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Channel: 山梨百名山から見る風景
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春の櫛形山を花見周回(後編)  平成29年6月4日

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 池の茶屋を起点とする櫛形山山頂からアヤメ平の周回コースは現在北側のもみじ谷を回るコースがメインコースになっている。今回回るのはそちらではなくて、南側を回る管理歩道コースである。ここ数年は恒例のように歩いている櫛形山だが、こちらの管理歩道コースを歩くのは初めてである。あまり人が入らないルートではあるが、保護柵の外にあるコースなので食害を受けてあまり花は無いだろうと予想していた。ところが、歩いてみないとわからないもので、以外にも花の宝庫だった。

 午後4時5分、管理歩道の分岐に到着。道標には池の茶屋まで90分、GPSのルートでは100分と書かれている。日没前に楽勝で池の茶屋に戻れる時間であるが、折角の初めて歩くコースを急ぎ足で歩くのはもったいない。花を探しながらゆっくりと、じっくりと歩いてみることにする。



    ほこら小屋の上にある管理歩道分岐。池の茶屋まで90分だが、花を探しながらじっくりと歩く。


    水平歩道と思っていたら、以外にも最初は結構登る。


    足元にはシロバナノヘビイチゴがたくさん。


    今度はミツバツチグリ。あまり歩かれている様子は無い。


    予想通り、残っているのはマルバタケブキの群落。


    さらにバイケイソウの森。


    そしてクサタチバナ群落。いずれも鹿の食べないものばかり。やっぱりな~、とため息が出た。


    富士山の見える草地で一休み。

 管理歩道前半のルートは予想通りに鹿の食害を受けてもはや鹿の食べない植物ばかりが残る末期的な森になっていた。予想はしていたのだが実際に自分の目で見ると、やはり残念に思う。富士山の見える草地に腰を下ろして休憩していると、足元にホソバノアマナが咲いていた。こんな荒れたところでも咲いてくれるんだと少しばかり心が和んだが、この草地から池の茶屋にかけてのルートは想定外に様々な花が生き残っていた。


    休憩した草地の足元に咲いていたホソバノアマナ。


    レンプクソウ


    ヨゴレネコノメソウ


    ツルネコノメソウ


    下の黄緑色はヨゴレネコノメ(葯が暗紫色)だろうが、上の白っぽいのは葉と葉茎の様子からハナネコノメと思われる。


    ミヤマスミレが随所にたくさん咲いていた。


    ミヤマスミレ


    池の茶屋の保護柵内でも見かけたコセリバオウレンと思われる花の群落


    ツバメオモト


    ユリワサビ


    コミヤマカタバミ


    葉の辺縁の鋸歯が目立たないが、これは森の中で見たものと同じユモトマムシグサ。


    こちらはいつも見ているものに近い。ホソバテンナンショウ、あるいはカントウマムシグサと思われる。テンナンショウ類ももう少し詳しく勉強しなければならない。


    こんなところに・・・


    アオチドリ


    ミヤマハタザオ


    ナツトウダイ    


    サルオガゼ


    ヒョウタンボク。おそらく保護柵で囲われていたものと同じ、スルガヒョウタンボクと思われる。


    こんな美しいカラマツの森も残っている。

 前半の管理歩道では残念な光景が広がっていてがっかりしたが、後半の歩道沿いには想定を遥かに上回る様々な花が咲いていてたいへん楽しむことが出来た。予定時間の2時間を過ぎ、時間は6時半を過ぎてしまった。もう少し時間の余裕があれば、もっと面白い花に出会えたかも知れない。保護柵の外はもう見るべきものが無いと思っていた櫛形山だが、この管理歩道を歩いてみて、まだまだ捨てたものでは無いと思った。植生豊かな山だっただけに、探索すればもっといろいろなものに出会えるかも知れない。


    6時40分駐車場に到着。残っていたのは私の車だけ。


    気になっていたこの草は昨年山梨県山岳連盟の強い働きかけもあって保護柵で囲われて手厚く保護されています。

咲き始めた鷗のラン  平成29年6月5日

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 先日保護ネットを設置したカモメが咲く場所だが、タイムアウトになってしまい作業が不完全なままに終わってしまっている。そろそろ咲いている頃だろうから、多くの登山者がやって来る前に作業を終えておきたい。午後から現地に向かう。しかし歩き始めたのが午後4時近く、この日は体調がきわめて悪い。気温が低くて寒いくらいなのに汗がダラダラと流れ出るうえに足に力が入らない。おそらくは血糖値コントロール不良による軽い低血糖症状だろう。休憩をこまめに取りつつ、水分を十分に補給しながら花の咲く場所まで登る。


    おそらくはカントウマムシグサと思われる。広義のマムシグサ。


    オオヤマサギソウの葉と思われる。この場所で見つけたのは初めて。


    花の咲く場所に到着すると、数株が咲き始めていた。葉の数をカウントするとこの場所は70~80株くらいあり、昨年と変わらないか若干増えているように見える。


    こちらが昨年ロープで囲った場所。花とロープの位置が近過ぎるため、設置し直す。


    花に近過ぎると花を踏まなくとも地面が踏み固められて花が衰退することになる。30㎝ほど離して設置し直した。


    さらにこの真ん中に出来てしまった踏み跡には新たな踏み込んだ痕跡があり、こちらもポールの数を増やして木で囲う。


    あと数日で咲きそうだ。


    ここは先日囲い込みが完了している場所。


    この場所は上が白で唇弁に濃い紫色の斑点が出るこの山独特のカモメが咲く場所である。昨年は1株だけだったが今年は3株開花した。


    ズーム。その気で見ないと見逃してしまう。


    こちらが通常のカモメ。唇弁の斑点が薄く、全体的にピンク色。

 さて、未完成の保護ネットの場所に行き、木の根元に隠しておいた作業道具を取りに行った。ところが、誰かゴミの置き忘れと思ったのか、それとも使えそうな道具だったので持ち去ったか、デポしておいた作業道具が無くなっていた。周辺を探したがやはり見つからず、誰かに持ち去られてしまったようだ。登っては来たが作業が行えず、無念の撤退となってしまった。

 週末には山岳連盟自然保護グループ主催の観察会兼鹿の食害調査がこの山で行われ、講師を仰せつかっている。参加者に理解していただきたいのはここ10年間で起こって来たこの山の植生の変化と、それがこのカモメのランにどのような影響を及ぼしているか、そして保護して行くためにやらなければならないことは何なのか、ということである。保護ロープや部分的な保護ネットくらいでは気休めにしかならないことを訴えたいと思っている。これから参加者に配布する資料作りをしなければならない。

失われた草その後 花咲じじい作戦ネット張りの成果は?  平成29年6月初旬

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 一昨年は春に葉を確認した貴重な草だが、秋には鹿に食べられたらしく消失してしまった。草をむしったり日当たりを良くしたり天然肥料を撒いたりと世話をしたつもりだったが、昨年はとうとうその葉すら姿を現すことは無くなってしまい、この「花咲じじい作戦」は赤信号が灯ってしまった。そして今年の4月、鹿の食害から保護するために登山者に場所がわかってしまうのを覚悟のうえで保護ネットを設置するに至った。果たして、その成果はどうだろうか?そろそろ葉が出る頃だ。


    かつては10株以上あった登山道途中のスズムシソウは激減してしまい、風前の灯である。


    それでも今年は1株だけ開花してくれた。


    ヤマウツボは少し数が少ない。


    この山のクワガタソウは大柄で元気が良い。


    現地に到着。このテンニンソウがはびこる斜面の傍らに保護柵が設置されている。


    保護ネットは破損無く立っている。


    昨年は徹底的に食われたシュロソウの葉が今年は全く食害を受けていない。保護ネットは機能している。


    トンボソウか何かわからないラン科らしき葉は数を増やしている。


    そして目を凝らして草むらの中を探すと・・・出ている。失われた草の葉。

 保護ネットの成果があったようで、昨年はお目にかかれなかったあの咲かなくなった貴重な植物の葉が今年は出てくれた。完全に失われたわけではなく、やはり食害によって食べられてしまっていたようだ。とにかく残っていてくれて良かった。花を咲かせるにはまだ遠い道のりだろうが、ひとまずは「花咲じじい作戦」の成果があったようだ。思わずガッツポーズが出てしまった。テンニンソウが生えていたので、柵の一部を解除して取り除き、周辺のテンニンソウも一部除去して撤退した。嬉しい1日になった。

Strawberry Moon? そんなものが見えるのか?その1 端足峠  平成29年6月9日

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 今宵昇って来る月齢14.3の満月は地球から最も遠い位置に月が位置する今年最少の満月である。かつ、夏至に近いこの季節は太陽の位置が高く、月の位置は南側の低い位置から昇って来るために太陽と月の位置が1年のうちで最も遠くなり、厚い空気の層に光が吸収されて赤色だけ残り、ストロベリームーンなる赤色の月が昇って来るらしい。本当なのか?富士山頂に現れる良さそうな位置をカシミール3Dで計算してみると、端足峠の南側、雨ヶ岳に登り始めるあたりの笹薮の中が時間的にもベストポジションになりそうだ。雲行きと天気予報の雲画像、そして本栖湖ライブカメラをチェックしていたが、午後から少しずつ雲が切れて時々富士山が見えるようになってきた。雲画像から見ても良さそうに見えたので、根原を午後5時に出発して端足峠を目指した。しかし、登り始めの頃には黒い雲が空一面を覆い出し、難しそうな感じがする。


    A沢貯水池あたりから見る端足峠。いちばん低いところが目的地だが、どうにも雲行きが怪しい。


    竜ヶ岳は既に雲に覆われてしまっている。


    端足峠に至る樹林帯の中は霧が巻いて真っ暗。


    端足峠到着。小雨が舞っていた。


    月が姿を現すまでまだ1時間弱あるが、これでは見える可能性はほぼ無し。

 端足峠に到着するが完全に霧の中で小雨が舞っていた。天気予報を見ると夜には晴れそうだが夕方から夜半にかけては標高が高いところほど雷雲の発生する可能性が高いとの予報である。これでは月を見ることは不可能だろう。すぐに下山開始する。下から見たほうがまだ可能性は高そうだ。A沢貯水池付近まで急いで下る。


    A沢貯水池付近。富士山は全く見えず。


    この場所だと7時半ごろ富士山の左角あたりから月が出るはずだが・・・?


