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Channel: 山梨百名山から見る風景
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雪山トレーニング 鳳凰山辻山へ  平成25年1月13日

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 ほぼ2年間遠ざかっていた雪山。そういえば登山初心者の頃に初めてトレーニングのために登ったのもこの山だった。夜叉神峠から登る鳳凰山辻山は軽アイゼンで日帰りが可能な手頃な山と言える。冬山用の登山靴に足を通すのも久しぶりだ。心が挫けないように、相棒の植田さんをお誘いして辻山に出かける。

 平成25年1月13日

 まだ暗い朝5時に山梨病院駐車場で待ち合わせ、夜叉神峠登山口に向かう。あたりが薄明るくなってきた6時半に夜叉神峠登山口を出発、この時間にはもうヘッドライトは不要だった。朝7時、カラマツ林の間から赤い朝日が昇り、カラマツの森を赤く染めた。アイスバーンになった登山道をスリップに気をつけながら歩くが、中腹辺りからは完全に雪道となり軽アイゼンを装着する。1時間半ほどかかって夜叉神峠に到着した。

    朝日昇る


    カラマツの林を染める朝日


    夜叉神峠と白根三山


    夜叉神峠から見る北岳  バットレスが向こうを向いてしまうが、白い白根三山の迫力は圧巻。

 久しぶりに対面する白い白根三山は圧巻だ。雪山の美しさを改めて感じる。しばし休憩と存分に撮影後、出発する。いちばん恐れていた夜叉神峠の先にある急斜面は予想が的中し、完全にアイスバーンになっていた。軽アイゼンを蹴り込むようにして氷に突き刺して登り、さほど苦労せずに突破はできたが、下りはもっと苦労することだろう。この登りでかなり脚力を使ってしまい、早くも大腿部から膝のあたりが痛くなってきた。

    アイスバーンになっていた夜叉神峠先の急登


    ケルンの立つ杖立峠火事場の跡地

 もともと遅いピッチをさらに遅くして歩くが、足の疲れと痛みは徐々に増してくる。テント泊を想定して荷物を重めにして持ってきたこともあるが、それにしてもずいぶんと弱くなったものだと思った。なんとか杖立峠火事場の跡地まで到着する。時間は既に10時40分だ。

    ずらりと並ぶ白い南アルプス。


    圧巻!白根三山

 一人で来ていたらここまでで引き返していたかもしれないが、今日は頼りになる植田さんが一緒だ。ここはなんとしても辻山まで行きたい。この先若干雪が深くなるが、トレースは十分、ラッセルは必要無さそうだ。ストレッチをして再び登り、12時ごろに苺平到着、小休止してトレースのしっかりとついた辻山に向かうが、この先の道は足をとられまくり、歩きにくい。以前に来た時は簡単に山頂まで到着できた気がしていたが、今回はかなり苦労して12時40分にやっと辻山山頂に到着した。

    苺平のケルン。今年は雪が少なく、ケルンの大部分が姿を出している。


    辻山への登り。トレースはしっかりしているが、それでも足をとられまくる。


    ようやく到着、鳳凰山辻山山頂。向こうには白根三山がドンと聳え立つ。

 山頂に立つと、眼前に白根三山が大きく聳え、出迎えてくれる。北岳の存在感は圧倒的だ。残念ながら空は雲が広がり、青空は消えて白灰色の空に変わってしまった。右側には薬師岳から観音岳、さらにアサヨ峰の山並、さらにその右には八ヶ岳が見える。左側には木々の向こうに富士山が立つ。2年ぶりの雪山の景色に感動し、30分ほどこの山頂でこの景色を堪能した。

    辻山から見る白根三山。美しい。


    圧倒的な存在感、南アルプスの王者北岳


    北側に見える鳳凰山薬師岳と観音岳


    南東側に見える富士山


    白根三山をバックに記念撮影

 2年ぶりに履く冬山登山靴の感触は良かった。そして雪の感触も。問題なのは落ちた脚力と体力だ。茅ヶ岳、竜ヶ岳と冬山テント泊の感触を試し、大丈夫だろうと思っていたのだがそうは行かないようだ。今の体力で薬師岳まで1日で登るのはおそらく無理。しかし、今シーズンはなんとか白い鳳凰山に登りたいと思っている。

