見れば山岳レインジャーのメンバー8人ほどで本日このカモメランの調査に訪れているそうだ。私は咲いている花は見つけられなかったが、毎年訪れているそちらのメンバーは4~5株開花している花を見つけたそうで、完全に咲かなくなってしまったわけでは無いようだ。しかし、かつては50株以上は咲いていたカモメランがもはや絶滅寸前の状態まで追い込まれてしまっている。直接の食害というわけでは無く、植生の変化によるラン菌の活性が低下してしまったことと鹿(および人)による踏み荒らしが原因であろうと分析している。直接の食害は囲って保護してやれば早期に回復が望めるが、植生の変化によるものはそう簡単に戻せるものでは無い。しかし、今出来ることは残っている場所を囲ってあげることくらいだろう。何もしなければおそらくは数年で絶えてしまうだろう。御坂山塊のカモメランもあと少し囲うのが遅かったらこちらと同じ状況に追い込まれていたことは間違いないだろう。早急な行動が必要とされている。

大丈夫か?櫛形山固有の草  平成30年6月4日

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 一昨年の秋に櫛形山に咲く固有の草を保護柵で囲ってもらったのは良いが、囲ったからといって必ずしも良いとは限らないようである。保護するはずの肝心の草では無くてバイケイソウやシダ類などのその他の草が増殖して日当たりが悪くなり、栄養分もだいぶ取られてしまっているようで昨年の株はひとまわり小さくなってしまっていた。今年はどうなっているのか、かなり心配になっていたので見に行ってみた。


    ミツバツチグリがたくさん咲いていた。シロバナノヘビイチゴも満開。


    今回見たかった花のひとつ、ホソバノアマナ。まだ少し早いようで数が少ない。


    ヒメムヨウランがたくさん咲いていた。


    スポットライトを浴びるヒメムヨウラン


    セリバオウレン。2回3出複葉だと思うが3回3出か?


    葉はたくさん見かけるが種が見つからない。食害を受けているかも知れない。


    ホソバテンナンショウ


    ユモトマムシグサ


    こんなところにヒョウタンボク(たぶんスルガヒョウタンボク)。花芽は無かった。

 さて、肝心な草はどうなっているだろうか?保護柵の中を覗き込んでみると・・・昨年よりもさらにバイケイソウやシダが増殖している。そして草は・・・株数が減って葉の大きさもさらに小さくなっている。


    保護柵の中。バイケイソウとシダがはびこっている。保護している肝心の草は埋もれてしまっている。


    株数が減って大きさも小さい。2年前はシダに覆いかぶさるくらいの大きな葉を出していたが、今では完全に負けてしまっている。


    別角度から見る。小さな株が2つ確認できるがあまり元気が無い。


    花はもうそろそろ終わりで一部は結実している。


    こちらは結実。

 確か昨年は12株くらい葉が出ていたはずだが、今年はカウントすると8株しか見当たらない。周辺の草に生育を邪魔されているので、メインテナンスのための草刈りが必要だろうと思う。柵で囲われる前は踏みつけられないように周辺に木の枝で囲いがしてあったが、それがあったために余計な草がはびこって来なかった可能性もある。おそらくは、手入れをせずにこのままの状態で放置しておくと数年で消滅する可能性が高い。しかし、保護柵に囲われているので手が出せない。山岳連盟(あるいは環境省)を通して対処をお願いしたいと思っている。

山梨県山岳連盟主宰の高山植物学習会のため三ツ峠へ  平成30年6月9日‐10日

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 毎年恒例となっている三ツ峠清掃登山だが、今年は山梨県山岳連盟創立70周年記念事業として一般募集も行い、総勢約60名を集めての大登山となった。といっても私はメインの9日は仕事があるため集合時間の8時半には行けず、大幅に遅れて午後2時から登り始める。昨年に続いて今年も夕方から行われる勉強会の講師を仰せつかっており、前日未明の3時までスライド編集を行ってやっと完成したパワーポイントのデータを持って三ツ峠山荘に向かう。午後3時に当日組は下山を開始したらしく、途中ですれ違うことになってしまう。3時半に三ツ峠山荘に到着し、4時半ごろから宿泊組の10数名を迎えてスライド上映会を行った。予定では20名近く宿泊するはずだったのだが翌日の天気予報が雨だったため、関東地区の山岳連盟メンバーが全てキャンセルとなり、山梨県山岳連盟メンバーの勝手知ったる人たちを相手に自由な討論を交えながらの上映会となった。山梨県の絶滅危惧種のスライド、特に今年のレッドデータブック発刊で新たに登録された植物を中心としたスライド、および保護柵設置による植生の変化とその効果について数年間の写真データを元に講演させていただいた。それなりのインパクトのある講演になったのではないかと思う。機会があればブログ上で公開したいと思う。

 登りながら見た植物を掲載する。


    ツルアジサイ


    ガクアジサイによく似ているがこちらは木に絡みつく。


    ガマズミ


    遂にヤグルマソウまでが食害を受けるようになってしまった。よほど食べ物が無いとみえる。


    登山道脇に咲いていたヒメムヨウラン


    もうほとんど痛み始めていた。

 上映会終了後、宿泊部屋に移動して宴会、兼花と山談義が始まる。夕食後は三ツ峠山荘の中村さんも交えての大懇親会となり、メンバーの皆さんが持っている山と花に対する熱い思いについて語り合い、大いに盛り上がったし勉強にもなった。風呂に入らせてもらって11時に就眠した。