    竜ヶ岳も相変わらず雲だらけ。

 7時半まで待ったが何も見えないまま撤退となる。残念。

 しかしまだチャンスはある。明日の朝もう一度ストロベリーパール富士のチャンスがあるのだ。そのまま山中湖の湖畔に移動して車中泊し、明朝に備える。未明2時には出発しないと間に合わないので、あまり寝ている時間は無い。


    山中湖長池から。雲が少し晴れて富士山が少しずつ姿を現してきた。


    ストロベリームーン、のわけが無い。時間は既に午後10時。

その2に続きます。


    ストロベリームーンになったかな???

Strawberry Moon? そんなものが見えるのか?その2 大平山  平成29年6月9日

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 前日の夕暮れを狙って端足峠に登ったが天候不良で富士山も月も全く姿を現さず、夕暮れのストロベリームーンは不発に終わった。

 下山後夕食をとってから山中湖に向かう。チャンスはもう一度、明朝にやって来る。大平山から平尾山にかけての稜線上で富士山のほぼ真ん中あたりに月が沈むはずである。時間的には石割山が良いのだが、残念ながら富士山頂から若干右に月が外れてしまう。大平山だと日の出の15分前、平尾山だと10分前くらいに富士山山頂に月が沈む計算だが、今回は山中湖の眺望が良い平尾山を撮影地に選択した。山中湖長池の駐車場に車を止め車中泊する。月が富士山に沈むのが4時5分ごろ、大平山まで1時間半と計算して、未明2時に出発しないと間に合わない。時刻は既に午後10時、あまり寝ている時間は無い。目覚まし時計を1時半にセットしてとにかく寝る。


    未明2時の山中湖長池から見る月と富士山。霞んでいるが月も富士山も見える。

 予定通りに午前1時半に起き出して車の外に出る。月が明るく照らしているが富士山はかなりぼんやりとしている。撮影してみると一応姿を現しているようだ。あまり条件は良く無さそうに見えるが、登ってみないとわからない。午後2時出発する。休憩無しに黙々と歩き、尾根道の直登ルートを登って1時間15分ほどで大平山山頂に到着した。先客が既に2名、三脚をセットしてスタンバイしていた。そのうちの1人は裏側の林道を車で山頂まで登って来ていた。悪路ではあるが、RV車ならば登れる道である。しかしちょっと反則なのでは?という気もしないではない。


    山中湖は雲海に覆われていた。綺麗な月が富士山に傾いていた。


    雲海の山中湖と月


    富士山頂に傾く月


    もうすぐ山頂に沈むが、ストロベリーになるのか??


    富士山頂に月がさしかかる。


    これは普通のパール富士。期待していた(いや、無理だろうと思っていた)ストロベリームーンにはならず。


    露出を変えてみたがやはり赤くはならず。

 やはり、ストロベリームーンにはならなかった。よほどの条件が良い時でなければ赤い月は見られなそうだが、標高2,500mを越える高所から目線の下に見下ろす月もオレンジ色から赤い月に見える時があり、おそらくはそれと同じような現象なのではないだろうか。

 カメラマンは総勢6~7人になっていた。月が見えなくなっても、まだ誰も帰ろうとする者は居ない。これから朝日が富士山を照らすようになり、紅富士が期待できるからである。


    アースシャドウの富士山


    山頂が染まり出した。


    真っ赤というわけでは無いが、この季節にしてはかなり色付いたほうだろう。


    梅雨の合間の紅富士


    朝日に染まる富士山


    山中湖を覆った夜明けの雲海


    日の出


    富士山の裾野まで朝日が差し込んだところで撤収。

 時間はまだ朝の5時である。ちょっと眠い、どころではなくてこのまま横になればそのまま眠れそうなくらいに眠いが、折角の好天なので石割山まで歩いてみることにする。


    振り返って見る大平山と富士山。大平山山頂に止まっている車が見える。


    平尾山から見る富士山


    朝露のアヤメと富士山。フラッシュ調整発光。


    石割山山頂


    石割山から見る朝富士

 7時石割山山頂に到着した。その頃には山中湖を覆っていた霧はすっかり消えていた。梅雨時にしてはきわめて珍しい、真っ青な青空の中に富士山が立っていた。

 石割山山頂で朝食をとって下山する。来たルートを戻るのも良いが、折角なので歩いたことが無いルートを歩いてみることにする。東海自然歩道はいつも石割神社に短絡するルートを歩いており、その先の平野まで至るルートはまだ歩いたことが無い。さらに、湖畔を走るサイクリングロードもどうなっているのか、ロケハンの意味もあって一度歩いてみたいと思っていた。平尾山の分岐点まで下りて平野に至る東海自然歩道を下山する。


    平野に至る東海自然歩道、良い道が林の中を走っている。


    ユモトマムシグサか?と思ったが、葉の数と分岐の仕方が違う。普通のマムシグサと思われる。


    平野湖畔から見るダブル富士山。この場所は入り江になっていて、ダブルダイヤモンド富士を撮るにも良さそうな場所だ。


    サイクリングロードから見る富士山。長池の駐車場までもう少し?ではなくてかなりあった。いちばん疲れたアスファルトの道歩き。

 大平山から平尾山・石割山を縦走し、湖畔を歩いて1周したことになる。アスファルトの道は固くて足首と膝に堪える。筋肉痛では無くて軽度ではあるが関節痛になった。

 長池の駐車場には10時に到着した。助手席の椅子を倒してちょっと横になると、そのまま1時間ほど爆睡してしまった。11時に目が覚めたがまだ眠いのでもう1時間寝て、上九の湯でひと風呂浴びてから帰宅となった。それなりに綺麗なパール富士の撮影に成功したのだが、見たかったのは赤い月だっただけに折角のパール富士だったのにあまり感動できなかった。贅沢というものだろうか?


御坂山系某山の植物観察会および鹿食害調査勉強会  平成29年6月11日(日)

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 山名を隠してもこの記事を読まれている方のほとんどはこれがどこの山かはわかっていることと思う。ここ数年間で著しく変貌を遂げているこの山の植生の変化と、それに対してどのように対応して行けばよいのか、まだ全くの手探り状態である。今年2ヶ所の保護柵を設置したものの、その程度でこの山に咲く貴重な植物の保護が出来るとは到底思っていない。しかし、現状がどうなっていてこれから起こりそうな変化は何なのかを周知しておくことはこれから先の保護活動を行って行くうえで必要不可欠なことだと考える。今回は山梨県山岳連盟自然保護グループ主催で、私の提案による観察会と勉強会が開催された。
 以下は今回の勉強会で配布した資料である。


    ~食害による植生の変化とカモメランへの影響について考える~
       山梨県山岳連盟 自然保護グループ

 かつては山頂付近に豊かなお花畑が広がっていた御坂山系某山であるが、鹿の食害によりカイフウロやタムラソウ、ユキザサなどの多くの植物が激減し、鹿の好まないヤブレガサやマルバタケブキなどが増殖する森に変わりつつある。その結果山肌の乾燥化を招き、ここ数年でカモメランは減少の一途をたどっている。



   平成24年8月19日撮影。山頂付近は豊かな草地が広がっていた。



   平成24年8月19日撮影。カイフウロやシュロソウ、レンゲショウマなどが咲いていた。


    平成28年6月撮影。全ての森がこうではないが、鹿の好まないヤブレガサが大繁殖している。


    この山に咲くカモメラン


    踏み荒らしが目立つため昨年保護ロープを設置した。


    通常のカモメラン。全体的にピンク色をしている。


    この山固有のカモメラン。上部の萼片が白、唇弁に濃い紫色の斑点が入る。

 今年はカモメラン保護のために自主的に2ヶ所保護柵設置を行った。鹿の食害と人の踏み荒らしからはある程度保護できるかも知れない。しかし、根本的にはもっと広範囲に保護柵を設置し、鹿の食害による山肌の乾燥化を防ぎ植生の回復を待たなければ、この稀少なランを含めた植物の保護は困難であろうと考えている。部分的な保護柵は一時凌ぎの効果しか期待できないだろう。 (資料:自然保護グループ ヨッシー作成)



 広い駐車場のあるこの山の麓に集合する。私を含めて18名という多くの参加者が集まってくれた。資料を配布し、今回の観察会の趣旨について説明する。そして出発。


    参加者のほとんどは山岳レインジャーの方々だった。


    昨年の画像を見直すと奇妙なマムシグサが写っていたので今年も出会えるだろうと思っていた。ユモトマムシグサ。こちらの山にもあった。


    カモメラン自生地に到着。花のすぐ左脇は鹿の食害を受けた植物の茎。ショウマ類か?


    上弁が若干ピンク色がかっているが、この山に見られる唇弁に濃い紫色の斑が入るタイプ。


    柵で囲った場所。昨年は1株しか咲かなかったが今年は3株咲いてくれた。昨年は踏み跡が目立ったが、今年はなんとか保護できている。


    ここは固有タイプがほとんど。70㎜望遠だと少し距離が足りない。


    誰かが木で隠してくれたらしいが、その木の下敷きになってしまっていたカモメラン。このようなことをしなくても良いようにしてやりたい。


    結構咲いているように見えるが、花数は激減している。


    先日ロープを張り直したが効果が無いようで、また新たな踏み跡が出来ている。柵を設置することに決める。


    唇弁の濃いものも混在している。

 途中のショウマ類はさらに葉の数を減らしており、あっても小さな葉が多くて花を咲かせるには不安なものが多かった。咲く前に鹿に食われる危険性もある。そして、さらに勢いを増して増殖しているのがヤブレガサである。あの大きな葉の下に入ってしまった植物は、日光を浴びることが出来なくなりやがては衰退して行く運命にあるのだろう。実際にヤブレガサの下にあったカモメランの群落が今年は葉も出ずに激減していた。

 山頂付近で昼食をとり下山する。この山の植生変化を見ていただくにはバリアンスルートが最適である。なにせそこの尾根に生えているのはヤブレガサばかり、ショウマもあるにはあるが、元気が無く、さらに山肌も乾燥している。そのような山の変化を見せながら、沢筋に下りてみた。


    沢筋はまだましかも知れない。ツルネコノメソウ群落。


    テバコモミジガサとゴミを回収して歩いてくれた参加者。


    コンロンソウ?