雪山トレーニング 金峰山(千代の吹上まで)  平成25年1月27日

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 雪山に登るようになってから3年ほど、金峰山と鳳凰山は毎年恒例の山だったが、頸椎を故障して以来2年間、雪山からは遠ざかっていた。頸椎症は完治する病気では無いので、今でもちょっとした枕の高さや首の姿勢が悪かったりすると、その後数日間は左腕の痛みや痙攣が起こる。しかし、症状がひどかった頃に比べるとかなり改善しており、テント泊の装備もなんとか担げるようになった。しかし、まだ左腕の力と持久力は改善しておらず、鎖場や岩場の通過にはかなり気を使う状況である。今年は大きな彗星が二つ来ることもあって、なんとか冬季の標高2,000mを越える山に登りたいと思っている。2週間前には鳳凰山辻山まで行ったが体力の衰えを強く感じた。そして今回、同程度のレベルの金峰山に行ってみることにした。
 辻山は余計な荷物を持って行って足がバテてしまったので、今回は防寒着以外は余計な荷物を持たず、途中に水場があるので水も少なめに持って出かけた。ただし、アイゼンだけは久しぶりに12本歯を装着した。金峰山は6本歯で十分登れるが、今回はしばらく使っていない12本歯アイゼンのトレーニングを兼ねている。自宅をまだ暗い5時半に出発したが、増富の道は雪とアイスバーンでスピードが上げられず、瑞牆山荘の駐車場に到着したのは7時を過ぎてしまった。

    朝7時20分。だいぶ明るくなってはきたがまだ日は差し込まない。


    瑞牆山林道のところで向かいの魔子ヶ岳に日が射し出す。


    朝日射す瑞牆山


    富士見平。雪は15cmほど、テントが5〜6張あり、もうほとんどのパーティーが出発した後だった。

 8時35分富士見平、9時40分大日小屋と、私の足にしては順調に登り、辻山の時とは違ってさほど足の疲れも感じなかった。その先にある大日岩への登り、さらに樹林帯の長い登りも同じようなピッチで登って行ったのだが・・・

    樹林帯の中は樹氷の景色が広がる。


    鷹見岩と大日岩小屋。この小屋は日が当らず、寒そうだ。


    大日岩の直下から見る南アルプス。


    大日岩と八ヶ岳


    大日岩の樹氷と見上げる金峰山。まだ遠い。

 千代の吹上に登り付く手前の樹林帯は真っ白な樹氷の景色が広がっていた。さらに高度を上げてもうすぐ千代の吹上というところで振り返ると、凄い景色が広がっていた。立ち枯れのツガの木が樹氷になっており、その向こうに雲をまとった八ヶ岳が浮かんでいた。登山道からだと構図がいまひとつなので、登山道脇の雪を踏みつぶして足場を確保し、そこに三脚を立てるのだが、傾斜のある斜面でなかなかうまく三脚が立ってくれない。ここで30分ほど時間を費やし、千代の吹上の展望地に到着したのは12時40分になってしまう。

    千代の吹上への登り。ご機嫌な樹氷の景色が広がる。


    振り返れば、立ち枯れの木の向こうに雲の巻いた八ヶ岳が浮かぶ。

 眼前には五丈岩が立ち、残り標高差であと150mほど、1時間半もあれば到着できるだろう。しかし、この日は素晴らしい青空と眺望に恵まれ、写真撮影には絶好の日となった。特に金峰山側は太陽の角度が良く、PLフィルターがばっちり効いてくれる。十分に登り付ける時間ではあったが、ここで30分の撮影時間を費やすと・・・下山が日没ギリギリになりそうだ。山頂はあきらめて、ここで折り返すことにした。

