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Channel: 山梨百名山から見る風景
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西沢渓谷探索 令和3年4月21日

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 昨年は遊歩道崩落のため入山規制があって年間を通じて入れなかった西沢渓谷であるが、崩落した橋を迂回する道が完成しつつあり、今年は入山できそうな様相である。まだいつから入渓できるのかは不明であるが、今回は植物調査の目的があり市役所に許可をいただいての入山となった。


    ヒカゲツツジが咲く。


    日当たりの良いところではアズマシャクナゲが咲き始めていた。


    今回のいちばんの目的はこのクモイコザクラの状況である。


    まだ咲き始めたばかりで蕾が多かった。


    固まって咲いているところもあった。


    一番見たかったのはこの葉の形態と大きさである。予想では小さめの葉ではないかと思ったのだが意外と大きく切れ込みも深い。

 昨年奥秩父山系の乾徳山で見てきたクモイコザクラは、葉が小さくて毛が多く切れ込みも小さかった。同じ奥秩父山系の西沢渓谷も同じような形の葉をしているのではないかと予想していたのだが、意外と大きく切れ込みが深く、葉の辺縁の鋸歯も尖っていてクモイコザクラらしい葉の形をしていた。しかし、葉脈が窪んでいるところは八ヶ岳や南アルプスのものに比べて深く、コイワザクラに近い。


    驚いたことにこんな花が咲いていた。


    イワウチワ。山梨県では上野原近傍にしか無いと思っていたらこんなところにも生育していた。


    シダも見て巡る。オオクボシダ。


    胞子嚢が付いていた。一番多く着生していた岩は崩落して消滅していたのが残念。


    昨年は探したが見つからなかったヒメスギラン。


    今年はしっかりと出会うことが出来た。


    ヒメイワトラノオ。昨年よりも小ぶりである。


    昨年確認できなかった無性芽を確認する。黒い小さな塊が無性芽。


    探してみると、無性芽から小さな葉を出している個体にも出会えた。これでヒメイワトラノオであることが確定である。


    スゲの仲間も見て巡る。カンスゲのようだが少し違う。


    小穂は先端部が雄でその下に雌がある雄雌小穂の形である。小穂の赤紫色が濃い。コカンスゲというスゲらしい。


    雌雄異株のヒナスゲ。これは雌株。


    先端部の黒っぽいものが雄株。たくさん見かけるが、これでも山梨県では絶滅危惧種。


    まだ正体が不明なのがこのスゲ。ヒメカンスゲに非常に良く似ている。


    先端部の雄小穂は赤紫色が濃く、ヒメカンスゲとは違うようにも見える。


    根本の鞘は薄く赤紫色。


    葉が濃い緑色で、おそらくこれはアカンスゲではないかと思われるが、結実した実を良く見てみないと確定はできないだろう。

 いちばんの目的はクモイコザクラ、そしてヒメスギランとオオクボシダ、さらにヒメイワトラノオの無性芽を確認することだった。そのほかに余裕があればスゲを見て回りたいと思っていたのだが、予想をはるかに上回る植物に出会うことが出来た。たいへん有意義な山行となった。ヒメカンスゲは確定に至らず宿題となり、また見に来てみたいと思う。



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