    この山では久しぶりに見かけるラショウモンカズラ。数株だが咲き残っていた。

 バリアンス尾根を下りて周回し、駐車場に戻る予定だったが、日没にはまだ時間があるので近くの休憩所がある森の中を散策して解散となった。

 今回のこの山の現状は参加者の皆さんは十分に理解していただけたことと思う。今のところ考えられる最善の策は山頂付近を広範囲に保護柵で囲んで必要ならばヤブレガサやテンニンソウなどの草を除去して植生の回復を待つことであろう。山肌の乾燥化はラン菌の活性を低下させてしまい、カモメランが減少する最大の原因になっているのではないかと考えている。個人の力や山岳連盟で広範囲に保護柵設置を行うことは困難であり、行政の力を借りるしか無いであろう。しかし、それを待っている間にも花たちはどんどん衰退して行くわけで、今私たちに出来ることと言えば狭い範囲でも良いので柵で囲ってあげることくらいだろう。今年は2ヶ所しか囲えなかったが、来年はみんなで囲いに来ましょうということで話がまとまった。少しずつではあるが、観察から保護の方向に向かって転換出来てきたように思う。


    参加者の皆様、ご苦労様でした。来年は柵を設置に来ましょう。

スズランの森に咲く花たち  平成29年6月11日

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 自然保護グループの植物観察会の後にスズランの森を訪れてみた。スズランはもう終盤であるがなんとか見ることが出来たが、そのほかにも様々な花が咲いていて楽しむことが出来た。しかも、自然保護グループメンバーの知り合いの方で、この界隈の草花にたいへん詳しい方が偶然訪れており、その方に案内していただいてなかなか見つけられない花も見せていただいた。


    芦川スズランの森。白樺の新緑が美しい。


    クサタチバナ。これから大繁殖するかも知れないが、この森は鹿の対策がしっかりと出来ている。


    スズラン。もうそろそろ終焉。


    大株のササバギンラン。ササバギンランはあちらこちらに咲いていた。


    ベニバナイチヤクソウ


    スズランとベニバナイチヤクソウのコラボレーション


    グンナイフウロ。色が濃いのでタカネか?


    案内していただいたおおかげで見られたサカネラン。草むらの中で見つけにくいところに咲いていた。


    こちらも知らないと見つけられないだろう。クモキリソウ属の花。

 そのほかにもいろいろな情報をいただくことが出来た。山梨県ではまだ見ていない鯖の尾が来年にはお目にかかれるかも知れない。また、尾根筋にある峠のスズラン峠とは、このスズランの森に咲くものと同じスズランを差しているのではなくて、かつては峠にたくさんあったエゾスズラン(アオスズラン)のことなのだそうだ。今ではほとんど見かけたことが無いが、ずいぶん前に稜線上でそれらしき植物を1株だけ見かけたことがあった。花が咲いていなかったのでそのまま不明なままに終わってしまっていたが、あれはひょっとしたらエゾスズランだったのかも知れない。あまり気をつけて歩いたことはなかったが、これからはその気で探しながら歩いてみることにしよう。

自然保護委員会レインジャー活動および勉強会のため三ツ峠へ 勉強会その1  平成29年6月17日

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 この季節の恒例となっている山梨県山岳連盟レインジャー活動の一環として三ツ峠の清掃登山、および勉強会が開催された。今回の勉強会では発表の機会が与えられ、約30分間話すことになった。パワーポイントで作成したスライドを準備してトレーニングと称して自分のパソコンを三ツ峠まで担ぎ上げたが、登りながらこの荷物を持って来たことにちょっと後悔した。いつものことではあるが、1時間半の行程で既にヘロヘロである。

 食事を終えて夕方6時45分から勉強会となった。山梨県山岳連盟の参加者は9名であったが、その他にこの日東京から来られた勤労者山岳会の方たちが20名ほど宿泊されていて、それらの方たちもお誘いしての勉強会となる。内容は以下の2点である。

 1.山梨県絶滅危惧ⅠA類の植物の現状
 2.稀少植物保護への取り組み

 2つのテーマで質疑応答を交えつつ、約70枚のスライドを上映した。まずはテーマ1の「山梨県絶滅危惧ⅠA類の植物の現状」について発表した要旨を書きたいと思う。勉強会の際は山名も述べたがブログ上での記事では植物保護のため伏せさせていただく。

 ①ラン科ウチョウラン



    御坂山塊のウチョウラン


    人の近付けない急峻な岩場の草地の中に生育している。

 山梨県山岳連盟では自生地を把握し、山岳レインジャー活動の調査に毎年出かけている。御坂山塊の岩場のごく一部に生育しているが、周辺を探索してみたところ人が近付けない岩場の数ヶ所で存在が確認された。鹿の食害には縁の無い場所なので、盗掘や岩の崩落が無ければこのまま生き続けてくれると思われる。個体数はほぼ横ばいか、若干増えているようにも見える。


 ②ラン科ホテイラン


    南アルプス某山のホテイラン


    他の場所のものに比べて背が高くやや大型


    個体数がきわめて少なく、いつ絶滅してもおかしくない状況にある。

 八ヶ岳の長野県側で見ることが出来るが、山梨県側では出会ったことが無い。山梨県では南アルプスのごく限られた場所でひっそりと生育しており、山岳レインジャー活動で毎年調査されているが、年々個体数が減少している。今回提示した画像は調査区域外にある山に咲く個体であるが、花数はせいぜい10株くらい、葉の数をカウントしても30個体ほどしか見つからない。個体数を維持して行くには50株くらい必要と言われており、この場所は将来的には絶滅してしまうのではないかと危惧している。個体数が減少している原因は鹿の食害により下草が無くなり、山肌が乾燥してしまったことが最大の原因と考えている。保護柵で囲うこともひとつの策かも知れないが、急峻な斜面で囲うのは難しい場所である。


 ③ラン科トラキチラン


    富士山山麓に咲くトラキチラン


    葉緑素を持たない腐生植物

 富士山山麓の某山にはかつて大きな群落があったらしいが、私がこの花を見に出かけた3年前にはもはやそのような群落は見かけられなくなってしまっていた。山梨県ではこの場所を含めて4ヶ所の自生地の報告を受けているが、いずれの場所も個体数が少なく年々数を減らしている。直接の食害や盗掘では無く、山肌の乾燥化による環境の変化が大きく関与していると思われる。


 ④ラン科フガクスズムシソウ


    富士山山麓のフガクスズムシソウ


    高い木の上に生育する着生植物


    白花の個体

 富士山の山麓を走る林道をドライブしてみると、大部分がツガの樹林帯の中を走っているのに気付くだろう。その林を良く見てみると、木々が整然と列を成して立っているのに気付くかも知れない。1合目・2合目あたりのツガの樹林帯は、実は大部分が植林帯なのである。その植林帯の中に残された雑木林の中にこの着生植物は生育している。木の上で生活するため、水分の確保には空気湿度が重要で、霧が発生し易く湿度の高い森を好み、苔が多く着生している大きな木に生育している。高い木の上に居るので動物の食害とはほぼ無関係であるが、手が届くような低いところでは盗掘によるものなのか、ほとんど見かけることが無い。


 ⑤リンドウ科ホソバツルリンドウ


    甲州アルプスで遭遇したホソバツルリンドウ


    ススキの葉に巻き付いていた


    目立たない花なので、人に気付かれずひっそりと咲いている 

 細いツルで巻き付いた先に華奢な花を咲かせるリンドウだが、その花は見れば見るほど味わい深い。甲州アルプスの山系で数ヶ所自生地があり、山中湖界隈の山でも数株存在が確認されたが私が見たのはこの1ヶ所のみである。生育するにはラン科植物と同様に根正菌が関与しており、移植も種を採取して別の場所に播いて増やすのも難しい植物である。草むらの中に地味にひっそりと咲いているのであまり人目に触れないが、間違って草刈りが行われてしまうといつ無くなってもおかしくない環境にある。


 ⑥ユリ科カイコバイモ


    静岡県との県境に咲くカイコバイモ


    南部町の某山に咲くカイコバイモ


    写真の中に7個体写っている。おそらくはこの花の最大の自生地であろう。

 静岡県との県境の山に咲く個体は静岡県で天然記念物に指定されており、パトロールも頻回に行われていて手厚く保護されている。山梨県では無防備な状態であるが、自生地自体が山梨県には少ない。偶然山梨県の某山岳会が南部町にある山岳地帯のバリアンスルートを歩いている際にこの花を探してきた。調査に行ってみると、開花しているもので50個体以上、若葉も含めると300個体を越えるであろう大きな自生地が確認された。人の行かない山の奥なので、斜面の崩落さえ無ければこのまま咲き続けてくれると思われる。