    千代の吹上から見上げる金峰山。もうすぐそこ。


    雪の岩峰と富士山


    厳冬の金峰山  PLフィルターを最大限に効かせて撮影。

 心行くまでこの場所で撮影を楽しみ、軽くパンで昼食を済ませた後、午後1時25分に下山を開始する。雪山の下山は早いが、久しぶりに装着した12本歯アイゼンはひっかけやすく、何度かつまづきそうになる。そして大日岩が目前に迫った緩い斜面で遂に・・・右足アイゼンを左足の靴にひっかけて転倒。しかも支えようとした手はすっぽり雪の中にはまり込み、顔面から雪の中に突っ込み上半身が雪だらけになってしまう。緩斜面で良かったが、やっぱり転んだかと思笑ってしまった。2時10分大日岩、3時半富士見小屋と順調に下山。富士見小屋の小屋主さんに挨拶して行こうと思ったのだが、この日は残念ながら不在だった。4時10分、駐車場到着。

    千代の吹上から見る茅ヶ岳と白根三山


    小川山と瑞牆山


    午後3時半。富士山はまだ綺麗に見えていた。

 テント装備になるとさらに5kgほど重くなるのだろうが、この日の感触だと山頂までならば時間をかければ十分登れそうだ。3月にやって来るパンスターズ彗星は午後7時半には西の空に沈んで行く。山頂泊か、雪のトレースを追って暗い中を下山するか、十分に検討して登りたいと思っている。

精進湖の朝

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 コメント欄で予告していました2月9日予定の音楽会・スライド上映会は、近隣でインフルエンザが流行しており、閉園となった幼稚園や学級閉鎖となった学校等が発生しているため、病院内への感染を懸念して延期とさせていただきました。状況を見て3月中旬か下旬に開催することとなります。ちょうどパンスターズ彗星がやって来ている頃なので、その映像がお届けできるかもしれません。

 おわびといっては何ですが、上映予定していた映像の1本を公開します。これはブログには載せていませんが、金星・水星・月が接近して富士山の裾野から昇って来る朝の情景を精進湖湖畔から撮影したものです。明け行く空に消えて行く月と星、刻々と変わり行く空のグラデーション、風に揺れる湖面の波をインターバル撮影を交えてお楽しみください。

精進湖の朝













富士山撮影会  平成25年2月3日

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 今回で3度目となる富士山撮影会の案内役を仰せつかった。狙うは前回・前々回と同じくダイヤモンド富士。昨年は猪之頭林道から狙ったが富士山に雲が巻いて不発、その前は富士ヶ嶺から狙ったがあまりにもあっさりし過ぎていてあまり面白い作品にはならなかった。できるだけ富士山から距離を離して早い時間のダイヤを撮りたいが、最大でも毛無山塊の裾野まで、かつ、車が入れる場所というとかなり限られてくる。根原の貯水池周辺を考えていたのだが、ゲートから20〜30分歩かねばならず、最終的に朝霧高原の道沿いに車を止めてススキ野原の中から狙うことにする。

 朝6時に朝霧高原道の駅に集合する。ゲストの2人は前夜厚木市で講演会があり、朝4時に出発してはるばる来られた。貯水池まで歩く時間を想定してこの時間の集合としたが、結局は朝霧高原からの撮影ということになったので、まだダイヤモンドの時間まで1時間半もある。この日は根原の小学校あたりで富士山中央から日の出となるがその場所は周辺の集落と杉の木の林があるために富士山の裾野まで見ることができない。そこで、朝霧高原側の草むらの中で撮ることにする。早目に移動して撮影地を偵察すると、鹿避けの防護柵が切れたところにちょうど手ごろな草地があり、そこから撮影することにする。パソコンのカシミール3Dで計算すると、ちょうど剣ヶ峰あたりから日が昇るはずだ。3日前の天気予報ではこの日の午前は曇りのはずだったが、前日に予報が変わり、前線が早く抜けてしまって想定外の快晴の空となった。