 翌朝7時半に朝食をいただいていると本日の植物観察会メンバーの2人が8時に登って来てさっそく中村さんが案内して保護地区に出かけて行った。私も合流する予定だったのだが出遅れてしまい、遅れて現地に向かうと既に観察が終わって山荘に戻るところだった。すると、中村さんが特別に配慮してくれて、私ともう1人、通りかかった前日の宿泊客の2人だけを連れて保護地区を案内していただくこととなった。花咲じじい作戦作戦が今年はうまくいって無かったので、今年はもう一度この保護地区内の環境を見ておきたいと思っていたので、特別な配慮に大感謝である。


    青々と茂るこの保護地区の植生は何度見ても凄い。


    圧倒的なオオバギボウシ、その中にクガイソウやヨモギ、フウロなどの元気な葉が混じる。


    ユキザサも群落を形成している。かつての黒岳にもこのようなユキザサ群落があったが今は消滅している。


    このような環境があってこそこの花が元気に咲いてくれる。

 保護地区の中にはもちろんシダもあるしバイケイソウもスゲも生えている。しかしそれらの植物がどんどんはびこって来るというわけでは無く、調和を保って混生している感じがする。鹿の食害が無ければ、バイケイソウやシダばかりがはびこるような環境にはならないのではないだろうか。花咲じじい作戦がうまく行かずだいぶ気分が落ち込んでいたが、この保護地区を見せていただいてまた元気を取り戻せた気がする。引き続き作戦続行である。

 午前10時には解散となったが山頂付近の花は見て回らずにメンバーを案内して富士北麓の森にちょっとだけ立ち寄ってきた。


    ベニカヤラン。花が終わって種になっているだろうと思っていたが・・・


    トリーミング画像。散りそうな花は本当に紅色をしていた。ベニカヤランの名前に納得した。


    ツリシュスラン


    トリーミング画像。昨年は花が咲かなかったが今年は3本くらい花芽を付けているようだ。

 時々小雨が降る中の富士北麓散策だったが、メンバーの皆さんはそれなりに楽しんでいただけたようである。

 今回の講演会のためにだいぶ駆け足であちらこちらの花の写真撮影や保護ネットの補修や新設を行ってきた。やっとひと段落といった感はあるが、まだまだ観察に行きたい場所や新たな探索候補地は山盛りである。ゆっくり休んでいる暇は無さそうだ。

山梨県の絶滅危惧の花たちとその現状 ~三ツ峠勉強会①~

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 平成30年6月9日に三ツ峠の高山植物学習会で上映したスライドから抜粋して提示したいと思う。100枚近いスライドを上映したので4回くらいに分割して記載する。

 ウチョウラン(絶滅危惧ⅠA類):岩場の中にある草地を好んで生育している。山野草ブームの際に再三の盗掘被害に遭って激減してしまい、今では人の近付かない険しい岩場でわずかに咲き残っている感じではあるが、ここ数年若干数が増えているように見える。


    ウチョウラン(御坂山塊)


    急峻な岩場の中の草地を好んで咲く


    個体数は横ばいか、若干増えているように見える。


 オノエラン(絶滅危惧ⅠA類):この花も急峻な岩場を好むがウチョウランとは若干環境が違い、住み分けているように見える。


    オノエラン(御坂山塊)


    岩場の草地の中にひっそりと咲く

 ホテイラン:山梨県では南アルプスのごく限られた場所に生育している。食害の影響か、あるいは登山者の増加による登山道の硬化の影響か、生育地の山肌の乾燥化により数が減少しており危機的な状況にある。


    ホテイラン(櫛形山)


    この場所は登山道が無いバリアンスルートだが、山肌が乾燥化して減少傾向にあり、個体数はなんとか30~50個を数える。


    年々数を減らしている南アルプスのホテイラン。


    櫛形山と同じく山肌が乾燥化している。この現象をくい止めるのは難しい。最も有効と思われるのは保護柵かも知れないが回復するには年数を要するであろう。

 ベニシュスラン(絶滅危惧ⅠB類):今年から新たに絶滅危惧種に登録された植物である。苔の生した岩の上を好んで生育している。


    ベニシュスラン(南部町) 苔の生えた岩場を好んで生育している。


    花も葉も美しい植物

 マツバニンジン(絶滅危惧ⅠA類):梨ヶ原の広大な草地の中の一部に生育している。個体数が少ないうえに近年は鹿の食害を受けて減少しており、危機的な状況にある。


    マツバニンジン(梨ヶ原)


    午前中に花を咲かせて午後には散ってしまう。


    昨年は食害の跡も見られて数は減少している。

 スルガジョウロウホトトギス(絶滅危惧ⅠA類):盗掘に遭い著しく減少してしまい残っているのかどうか不明だったが、何度か探索調査に行き2015年に南部町の奥深い谷の中でひっそりと生育しているのを発見した。高い岩壁に咲く花なので鹿の食害には無縁で、岩盤の崩落や盗掘が無ければこれからも生育してくれると思われる。


    スルガジョウロウホトトギス(南部町)


    深い谷の岩壁にぶら下がるように咲いている。


    谷間の岩壁にぶら下がるその姿がなんとも言えず美しい花。地形とヤマヒルに守られた天然の要塞である。

 ヒロハノカワラサイコ(絶滅危惧DD類 情報不足):今年から登録された植物で、環境省絶滅危惧種Ⅱ類に分類されている。梨ヶ原の一部で生育しているのを確認しているが、そのほかに県内の某森林公園敷地内でもそれらしき葉を見ている。Ⅱ類ないしはⅠB類あたりに入ってくるのではないかと思われる。


    ヒロハノカワラサイコ(梨ヶ原)


    バラ科 キジムシロ属の花で、葉の形がちょっと違うキジムシロのように見える。

 絶滅危惧種というだけあって手放しでこれからも生育できる植物は稀であると言わざるを得ない。どうやってこれらの花を守って行けば良いのかを考えて行かなければならないと思う。(続く)



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