 ⑦ユリ科スルガジョウロウホトトギス、別名カイジョウロウホトトギス


    山梨県県南部の谷の奥深くで生き残っていてくれた黄色いホトトギス


    本名はスルガジョウロウホトトギスであるが、山梨県に咲くということでカイジョウロウホトトギスの別名を持つ


    人の近付かない奥深い谷に咲く美しい花

 ジョウロウホトトギスは日本ではサガミ、キイ、トサ、スルガの4種類が知られており、スルガジョウロウホトトギスが最も個体数が少ないと言われている。いずれも天然記念物に指定されている貴重な花である。スルガジョウロウホトトギスは富士川から西の領域には生育していないと言われていたのだが、昭和50年代に山梨県の県南部の富士川より西の山域でこの花が発見され、神奈川県の新聞に掲載された。そのことがきっかけとなり、山梨県にあったこの花は徹底的に盗掘され、もはや絶滅したのではないかと思われていた。静岡県のスルガジョウロウホトトギスは天然記念物に指定されているので移動も売買も禁止されているが、山梨県では指定が無いためにカイジョウロウホトトギスと名前を変えて売買されているのが非常に腹立たしかった。そしてこの花の調査に乗り出したのが平成27年である。ヤマヒルが多く生育する山域の谷を何本も登り詰め、ようやくこの花に出会うことが出来た。まず人が入ることが無い奥深い谷の中で、しかも手の届かない高い場所に居るこの花、さらにその谷はヤマヒルに守られた要塞になっている。個体数も維持して行くには十分な数があり、このままそっとしておいてやれば咲き続けてくれるのではないかと考えている。


 ⑧スイカズラ科ホザキツキヌキソウ


    南アルプス某山で奇跡的に生き残ってくれたホザキツキヌキソウ


    5月に黄緑色の花を咲かせた


    8月、白い実が成った


    ホザキツキヌキソウの実


    9月、種が付いたが、その中身は・・・

 日本では南アルプスの某山にだけ生育する貴重な植物である。元々個体数が非常に少なかったうえに盗掘の被害が相次ぎ、さらに鹿の食害にも遭ってほとんど見かけることが無くなってしまった植物である。この大きな株は奇跡的に生き残ってくれた貴重なものである。昨年はこの植物を探すために4月から7月までの休日のほとんどを費やしたが、とうとう発見することは出来なかった。奇跡的に残ったこの株は根元がひとつになっているように見え、おそらくは株分けによって増えてきたものであろう。同じ遺伝子を持った株が受粉したとしても、自家受粉したことになるために種を実らせる確率はきわめて低く、たとえ実ったとしても発芽する可能性もきわめて低い。昨年必死に別株を探したのは、他家受粉させて種を採取して株数を増やしてやりたいという目論見があったのだが、失敗してしまった。9月に実った種を採取してみると、案の定異様に軽い。部分的に破損していた種を割ってみると、思った通り中身が入っていなかった。株分けで増えたこの花、いつしか遺伝子が劣化して絶えてしまうのではないかとたいへん危惧している。ちなみにこの株は山梨県山岳連盟からの強い働きかけもあって昨年の秋には保護柵で囲われ、人も動物も近付けないように手厚く保護されている。


    平成28年秋に保護柵で囲われて手厚く保護されているホザキツキヌキソウ


 その他にも数種類の花のスライドと現状をお話しさせていただいた。これが前半の発表だったのだが、熱心な討論があったりしてこれだけで持ち時間の30分となってしまった。もうひとつのテーマ「稀少植物保護への取り組み」のほうが私としては重要な話だったのだが・・・早口で発表することとなる。(その2に続く)

自然保護委員会レインジャー活動のため三ツ峠へ 勉強会その2  平成29年6月17日

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 平成29年6月17日から18日にかけて三ツ峠山荘に宿泊して自然保護委員会主催の山岳レインジャー活動(清掃登山)および勉強会が開催され、講演させていただいた。テーマは以下の2点である。

 1.山梨県絶滅危惧ⅠA類の植物の現状
 2.稀少植物保護への取り組み

 テーマ1については前述した通りで、テーマ2の「稀少植物保護への取り組み」について述べる。

 山岳連盟のレインジャー活動とは、登山者の保護や救助が目的ではなく、稀少植物の調査と保護のための登山者の指導が目的である。そのためには植物の知識が必要であり、現地での観察会だけでなく研修会も開催されている。山岳レインジャー活動の植物調査は定経路(同じルートの植物を毎年調査する)と探索路(ルートの指定無く指定された山域を調査する)の2種類があり、山梨県山岳連盟に所属していてレインジャー活動に協力していただける山岳会に振り分けられる。今年は合計で50数回の出動が予定されている。主に1泊2日で調査に行く高所山岳地帯が主体であるが、近年は日帰りでの中・低山のレインジャー活動や自然保護委員会主催の勉強会も多く開催されるようになった。しかし、今のところはまだ調査が主体で保護活動まではなかなか手が回らないのが現状である。

 しかし、調査と観察を行っている間に無くなってしまう植物も多々あるわけである。山岳レインジャー活動で調査したものは報告書を記載して自然保護委員会でとりまとめたうえ、山梨県緑自然課に届けられる。その調査書を元に山梨県の行政の判断で保護に乗り出すかどうかが検討されるわけであるが、予算や時間等の都合でなかなか出来ないでいるのが現状である。しかし、危機的な状況にあり優先順位の高い植物については直接山岳連盟から働きかけて早急な対処が行われることがある。そのひとつがホザキツキヌキソウである。この花は昨年6月に自然保護グループの観察会が行われた後、富士川町や南アルプス市に山岳連盟から直接依頼してその年の秋には保護柵で囲われることとなった。しかしそのような事例は稀であり、現状では行政にお願いしてもなかなか動いてくれないことが多い。

 そこで今年から始動したのが、私的に行う保護作戦、保護ネット張りである。ブログ上では既に掲載済みであるが、4月から4つの山に小さな範囲ではあるが保護ネットを設置した。その効果はいかなるものかを今回の講演で発表させていただいた。以下の3つの作戦について今回述べさせていただいた。

 1.茅ヶ岳オキナグサ保護作戦
 2.湯村山キラキラキンラン保護作戦
 3.秘密の花咲じじい作戦


 ①茅ヶ岳オキナグサ保護作戦

 茅ヶ岳のザレ地に限局的に咲くキンポウゲ科オキナグサ(山梨県絶滅危惧Ⅱ類)は、平成24年ごろから花芽のみ食害に遭っているのが観察されていたが、平成26年の山梨県を見舞った記録的な大雪の後2年間は食害は観察されなかった。しかし昨年(平成28年)の4月下旬に訪れてみると、花芽どころか新芽の葉までが食べられており、とうとう一株も花を咲かせることなく終わってしまった。秋に再訪してみると、とりあえずは葉だけは出たようだ。3年間このような状況が続くと消滅してしまう可能性が高い。そこで今年、食害から守るために保護柵の設置を行った。


    茅ヶ岳のオキナグサ 平成27年4月撮影


    記録的な豪雪に見舞われた翌年の平成27年は食害に遭わずかなりの数の花が咲いてくれた。


    ところが昨年(平成28年)4月に訪れてみると、葉が少し出ているだけで花芽は全く見当たらない。


    良く見てみると、葉の根元から食べられていた。


    今年(平成29年)4月、保護ネットを自主的に設置する。


    地盤が固くポールの固定が悪いため、後日金属杭を持って行き固定し直した。5月連休中に作業を終えた。

 さて、保護柵の効果はどうだったであろうか?例年ならば花の満開を迎えている5月連休までネット張り作業がかかってしまったが、今年は花期が2週間ほど遅れてくれたおかげで花はまだ咲いていなかった。5月中旬、柵の効果を確認に訪問してみる。


    今年(平成29年)5月中旬に訪問。咲いている。葉の食害も全く受けていない。


    空に向かって嬉しそうに咲いている茅ヶ岳のオキナグサ。


    花数はだいぶ減ってしまっているが、ひとまずは咲かせることが出来た。保護ネットによる囲い込み作戦はひとまず成功である。

 茅ヶ岳オキナグサ保護作戦はひとまず成功した。しかし課題はたくさんあり、だいぶ減ってしまったこの花を復活させることが出来るのか、ネットの強度にはかなりの問題があり、雪の積もる冬の間に倒れてしまう可能性が高い。来年も修復に訪れる必要がある。


 ②湯村山キラキラキンラン保護作戦

 湯村山は甲府市の市街地からほど近い位置にあり、道が整備されていて地元の老人たちをはじめ、ハイキングやトレランの人たちもたくさん集う入り易い山である。それゆえにキンランをはじめとする種々の植物の盗掘や花摘みが後を絶たない。先日見た花がもう無くなっているというのは日常茶飯事で、特にキンラン、ギンランは目に見えて数を減らしている。保護のために今年5月、囲い込み作戦を展開した。


    湯村山のラン科キンラン(山梨県絶滅危惧ⅠB類)。


    湯村山には他にも稀少植物が咲く。ラン科エビネ(山梨県絶滅危惧Ⅱ類)


    ラン科ギンラン(山梨県絶滅危惧Ⅱ類)。いずれも盗掘と食害で近年著しく数を減らしている。


    本年(平成29年)5月、自主的に保護柵を設置する。これは棒の長さ1.5mの高いほうの保護柵。


    こちらは棒の長さ1mの低いほうの保護柵。

 高いほうの保護柵を2ヶ所、低いほうの保護柵4ヶ所設置し、合計8本のキンランを囲い込んだ。さて、その効果はどうだろうか?設置後1週間過ぎに見に行ってみる。


    高いほうの保護柵の中。囲い込んだキンランは無事で、もうすぐ花が散りそうである。


    一方、低いほうの保護柵は花が無くなっている。花が散ったのでは無さそうだ。


    囲われていない他のキンランを見てみると、同じようなことが起きていた。


    株の根元あたりを見てみると、花が摘まれて散乱している。盗掘を恐れて誰かが花を摘んだらしい。

 低い保護柵は人の手が容易に届いてしまうため、盗掘を恐れた誰かが保護のために花芽を摘んだらしい。株を持ち去られないためにはこの方法もひとつの手段かも知れないが、種を付けることなく花が終えてしまい世代交代が出来ないため、長い目で見ると花数を減らすことになってしまう。このようなことをしなくても良いような保護の方法を今後考えなければならない。隠して保護するのではなく、オープンな自然公園のようにするのもひとつの手段かと考えている。