    朝霧高原の撮影地。全く雲が無い快晴の空、天気が良過ぎる。


    富士山頂が輝き出す


    裏側には富士山山頂の影


    ダイヤモンドの始まり


    朝霧高原のダイヤモンド富士  朝霧高原らしさを表現するためあえてススキを入れて撮影。


    ススキ野原を照らすダイヤモンド

 レンズを絞り込んでの撮影は回析現象が出現して画像の鮮明度が落ちるため、あまり好ましいとは思っていないが、竜ヶ岳の時にF9で撮影してあまりダイヤらしくならなかった(薄雲の影響もあるが)ので、今回はF11〜16で撮影してみた。だが、どの絞りでもさほど大きな差は無いようで、どうやら天候と空気の透明度の影響のほうが大きいようだ。(デジタルカメラではF16は絞り過ぎだと思う。)まずまずの撮影ができた。

 次に本栖湖に移動。湖面を照らす朝日の撮影だが、あまりにも太陽の光が強過ぎ、かつ、気温が高かった影響で富士山は薄い霞が巻き始めてしまった。さらに太陽と富士山の位置が近過ぎてゴーストがカットできない。これはいまいちの画像になってしまう。


    湖面に輝く朝日

 ゲストのお二人が前日宿泊したホテルで朝食を準備して持ってきてくださり、本栖湖展望台の休憩所で朝食となる。真冬とは思えない暖かな日で、富士山を眺めながら朝食とは贅沢なひと時だ。
 そして精進湖に移動する。今年の精進湖は湖面が真っ白に凍りついている。ちょうど富士山の真上あたりに太陽が昇って来ていたが、ここも霞とゴーストに阻まれ、あまり鮮明な画像とはならず。ゲスト2人と運転手さんを交え、4人で記念撮影する。


    輝く氷の湖面


    飯田先生、小松崎先生、運転手さん、そしてヨッシ−(私)

 時間はまだ9時半だったが、写真家栗林先生のお店「写ば写ば」に立ち寄ると既に開店していた。コーヒーをいただきながら写真談義と情報をいただく。午後からは曇りの予報なので、雲の様子を見ながら山中湖湖畔からのダイヤモンド富士か二十曲峠からの夕景を狙うことにする。
 ゆっくり休んだ後、今度はPLフィルターを効かせて青空の富士山撮影目的で朝霧高原ふもとっぱらに向かう。ちょうど良い具合に富士山中腹に雲が巻いて来ていた。しかし、空気の霞があり、さらに風が出始めて池に映る富士山を狙っていたが水面が揺れて富士山が映らない。池の端のところでなんとかダブル富士を撮影した。


    ふもとっぱらの池と富士山  水面が風で揺れる。


    池の端で撮影したダブル富士山  池の縁で隠された向こう側にはキャンピングカーが2台止まっており、三脚を低く構えてこれをカット。

 精進湖からの移動途中で良さそうな場所があったので再び精進湖に戻って撮影するが、やはり霞が影響してすっきりとした富士山にはなってくれなかった。時間は11時半、12時半に山中湖を見下ろす丘に立つホテルマウント富士で昼食を予約してあるとの事だったので、午前の撮影はここまでとし、西湖、河口湖はスルーして山中湖に向かう。富士吉田あたりから横目で見る富士山は大きく雄大に見え、大沢崩れが見えなくなった吉田側の富士山はまさしく端正な「山梨の富士」という感じがした。マウント富士に到着した頃にはだいぶ富士山には雲が巻き始めていた。

 ゆっくり昼食をとり、2時過ぎにマウント富士の展望ガーデンから富士山を見上げると、既に裾野の半分以上は雲に覆われてしまっていた。まずいことに、上空にも雲が出始めてしまう。山中湖湖畔の夕暮れダイヤモンド富士は4時半ごろだが、これではとても天候が持ちそうに無い。そこで、より高度の高い二十曲峠に行くことにする。富士の裾野に日が沈むのが5時20分ごろ、まだ3時半なので2時間ほど時間がある。かろうじて霞んだ富士山が見えてはいるが、果たしてどうなるものか??待っている間にまだ歩いていない杓子山側の登山道を手ぶらで登ってみた。撮影者と思われる登山靴では無い人の足跡が一人分ついている。標高差で50mほど登ったところの小ピークは草むらの間から富士山が望める場所があり、下刈りされていた。混雑する二十曲峠の撮影地よりもこちらのほうが人が避けられるかもしれない。