 ③秘密の花咲かじじい作戦

 既に何度か記事をブログ上に書いているので、もはや秘密では無くなってしまっている。2年ほど前から始動した作戦である。
 ある写真家の先生からアツモリソウが咲く場所があるとの情報をいただき、平成24年6月、3株咲いているのを確認した。しかしその翌年から葉は出るものの花を咲かせなくなってしまい、さらにその翌年は弱弱しい葉を出すだけで全く花を咲かせる元気が無くなってしまった。そんな折、三ツ峠の清掃登山に参加する機会があり、あの保護地の中に咲くアツモリソウの元気なこと、それ以上にその素晴らしい環境に感動した。そしてこの花咲かじじい作戦が始動した。周辺のテンニンソウを取り除き木の枝を取り払って日当たりを良くしてやり、さらにはラン菌の活性を高めるような天然の肥料も散布した。平成27年の春には葉が出ているのを確認したがその年の秋には無くなってしまい、とうとう昨年(平成28年)には葉すら姿を見せなくなってしまった。花咲かじじい作戦は失敗したかと思ったのだが、手入れしていた場所を良く見ると鹿の食害により折角出てきた植物の葉が大部分食べられていたのである。植生再生のためにいろいろやって来たことは鹿の餌を増やしたに過ぎなかったということだった。そして今年の4月、まだ下草が生え出す前に保護柵の設置を行った。


    平成24年6月に見たアツモリソウ。今にして思えば、テンニンソウなどの共生しにくい植物に囲まれていて、悪条件の中に咲いていたと思う。


    おそらく保護されていない環境下で見ることが出来た最後の花と思われる。


    これも今にして思うことだが、花の色が薄く元気が無い。この時点で既に救助信号を発していたのだろう。


    その翌年の平成25年6月、3株の葉が出たが花は咲かせなかった。


    平成27年6月、弱弱しい葉を一株出したのみで、秋にはこの葉は無くなってしまっていた。


    平成28年6月、手入れしたにもかかわらず、とうとう葉すら出なくなってしまった。


    良く見てみると、鹿の食害でシュロソウの葉がほとんど食べられている。


    平成29年4月、まだ下草が生え出す前に保護柵を設置した。


    平成29年6月再訪してみる。保護柵の中は青々と草が茂っている。

 さて、今年(平成29年)4月に設置した保護柵の効果はどうなのだろうか?6月、期待と不安が入り混じりながら再訪してみると・・・!


    保護柵の中。食害は全く受けていない。そして良く見てみると・・・


    まだ弱弱しく、花を咲かせるのはずっと先になりそうだが、葉は出てくれた。

 昨年は食害に遭ったか、あるいは葉を出すだけの元気が無かったのかも知れない。しかし今年はなんとか葉だけでも出してくれた。とにかく嬉しかった。花咲かじじい作戦続行である。


 以上が今回三ツ峠山荘で行われた勉強会の要旨である。


 まとめ

 ・局所的な保護ネットは根本的な植生の回復は困難であろうが、短期間の保護には有効な手段である。
 ・行政が動くのを待っている間に稀少植物はどんどん減少してしまう。やれる範囲で保護すべきだと思う。これは保護ネットだけでなく、踏まれないように石や木で囲ってあげることも含めて、大切な保護活動だと考えている。
 ・山岳レインジャー活動も調査・観察から保護も考える時期に来ていると思う。これは自分自身を含めての戒めである。


三ツ峠の富士山と花たち  平成29年6月18日

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 6月17日の勉強会終了後、三ツ峠山荘ご主人の中村さんを交えて花談義があった。その中には花にたいへん詳しく保護活動も熱心にされている著名な方も含まれていた。私自身がこれからやろうとしていることの先駆者のような方々である。最も印象的だったのは植物を保護の名のもとに自分の売名行為や利益のために利用してはならないということだ。私自身、そのようなつもりで記事を書いているわけでは無いのだが、記事をネット上に掲載すること自体がそのような行為になってしまっているのかも知れない。ネット上に記事を書くことの難しさを感じさせられた。談義は深夜10時ごろまで熱心に行われ、翌日のこともあるのでお開きとなった。

 その後部屋に行って参加メンバーと談義し、寝たのは11時半ごろだった。翌朝はあまり天候が良く無さそうだったが、目覚まし時計を3時半にセットする。目が覚めたのは3時15分、外を見ると雲海が広がっている。4時に起き出して外に出ると、空は曇っているものの富士山が雲海の上に浮かんでいた。朝食は7時ごろと聞いていたので、その前に富士山の撮影と花を見て回るためにカメラと三脚を担いで山頂に向かう。


    雲海に浮かんだ富士山。。今回はEosM2に11‐22㎜の新調したレンズを装着して撮影したが、水平照準が装備されていないためにずれている。


    山頂直下から見る富士山。


    三ツ峠山山頂に到着した頃には雲が湧き始め、富士山は隠されてしまった。


    わずかな雲の切れ間から見る富士山。前景のミツバツツジはもう終わっている。


    ヤマツツジと富士山。今度は富士山が姿を現さず。


    三ツ峠山頂。標柱が新しくなったが、標高が記されていない。

 花を観察しながら別ルートで三ツ峠山荘に戻る。


    シロバナフウリンツツジが満開。


    ムラサキツリガネツツジは散り始め。


    アオチドリ。1本しか見つからない。


    数を減らしているノビネチドリは柵で囲われた。


    そしてこの花。昨年は1株だったのに今年は2株咲いた。


    しかも元気いっぱい、色鮮やかだ。この花にとっての三ツ峠の環境の良さを物語っている。


    そしてこちらの花も元気に咲いていた。


    アマドコロと雲海

 三ツ峠山荘に戻るともうすぐ食事になりそうだったが、折角富士山が姿を現してきたので、展望台に行ってみることにする。


    アヤメと富士山


    新緑のカラマツと富士山


    展望台から見る富士山

 展望台から戻ると、ちょうど食事が始まったばかりだった。朝食にしてはボリュームたっぷりのおかずに美味しい御飯、山に登ったのにきっと体重が増えて下山することになるのだろう。

 この日は山岳連盟のメンバーが9時ごろに清掃登山にやって来る予定だったので、そちらのメンバーに入れてもらって清掃活動を行う予定だった。草刈り鎌も持参してきた。しかし、宿泊組のメンバーは既に前日清掃活動を行っておりこの日はあまり人が行かない尾根を途中まで下りてみると言っている。どうするか迷ったが、宿泊組に同行して尾根を歩いてみることにした。尾根の途中にはイワカガミの群落があったが花は終わっていた。


    あまり人が入らない尾根にはイワカガミの群落があった。花は既に終わっていた。


    咲き残っていたイワカガミ


    ツルシロカネソウ


    途中の岩に咲いていた白いラン

 人が入らない尾根ではあるが鹿はだいぶ入り込んでいるようで、ショウマ類の葉がだいぶ食害に遭っていた。カモシカが住んでいてニホンジカは比較的少ないと言われている三ツ峠であるが、少なからず鹿の食害はあるようだ。やはり花を保護するためには保護柵かメッシュの囲いが必要であろう。人の手を加えることに賛否あるかも知れないが、花数が増えていることから推察すると花たちにとってこの環境が快適であることは間違いない。

トウゴクサバノオ?いや、これは・・・ 芦川スズランの森  平成29年6月18日

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 先日トウゴクサバノオが咲いていたという情報をいただき、花は終わっているだろうがサバノオの由来となった種が付いているだろうと期待して訪れてみた。詳細な場所までは聞いていないがおそらくはあのあたりにあるはず。三ツ峠では清掃に参加せずに(泊り組の山行に参加して戻ってきた時には当日組の清掃はもう終わっていた)早目の下山となったので、立ち寄る時間は十分にあった。


    芦川スズランの森。スズランは終わりもう訪れる人も居ない。


    ベニバナイチヤクソウももう終わりである。


    もうすぐ咲きそうなクモキリソウ属の花。しかし何故にこんな場所を好んで咲くのか?


    ウマノアシガタ


    クサタチバナは真っ盛り。

 目的地に到着した。正規の道から外れて林の中に入ってみると、それらしき葉が群落を成している。しかし花はもう盛期を過ぎて見つからない。あたりを探してみると、咲き残った花がちらほらと残っている。最初に見つけた花は大豆の大きさほどしか無く、これがトウゴクサバノオかと思ったが、それにしては葉っぱがツルシロカネソウにそっくりだ。他の場所を探すと今度は大き目の花が咲いていた。これはどう見ても・・・


    それらしき葉の群生地があった。この時は情報を信じてトウゴクサバノオだと思っていたが・・・


    違和感のあるこの葉っぱ。トウゴクサバノオにしては大きいような??


    大豆大の小さな花が咲き残っていた。花の大きさからやっぱりトウゴクサバノオ、と思ったが・・・


    近くには大き目の花が咲いていた。


    これはどうみても・・・・・


    ツルシロカネソウだろう。

 自宅に帰ってからネットで画像を調べながら撮影してきた写真を検討したが、やはりこれはツルシロカネソウだ。探していたトウゴクサバノオでは無かったのは残念ではあるが、山の上では食害と環境の変化で激減しているツルシロカネソウがこの場所では元気に群落を形成してくれているのは嬉しいことである。これでも山梨県絶滅危惧Ⅱ類の花である。来年はいちばん良い時期に再訪してみたい。


    たぶん、普通のマムシグサ。

遥か北の大地へ  平成29年6月

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 遥か北の大地を遠征してきました。飛行機の故障で出発が1日遅れ、悪天候で山頂までは行けず・・・それでもあまり見られない花と北の島の自然環境を楽しんできました。


    ハクサンチドリ


    コウリンタンポポ


    チシマフウロ


    カラフトハナシノブ


    ボタンキンバイ


    ムラサキツリバナ(クロツリバナ)


    カラフトサイコ


    レーニン像。時差の関係もありますが、日没は午後8時半過ぎ。

 詳細はそのうち。





遥か北の大地へ サハリン黒川湿原  平成29年6月28日

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 所属する山岳会嶺朋クラブのメンバーが主体となってサハリンのフラワートレッキングに行くツアーが特別に予定され、お誘いを受けた。5月には学会で出張したばかりだし、すぐには返事が出来なかったが、夏休みをもう5年ほどまともにとっていないことだし、おそらく今回行かないともう行く機会は無いだろう。とりあえずは参加枠だけとっておいてもらってあったが、正式な返事を必要とするギリギリのところで行くことに決める。参加者は私を含めて13名、そのうちの8名が嶺朋クラブのメンバーである。アルパインツアーで企画するこのツアー、おそらくゆっくり花の写真を撮っている時間は無いだろうが、それを承知で参加した。

 予定では6月27日の夕方4時半に成田を出発し、28日の朝から黒川湿原を3~4時間かけてゆっくり散策する予定だった。27日に飛行機に搭乗したまでは良かったが、2時間経っても飛行機が飛ばない。時々入る機長からのアナウンスもロシア語で何を言っているのかわからない。そのうち日本語でアナウンスが入り、電気系統の故障であと20分ほど、さらにあと40分ほど修理に時間がかかりそうだという。結局3時間近く機内で待機したが、最終的にその日は修理が完了せず、出発が出来なくなった。航空会社の手配でホテル日航成田に宿をとってくれて、飛行機が飛び立ったのは翌日28日の午前9時半になった。2時間ほどでサハリンのユジノサハリンスク空港に到着するが、2時間の時差があり空港到着は現地時間で午後の2時半になってしまった。

 天候が良かったので空港でバスに乗り、そのままユジノサハリンスクの北にある黒川湿原に移動する。移動に1時間以上かかり、黒川湿原散策は約1時間ほどしか時間がとれず、周回の予定が途中で引き返すことになってしまった。これも止む無しだろう。


    6月27日、サハリン行きの飛行機には登場したものの・・・電気系統の故障で飛行機は飛ばず、出発は翌朝となる。


    6月28日、今度は無事に飛んだ。下に見えるのはサハリンの南の端、海岸沿いに細い道が走っている他は道も家も何も無い。今は誰も住んでいないそうだ。


    ユジノサハリンスク到着。向こうに見えるのはスキー場のある朝日山、中央の銅像が立つのがレーニン広場。


    ユジノサハリンスク空港。建物は地味だが、空港は広い。ユジノサハリンスクは人口19万人のサハリンの首都、サハリン全体で約70万人の人口がある。


    ユジノサハリンスク郊外の田園風景。町の中にも普通にキンポウゲ(サハリンキンポウゲ)が生えているのには驚いた。


    サハリンキンポウゲが広がるお花畑の中には牛が放牧されている。

 4時半、黒川湿原に到着し、ワシリーさんという現地ガイドさんに案内していただき湿原に入る。この湿原は泥炭地という泥沼になっていて、長靴に履き変えて湿原の中を進む。


    当然ながら萼が反り返った西洋タンポポ。


    コウリンタンポポはまだ咲き始めたばかりでほとんどが蕾。


    サハリンキンポウゲはあちらこちらにたくさん咲いている。


    オオハナウド。茎に細かい棘があり、有毒で刺さると1ヶ月くらい腫れるらしい。


    オオイヌノフグリに似ているが、カラフトヒヨクソウという花。


    エゾムラサキ。別名ミヤマワスレナグサ。


    オオヤマフスマだと思う。


    ヤナギランがたくさん生えていたが花はまだ咲かない。


    いよいよ泥炭地へ踏み込む。場所によってはくるぶしあたりまで泥にハマる湿原を行く。


    カラフトイソツツジの大群落がある。


    カラフトイソツツジと湿原の沼。


    ホロムイイチゴ。石狩の幌向で最初に見つかったことからこの名前があるらしい。


    ホロムイイチゴ。キイチゴのような赤い実をつけるが、日本ではあまり食用にはされない。そもそも、個体数が少ないようだ。


    種になったヤチツツジ。


    幸運にも一輪だけ咲き残っていたヤチツツジの花。ヨウラクツツジに似ている。


    ヤチヤナギも花は終わっている。


    ツルコケモモ。サハリンではコケモモジャムだけでなくこのツルコケモモのジャムもあるらしい。


    時間は5時半近くなった。空は青空なのに、ここまでで撤退となる。

 時間の制約があり、湿原の半分も進めないうちにタイムアップとなってしまう。モウセンゴケがちらほらと生えていたが撮り忘れた。ここにはナガバノモウセンゴケも生えているらしいが、おそらくはもっと先のほうなのだろう。見ることが出来なかった。


    ユジノサハリンスクへの帰り際にバスを止めてこの景色を撮影させてくれた。


    驚いたのが道端に普通に咲いているこの花、オニシオガマ。デカい!

 予定通りに27日に飛行機が飛んでいればこの日は午後から市内観光があるはずだったが、そちらは中止となり、そのままユジノサハリンスク市街のレストランで夕食となる。メインはカツレツだったが、そのほかの何を食べても美味しい。特にハッシュドポテトがとても美味しかった。しかし、話には聞いていたが綺麗なお嬢様2人が料理を運んでくれたが、噂通り全く微笑むこともない接客は日本から行くとかなりの違和感を覚える。他の店もほとんど同じような接客なので、ロシアの飲食店は標準的にこのような愛想の無い接客なのだろう。


    少し時間があったので、レストランの向かいにあるレーニン公園に立ち寄った。既に時刻は9時近い。


    未明3時40分、ホテルの窓から見る景色。昨日とは打って変わって曇り空、前日は見えていたチェーホフ山も雲に覆われている。朝8時に出発の予定だ。

遥か北の大地へ チェーホフ山(前編)  平成29年6月29日

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 チェーホフ山は標高1040mほどの日本でいえば中・低山であるが、北の大地であるが故に気象条件は南アルプスの標高2,300mくらいに相当する。標高差こそ800mも無いトレッキングコースであるが、途中は急登の斜面あり笹とハイマツ帯の藪あり、さらに稜線に抜けてから山頂までかなり長く、決して侮れない山である。しかし、山上のお花畑には日本では利尻島でしか見られないボタンキンバイのお花畑や、カラフトハナシノブ、コウリンタンポポなどが咲き誇っているらしい。
 
 サハリンには梅雨は無いのだが、海に囲まれているために雲が発生し易く、なかなかすっきりとは晴れないらしい。私たちの前の週に開催されたほぼ同じ行程のツアーは、ずっと雨の悪天候で気温が低く、チェーホフ山は山頂を踏まずに引き返したということだ。我々のツアーは前日の28日に抜けるような青空が広がってくれたが、夜から雲が広がり山は雲に覆われてしまった。朝6時にモーニングコール、7時50分集合の予定だが、未明3時半に目が覚めてしまい、そのままウトウトしているうちにモーニングコールがかかる。手配していただいた特別車両に乗り込み、予定通り8時にホテルから出発となる。



    未明3時40分、ホテルの窓から見る景色。山は雲に覆われて少し雨が降ったようだ。


    朝6時の景色。チェーホフ山は写真の左側にあるのだが、完全に雲の中。おそらく山の上は霧か小雨だろう。


    装甲車のような特別車両に乗り込んで林道いちばん奥にある登山口まで移動する。林道はかなりの悪路だった。


    もうすぐ咲きそうなオニシモツケ。とにかくデカい。


    こちらはオオハンゴンソウか?

 サハリンは鹿の食害がほとんど無いそうで、北海道で問題となっているエゾシカの数はかなり少ないらしい。林道の脇や登山道沿いには背丈を越えるような青々とした草が元気に茂っていた。


    オオアマドコロ


    ミズバショウと思うが、こちらではヒメカイウも見られるらしい。


    オクエゾサイシン。暗い場所だったので手持ちで撮ると少しブレてしまう。


    トクサ(トクサ科トクサ属)。イノシシの食害に遭っていた。


    登山道脇に咲いていたノビネチドリ。


    ノビネチドリ。あまり数は多く無い。


    こちらはハクサンチドリ。稜線のお花畑にはたくさん咲いていた。


    サイハイラン


    コケイランが1株だけ。周辺を探せばあるのだろうが、探す間もなく先に進む。


    結実したエゾノリュウキンカ。


    ツマトリソウは普通に生えている。


    ゴゼンタチバナ


    オオヤマフスマだと思う。


    カラス岩に到着する。


    カラス岩。確かにくちばしと羽のようにみえるが、ずいぶん太ったカラスだ。

 カラス岩までは樹林帯の中の道で、ところどころロープが張られた急斜面がある。カラス岩から先は針葉樹林から笹交じりの広葉樹林帯に変わり、かなりきつい急斜面となる。途中から草原の混じるお花畑が見え始め、その中には見たかったカラフトハナシノブが咲いていた。


    カラス岩のあたりから見え始めたカラフトハナシノブ。


    急斜面の脇に咲いていたチシマフウロ


    チシマヒョウタンボク(スイカズラ科スイカズラ属)


    ミヤマハンショウヅル


    マルバシモツケ


    稜線の直下、姿を現したボタンキンバイ。


    カラフトハナシノブもたくさん咲いている。

 お花畑のある第一展望台に11時20分に到着、ここまで2時間少々かかっているが、想定していた通りゆっくり花を撮ったり探したりする余裕は無かった。しかしこれでも予定していたよりもピッチが遅いらしい。稜線上は予想通り霧が巻いていて展望が悪く、風が強くて寒い。カッパを着て先に進むこととなる。(後編に続く)

遥か北の大地へ チェーホフ山(後編)  平成29年6月29日

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 チェーホフ山はかつて日本が樺太の北緯50度より南側を統治していた第2次世界大戦以前には高山植物の宝庫として天然記念物に指定されていた山である。鹿の食害をほとんど受けていないこの山ではそのままの植生が残っている可能性が高い。

 11時20分ごろに稜線の第一展望台に到着し、ここで小休止した後に山頂を目指して出発する。標高差こそもう300mほどしか無いものの、ここからはアップダウンのある長い稜線で、途中からはハイマツ帯の不明瞭な道となる。空模様もあまり
芳しくない。ここからは三脚を担いで歩くが、あまりゆっくり撮影している時間は無く、そのうえ霧でレンズが結露してしまうというアクシデントも起こってしまう。