 4時半まで待ったがさらに雲は増え、富士山は全く見えなくなってしまう。二十曲峠では結局1枚も撮影すること無く撤退。あまり満足な撮影会とはならなかったが、自然が相手なだけにこればかりは仕方無いのかもしれない。昼食の前に、トップライトで輝いていた富士山の斜面を撮影しておけば良かったと反省した。

夕暮れのダイヤモンド富士 高指山  平成25年2月10日

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 目を覚ませばもう太陽が高く昇り、時間は9時半になっていた。連休は北八ヶ岳の樹氷を見たいと思っていたのだが、出発するにはあまりにも時間が遅過ぎる。ようやく当直の疲れは抜けたが、登る元気は出ず昼過ぎまで自宅で怠惰な時間を過ごす。ふと思い立ったのが夕暮れのダイヤモンド富士だ。7年ほど前の山梨百名山1ラウンド目の時、道志の菜畑山に登ろうとして雪道で車を側溝に落としてしまい、JAFを呼んで引き上げてもらった後に気を取り戻して登ったのが高指山、確か2月10日だったと思う。この日は富士山の山頂に太陽が沈む夕暮れのダイヤモンド富士がこの山から見られる日だ。時計を見ればもう午後1時半、ダイヤになる時間は午後4時半ごろだ。急いで準備して山中湖に向かう。

 混雑が予想される中央道は避けて御坂道、河口湖を経由して山中湖に行くが、雪はわずかで若干の渋滞のみで順調に走り、3時半に山中湖の湖畔に到着した。湖畔からのダイヤモンド富士狙いの車だろうか、駐車場にはあふれんばかりの車、駐車枠以外のスペースにまでぎっしりと車が止まっている。それを横目で見ながら高指山の登山口に向かうが、登山口周辺に良さそうな駐車スペースが見つからず、通り過ぎてまた戻って最終的に道路脇の小スペースに横付けして駐車する。既に時間は3時40分、確か山頂まで1時間ほどかかったような記憶があるので、下手をすると間に合わないかもしれない。薄雪の残る登山道を急ぎ足で登り、別荘地の中を通り過ぎると眼前にカヤト野原の広がる高指山が姿を現す。休憩せずに登ると・・・想定していたよりも山頂は近く、4時15分、30分ほどで山頂に到着した。

    高指山(たかざすやま)登山口。ここは東海自然歩道の一部。


    別荘地の中の道を登る。


    眼前に迫る高指山


    高指山山頂付近。30分で到着。

 既に先客が二人、三脚とカメラを構えて夕暮れを待っていた。しかし、今日の富士山は山頂付近に雲が巻いていていまひとつだ。山頂から一段下がったところの刈り払われた展望地で、地元都留市から来られたカメラマンの方と並んでカメラを構えさせてもらう。

    高指山山頂。一人は大きなカメラ(EOS Mark?レベル)を構えて夕暮れを待っていた。


    雲が巻く富士山頂


    なんとか雲が飛び、富士山頂が見えるようになる。

 午後4時37分、いよいよ山頂に太陽が沈み始める。確かにダイヤはダイヤだが・・・凍りつく朝のダイヤモンドに比べるとなんとなく霞んだ富士山とダイヤモンド、いまひとつだ。やはりダイヤモンド富士は朝のほうが感動的だと思う。

    高指山のダイヤモンド富士


    同上


    富士山頂から光の筋が放射する。


    夕暮れの富士  あまり焼けることも無く日が暮れる。

 今回この山に出かけた理由はダイヤモンド富士もあるのだが、もうひとつは3月中旬にやって来るパンスターズ彗星の下見もある。3月10日ごろに近日点(太陽に最も近い位置)を通過した後、夕暮れのほぼ真西の低空(10度以下)の位置に彗星が姿を現して来る。西側の展望が適しており、最も簡単に登れると思われるのがこの高指山と考えている。月の影響がまだ少ない、3月13日から17日あたりまでがこの山から彗星を見るのに適していると推測している。彗星の尾が大きく棚引いてくれれば、富士山の上に彗星のアーチがかかるかもしれない。天候に恵まれることを願っている。

凍りつく樹氷の森 北八ヶ岳中山周回  平成25年2月11日

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 連休初日の2月9日は北八ヶ岳黒百合ヒュッテの予約がいっぱいになり、メイン登山口の渋ノ湯駐車場は大混雑が予想された。この日を避けて10日早朝に出かけることを考えていたが完全に寝過ごし、11日に行くことにした。朝6時に自宅を出発し、中央道を南諏訪インターで降りて渋ノ湯に到着したのは8時過ぎ、途中の路上脇に薄雪の積もった車がたくさん路上駐車されていたので、車を止められないのではないかと心配したが、渋ノ湯駐車場は意外と空いていた。本日目指すは天狗岳。だが、想定外に空模様が悪く、しかも強風が吹き荒れている。果たして登れるのか??8時20分、十二本歯アイゼンを装着して渋ノ湯を出発する。

    渋ノ湯駐車場。途中の路上に駐車されていた車は前日泊の人たちで、駐車場は想定外に空いていた。


    踏み跡しっかりしており、足を取られる事も無く快適に歩く。


    唐沢鉱泉分岐。たっぷりの雪、だが、空模様が心配。


    やや黒ずんだ雲が流れ行く空

 人気の高い冬山コースだけあって、しっかりしたトレースあり快適に歩く。下山して行く登山者とはたくさんすれ違ったが、登って行く人たちは少ないようだ。連休3日目ということもあるが、空模様がいまひとつということもあるのだろう。高度を上げるにつれて風が強くなり、それと引き換えに凄い樹氷の森が広がり出す。予定通り約2時間強で黒百合ヒュッテに到着した。

    強風と雪が作り出した樹氷の森。景色が凄いが、寒さも凄い。


    黒百合ヒュッテ手前の樹氷の森。日が差さないと白黒写真のようだ。


    黒百合ヒュッテ。下山の支度をしている人たちをたくさん見かけた。これから天狗岳に行こうという人は見当たらず。

 黒百合ヒュッテ周辺は窪地になっているので風はさほど強くはなかったが、空は黒ずんだ雲が足早に流れて行き、ゴーゴーと音を立てている。ヒュッテから天狗岳への取り付きは急斜面になっており、ひとまずはその上まで行ってみることにした。一応トレースはあるが、強風に煽られて不明瞭になっている。上に見える岩を目掛けて登ってみると・・・そこは目も開けていられないほどの強風が吹き荒れる。眼前に見えるはずの天狗岳はビュービューと流れ行く雲の中に隠れている。おそらく上は吹雪になっていることだろう。一人尾根に取り付いて登っている登山者の姿が見えたが、かなり苦戦しているようだ。無理はせず、即座に登頂をあきらめてヒュッテに下りる。

    天狗岳取り付きの急登。まずはあの上まで行ってみよう。


    登り着くと目も開けていられないような強風が吹き荒れる。雲の中に天狗岳が隠れている。


    凍りつく岩と道標


    凍りつく木々  樹氷どころではない、完全に凍っているように見える。


    わずか10分で自分のトレースは半分隠れてしまう。

 ヒュッテ前のベンチで食事にしようと思っていたのだが、下山準備の人たちで混雑しており、止む無くテント撤収後の雪の上に座って軽い昼食をとる。天気が若干回復してきたのか、雲の切れ間から一瞬だけ太陽が姿を覗かせた。
 さて、天狗岳が無理ならば難易度の低い反対側の中山に登り、高見石を経由して周回して渋ノ湯に戻るコースに変更することにした。このコースは2年前に所属する山岳会の人たちと一緒に歩いたことがある。中山峠から中山への登りは緩やかだが、風が猛烈に冷たく、指先と耳たぶが凍傷になるのではないかと思うほど寒かった。