    第一展望台のお花畑に咲いていたカラフトハナシノブ。


    カラフトハナシノブ


    このお花畑にはハクサンチドリがたくさん咲いていた。周辺にたくさん出ている葉はコウリンタンポポ。


    チシマザクラ


    綺麗なチシマザクラの花。


    ムラサキツリバナ(別名クロツリバナ)


    ウコンウツギ(スイカズラ科タニウツギ属)


    オオバナエンレイソウ。大型で豪華な花。


    森林限界は標高約900m付近。ハイマツ帯を進む。風が強くて寒い。


    ハイマツの切れ間にはミツバオウレンがいっぱい。


    この奇怪な岩の下で風を避けながら昼食となる。時間は12時半。

 奇岩の下で12時半となり、昼食となる。相変わらず天候がいまひとつのうえに風が強い。この先の第3岩峰まで約1時間、そこから山頂までは往復で3時間くらいかかるらしい。今のピッチだと下山が夕方8時過ぎになってしまうとのことだ。ガイドさんと添乗員で相談のうえ、この先の第3岩峰周辺のお花畑を見て撤収することになる。前の週のツアーも悪天候でここまでだったそうだが、天候が良かったとしても、花を見ながら山頂までは難しかったと思う。


    マルバシモツケ


    見えてきた第3岩峰(展望台)直下の岩。


    第3岩峰の周辺に咲いていたハクサンイチゲ。


    葉の幅が広く先端が尖らないことから、エゾノハクサンイチゲと思われる。


    イワウメの群落


    イワベンケイ


    ??もうすぐ咲きそうな上の花も下の葉っぱも何だかわからず。


    チシマゼキショウ(ユリ科チシマゼキショウ属)


    おそらく特産種のカラフトサイコ


    カラフトサイコ。レブンサイコに近い。


    少し天候が回復。天気が良ければ向こうにはオホーツク海が見えたのだろう。


    山頂は隣のピークを越えてその先に見えるピークのさらに先。遠過ぎる・・・。

 一瞬見えた稜線の先はまだ果てしなく遠く見えた。もっと高山植物を見たいという思いもあったが、天候悪く道程も長い。ここまでで撤退することとなる。

 帰りは少しわがままを言わせてもらい、いちばん先頭のガイドさんに同行していただいて一足先に下りさせてもらい、第一展望台付近のお花畑を存分に撮影させていただいた。ここに咲くボタンキンバイはややオレンジ色がかっていてとても美しい。中には礼文島と同じような黄色い花も混ざっている。コウリンタンポポはたくさんあったが、咲いているのはほんの数本だけで、これが一斉に咲いたらさぞかし綺麗なことだろう。


    第一展望台付近のお花畑に咲いていたハクサンチドリ。


    カラフトハナシノブ


    チシマフウロ


    色鮮やかなコウリンタンポポはまだ数輪しか咲いていなかった。登山道脇には蕾がたくさん出ていた。


    コウリンタンポポ


    ボタンキンバイ。これは黄色いタイプ。


    こちらが見たかったオレンジ色のボタンキンバイ。


    素晴らしい!!


    ウラジロタデ


    ヤマブキショウマ

 大満足、とは言えないが、見たかったカラフトハナシノブとボタンキンバイは見ることが出来た。もうひとつ、カラフトゲンゲという赤紫色の花を見たかったのだが、残念ながらまだ開花していなかった。エゾゴゼンタチバナは山頂付近に群生しているらしいが、途中で少数だけ見られたその花はまだ蕾も出ていなかった。大雪山のような広大なお花畑を想像していたのだが、樺太の高山植物はハイマツの中の岩と土のところに散在的に咲いているという感じだった。おそらく、花の種類はほぼ8割は北海道と同じものなのではないだろうか。しかし、ガイドのワシリーさんの話ではサハリン北部にある蛇紋岩の山にはここにしか無い特産種が何種類も咲いているそうである。ただし、大きな町は無いのでテント泊になるそうである。機会があるならば、そのような場所にも行ってみたい。

 下山して車に乗り込むと、間もなく雨が降り出した。次第に雨脚が強くなり、あの場所で引き返していなければ、足元の悪い急斜面をスリップしながら下山することになっていたのだろう。引き返したことは適切な判断だったと思う。

遥か北の大地へ ユジノサハリンスク市内観光  平成29年6月30日

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 飛行機の故障で出発が1日遅れてしまったため、予定されていた市内観光の大部分が中止になってしまった。しかし、添乗員の田中さんと現地ガイドのワシリーさんがいろいろと配慮してくれて、主要な観光地を帰国する当日の午前に案内してくれた。まず乗ることは無いだろうと思っていたサハリン鉄道にも数駅ではあるが乗ることが出来た。


    日本人墓地。29日、チェーホフ山から下山後のわずかな時間を使って訪れた。墓は残っているが遺骨は全て日本に移されているそうだ。


    毎年手入れに訪れに来ているそうだ。墓の中はカラフトキンポウゲやルピナスでいっぱいになっていて花壇のようだ。こちらでは雑草なのだろう。


    帰国日の30日午前に訪れたガガーリン公園。ガガーリンはロシアの英雄、宇宙飛行士だ。敷地内は「子ども鉄道」が走っていて、車掌も切符売り場も子供がやるらしい。


    ガガーリン公園の池はかつての王子製紙がこの地に建設したもの。日本が統治していた時代の名残りの池である。


    次に向かったのがサハリン鉄道ユジノサハリンスク駅。


    鉄道はサハリン東側の中央よりもやや北まで伸びている。


    サハリン鉄道に乗る。右のねずみ色の服を着ている女性が車掌さん、左のオレンジのジャケットを着ている人は監視員さんで、写真を撮っていると時に没収されることもあるという。


    サハリン鉄道の切符。なかなか洒落ている。2駅で20ルーブル、約50円。


    コウリンタンポポは線路の脇にも普通に咲いている。


    民芸博物館。ヒグマやワシのはく製の他、アイヌ人の衣装など興味を引く展示物がたくさんある。展示物の撮影は別料金がかかる。


    入り口の扉は菊の御紋が入っている。


    しかし・・・これは狛犬では無くてマーライオンの偽物だろう。

 飛行機は午後2時出発予定だが、ギリギリの12時半まで観光をさせていただき、空港に向かった。


    今度は予定時刻にきっちり飛び立った。雲海と飛行機雲と小さく月。

 出発が1日遅れたために2泊3日という短期間の滞在となってしまったが、ユジノサハリンスク市は予想していたよりも遥かに綺麗で大きな町だった。植物はどれを見ても日本よりひとまわり大きく見える。出発前にインターネットで調べてあったので、花は予想していた通り北海道に咲いているものとほぼ同じだった。ただ、北海道の大雪山に見られるような広大なお花畑はユジノサハリンスク周辺の山では見られないようだ。しかし、ほとんどが人の入らない未開の地であり食害を受けていないサハリンの大地には、きっと珍しい植物や素晴らしいお花畑が眠っているのだろう。

素心花のランを求めて 鳳凰山(中腹まで)  平成29年7月2日

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 鳳凰山の中腹(といっても標高2,000mを越える高い場所)に、唇弁に斑点の入っていない真っ白な「素心花」と呼ばれるイチヨウランが咲いているらしい。インターネットで見ても確かに真っ白な唇弁の花の投稿がいくつか見られる。富士山や長野県にもあるようで、どうやら高所に咲くイチヨウランはこのような姿をしているものがあるようだ。標高差約1,200mを登るので早目の出発予定であったが、目を覚ませば既に時間は6時を回っている。登山口出発は7時半になってしまった。


    標高の低いところではコアジサイが満開


    アオチドリ発見


    花の散ったカモメラン。花穂は結構出ており、今年も例年通りに咲いてくれたようだ。


    咲き残っていたカモメラン


    登山道脇に咲いたカモメラン


    もうすぐ咲きそうなヤブレガサ


    こちらももうすぐ咲きそうなコバノイチヤクソウ


    樹林帯の中の道を登る


    キソチドリと思われるラン科の葉はあちらこちらで見かけるがまだ花は咲いていない。


    標高1,900mあたりで見つけたイチヨウラン。これは斑点が入った普通のもの。


    ようやく燕頭山、2,105m。時間は既に12時。

 燕頭山でもう12時になってしまった。本番はこれからである。軽食をとって小休止して出発する。


    もうすぐ咲きそう、やはりキソチドリのようだ。


    アザミの仲間だが秋にはどんな花が咲くのだろう?右端に見えるタカオヒゴタイのような葉とは別物のように見える。


    キバナノコマノツメ


    コミヤマカタバミ


    緑色のゴゼンタチバナ


    標高が高くなるとまだイワカガミが咲き残っていた。


    久々に見るオサバグサ


    その先にはどっさり咲いていた。足が止まってしまう。


    この感じの森ならばきっと居るだろうと思っていた。


    コフタバラン。小さいうえに緑色の保護色をしているが、一つ見つかると次々に見えてくる。

 標高約2,350mあたりまで来た。鳳凰小屋はもう目前であるが、写真を撮るのに時間をかけすぎて折り返し予定時刻だった2時を過ぎてしまった。コフタバランにも出会えたことだし、午後2時半、小屋まであと15分というところまで行って引き返すことにする。

 さて、探し物の白いイチヨウランはどうだったのだろうか?


    標高2,100m付近で見つけたイチヨウラン群落。計11本。


    その近くに7本。


    しかし、この花は・・・


    探していた純白の素心花ではなく、普通のイチヨウランだ。


    探しものは標高2,250mあたりで見つけたこちらの花だろう。蕾に色が付いていないように見える。開花するまであと1週間ほどだろうか。

 例年ならばこの時期で良かったはずだが、花期が遅れた今年は探し物の花は残念ながらまだ蕾だった。再訪できるならば来てみたいが・・・日程的に今年は難しそうだ。折角来るならば鳳凰小屋泊りで鳳凰山周回したいがそれも難しく、数年前から見てみたいと思っていた白いイチヨウラン、今年もおあずけになってしまいそうだ。

富士北麓ランラン歩き  平成29年7月7日

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 GPSを持つようになってから、この季節の恒例となりつつある富士北麓花散策である。だいぶ慣れてはきたが、まだ歩いていないマイナールート(ルートと言って良いのかどうか?)も多数あるし、着生植物の散策に関してはまだ不慣れの上に目が悪くて全く進んでいない。今回もほぼ昨年散策したルートを花の確認に出かけてみた。


    ツルアリドオシは咲き始めたばかり。


    例年ならばツルアリドオシに混ざって咲いているこの花だが、一足先に咲いていた。


    アリドオシラン


    こちらはまだ蕾。下に小さな一つ葉が出ている。


    コイチヨウラン。くるりと巻いた茎のループが可愛らしい。


    予定ルートを1本間違えたらしい。広葉樹林の中を行くはずだったがカラマツ林に入ってしまった。


    種になったヤマシャクヤク。風で揺れる。


    強行突破すると、GPSに載っていない道(らしきもの)に出た。ここで雨が降り出してしまい、カッパを着る。


    まともな道に合流し、目的地に行く。コアツモリソウ。


    既にほとんどが散っており、咲き残りを探して撮影。


    ヒトツボクロは雨が滴る。


    数は昨年よりも若干少ないように見える。


    昨年の種と今年の花。

 午後の遅い時間から歩いた上に雨で森の中は薄暗く、ほとんどは三脚で固定して撮影したカットである。風があまり吹かなかったことが幸いした。

 もうひとつ見ておきたかったのがキバナノショウキランであるが、ルートを間違えたこともあって残念ながら発見できなかった。昨年も小さな株しか発見できなかったので今年こそはと思ったが、時間も足りなかった。またの機会に探しに行きたい。

花咲く櫛形山へ(前編) ~クサタチバナのお花畑~  平成29年7月8日

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 この日は山岳連盟レインジャー活動の一環で、櫛形山の植物観察会および鹿食害調査が行われたのだが、当直疲れや仕事の都合等で集合時間には間に合わず、一人遅れて11時半に池の茶屋から入山した。花の咲くこの季節は登山者も多く駐車場は満車で一旦は路上に駐車したが、準備している間に2台の車が帰って行って、都合良く駐車場に止めることが出来た。レインジャー隊はおそらく周回コースだろうが、どちら周りで行ったのかは不明である。しかし、私が行くのはあまり人が歩いていない管理歩道なのでまず会うことは無いであろう。もちろん、裸山のアヤメを見たいのが一番の目的ではあるが、そのほかに見ておきたいものがいくつかある。その一つが6月に櫛形山を訪れた際に発見したアオバヒョウタンボク(スルガヒョウタンボク)と思われる木の確認である。咲いている花を確認できれば、ヒョウタンボクかどうか、アオバかどうかもわかるはずだ。


    管理歩道沿いに咲いていたマムシグサ。普通のマムシグサと思われる。


    タカネグンナイフウロ


    ヨツバムグラだが、この株は葉が5枚の変わり者。


    クモキリソウ属の葉を見つけたが花は咲いておらず。周辺も探したがあったのはこの株とその後ろ側の葉だけ。


    前回見つけたアオチドリの咲き残り。ずいぶん数が減っていると思えば・・・


    草むらを探してみればこの有様。鹿に食べられている。


    クサタチバナが満開になっている。


    開けた草地に出ると、そこはクサタチバナだらけ。


    圧巻のクサタチバナお花畑


    これだけ咲いているならば、いっそクサタチバナ平という名前でも付ければ良さそうだ。


    天気が良ければ、このクサタチバナ畑を前景に富士山を撮影することも可能だ。


    道を短絡してバリアンスルートを稜線の登山道に抜け出る。お決まりのマルバタケブキ群落。


    今度はカニコウモリ群落。いずれも鹿が食べない植物ばかり。


    バラボタン平のマルバタケブキ群落。花が咲けばこれはこれで圧巻である。


    標高が上がりツガやカラマツの森に入ると、林床にはユモトマムシグサが生えている。数は思ったよりもたくさんありそうだ。

 さて、問題の管理歩道沿いで見つけたアオバヒョウタンボクらしき木の正体はどうなのだろうか?木の周りをぐるりと1周してみたが、花が咲いていない。かろうじて花の散った後の花帆らしきものがあったが、これはヒョウタンボクなのだろうか??


    管理歩道沿いのヒョウタンボクらしき木の葉。花が付いていない。


    良く探してみると、花が散った後の花帆らしきものが付いていた。ヒョウタンボクは2つ連なったひょうたんのような実が成るのが特徴だが、違うように見える。

 樹林帯の中の登山道沿いには保護柵で囲われたアオバヒョウタンボクがある。その木を覗き込んでみると、同じように花が付いていない。良く探してみると、似たような花穂が付いている。


    登山道沿いの保護柵内にあるアオバヒョウタンボク。やはり花が付いていない。


    良く探すと先ほどと同じような花穂が付いている。

 どうやらこのアオバヒョウタンボクは花付きが悪いらしく、もっと早い時期に咲くようだ。花穂の付き方を見る限りではおそらくは管理歩道沿いの木もヒョウタンボクで間違い無さそうだが、何のヒョウタンボクかは花を見てみないとわからない。来年への宿題となってしまった。ちなみにアオバヒョウタンボクは山梨県では絶滅危惧ⅠB類に属する稀少植物である。

 さて、時間は午後3時、ようやく裸山に到着した。途中では20人連れくらいの団体さんとすれ違ったが、この時間になるとさすがに人も少ない。まだ蕾の花も多いが、今年もアヤメがたくさん咲いてくれている。


    裸山のアヤメ


    毎年の定点からの撮影。昨年以上に増えているように見える。

 アヤメは増殖力が強いようで、昨年以上に咲いているように見える。まだ蕾も多く、来週あたりが盛期になりそうだ。


 前半見てきたクサタチバナの大群落を含め、マルバタケブキもカニコウモリも鹿の食べない植物ばかりで、場所を変えるとバイケイソウの大群落やトリカブト群落も見られる。鹿の食害を受けた成れの果てを見ているのだと思うが、これはこれで見事な群落だと思う。こういうお花畑も悪く無いのかも知れない。(後編に続く)

花咲く櫛形山へ(後編) ~復活したアヤメ~  平成29年7月8日

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 先行している山梨県山岳レインジャー隊から約3時間遅れの11時半に池の茶屋登山口を出発し、管理歩道を歩いて裸山には午後3時に到着した。この時間になるともはや人は少なく、裸山山頂から下りてきた7~8人のグループを見送った後はもう誰も居なくなった。三脚を取り出して思う存分復活したアヤメのお花畑を撮影させてもらう。


    復活した裸山のアヤメ。昨年以上に咲いている。そしてまだ花を咲かせない若い葉もたくさん出ている。


    アヤメ。まだ蕾もたくさんある。


    アヤメ


    2年前に新たに囲われた場所はキンポウゲが復活。


    オオヤマフスマが群生


    アヤメとキバナノヤマオダマキが仲良くたくさん咲いている。


    裸山山頂。もう誰も居ない。


    山頂付近もアヤメが復活しつつある。アヤメを前景に富士山を撮影できる日もそう遠く無いかもしれない。

 アヤメが復活した裸山のお花畑を十分に満喫し、裸山の裏側からもみじ谷側の周回歩道に下りて西側からアヤメ平に入る。時間は午後4時を過ぎ、アヤメ平にも誰も居なかった。


    西側からアヤメ平に入る。


    アヤメ平のお花畑。青々と茂った草むらの中にキンポウゲやテガタチドリ、グンナイフウロなどが咲いている。


    テガタチドリは咲き始めたばかり。


    遊歩道脇に元気に咲いた色の濃いテガタチドリ。


    キンポウゲの中に咲くテガタチドリ


    白花のエゾノタチツボスミレ


    平成峡側の草地もキンポウゲがたくさん咲き、アヤメも復活し始めている。


    アヤメとキンポウゲ、テガタチドリの姿もある。


    今回のアヤメ平で一番見たかったのがこの花。


    ずっとシナノキンバイだと思っていたのだが、それにしては背が高いし、葉も小さい。


    調べてみると、これはキンバイソウであることがわかった。望遠レンズを持って行ったのはこの花が撮りたかったからだ。

 キンバイソウはシナノキンバイよりも標高が低い場所に咲いており、背が高いのが特徴である。10年前の古い画像を見ていたら、甲府市北部にある曲岳・黒富士界隈の草地の画像に偶然このキンバイソウが写っていたが、おそらく今では見ることが出来ないであろう。シナノキンバイよりも見ることが難しい花になっている。

 時間は5時を過ぎてしまった。もちろんもう誰も居ない。櫛形山を十分に楽しんだことだし、写真もたくさん撮った。そろそろ下山だが、ひょっとしたら夕暮れの頃にもうひとつ良い景色が見られるかも知れない。時間調整をしながら、故意にゆっくりと歩き、富士山の見える場所に移動する。


    十四夜の月が昇って来た。しかし・・・富士山は霞の中にうっすらとしか見えない。


    月が富士山の上まで昇った頃には金色に輝く月になるだろうと狙っていたが・・・富士山があまり見えない。

 もう少し富士山が鮮明に見えていたならば月が富士山の真上に昇るまで待ったのだが、この霞は消えそうも無い。あきらめて下山して行くと、その後富士山の姿は見えなくなってしまった。この季節は雲や霞が多くて富士山を撮影するのはよほどの幸運が無いと難しい。

 アオバヒョウタンボクは来年への宿題となってしまったが、復活したアヤメのお花畑、クサタチバナ大群落、キンバイソウと、櫛形山の魅力を存分に楽しんだ1日となった。午後7時、下山。
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