    一瞬の日射し  強風で雪が宙を舞う。


    中山峠。ここでも一瞬陽が射し込む。


    時折青空が見え出すが、天狗岳は相変わらず雲の中。中山展望台から。


    立ち枯れの樹氷


    樹氷のドーム


    中山山頂付近の樹氷


    中山山頂の標柱は樹林帯の中にひっそりと立つ。

 中山山頂を越えて高見石側には真っ白な雪原と樹氷の森が広がる。しかし、そこは天狗岳取り付きと同様に強風が吹き付ける場所、目を開けているのも容易ではない。天気が良ければ休憩するに絶好の場所だが、この日はとてもではないが休んでいられるような状態ではない。写真をとって足早に通り過ぎ、樹林帯の中に逃げ込む。

    凄い樹氷が立ち並ぶ。強風が吹き付けるからこそこのような樹氷が出来上がる。


    雪原の彼方、陽が射し込む。


    通り過ぎる一瞬の陽射し


    中山の樹氷


    樹氷の枝

 風の無い樹林帯の中で小休憩後、高見石に向かってひたすら下る。40分ほど下ったところで高見石小屋に到着した。時間は午後1時だった。ここでも小休憩のみで渋ノ湯に向かって下って行くと、賽ノ河原という岩の堆積する広場に出る。眺望が開けるが、ここもまた谷筋から強風が吹き上げる場所で、トレースも半分消えてしまっている。写真を撮りながらも足早にこの場所を通り過ぎる。

    高見石小屋。建物の右手に高見石なる岩があり、その上から見下ろすと眼下に白駒池が見える。今回は岩に登らずに下山。


    賽ノ河原から見上げる中山。相変わらず強風が吹き、山頂には雲がかかる。


    振り返って見る賽ノ河原

 再び樹林帯に入り、トレースがはっきりした緩い傾斜の道を歩いて行くと右下に川の流れが見えてくる。その向こうにはもう渋ノ湯の建物が見え始める。やがて朝登った黒百合ヒュッテへの道と合流し、間もなく渋ノ湯に到着した。時間は午後2時を少し過ぎた頃だった。空には青空が広がっていた。もう半日早く天候が回復してくれれば、もっと良い景色が見られたに違いない。

    登山道から見下ろす川の流れ。その向こうには渋ノ湯の建物が見える。


    渋ノ湯到着。この頃には青空が広がり出す。

 帰りの車の中から雪化粧した蓼科山と北横岳が美しい姿を現しているのが見えた。あちらの山も、きっと凄い樹氷の景色が広がっていることだろう。冬山初級の山だが、残念ながら今回は冬の天狗岳に登りつけなかった。青空が広がる好天時に是非登ってみたい山だ。

新道峠

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 某所から、新道峠の宣伝用ポスターを作りたいので画像は無いかと相談を受けた。ここは車で駐車場まで乗り付けると15分ほどで行けるお手軽な場所なので、大きなカメラと三脚を持って、場合によっては徹夜で一晩中撮影を行っている人もいるほど有名な撮影場所だ。良い画像を持っている人はたくさんいるはずだ。しかし、私にとっての新道峠は黒岳に登るための単なる通過点。展望が良いので何カットか撮影はするものの、ここでじっくり撮影したことはほとんど無い。山に登る人は山の上から撮るべき、と思っているので、この場所は年をとって山に登れなくなった時のためにあえて腰を据えて撮らないようにしていた。
 しかし、依頼があったので改めて以前に撮った画像を集めてみることにした。こんな画像でポスターに採用してもらえるのかどうかはわからないが、ひょっとしたらどこかでこの中の画像を見かけることがあるかもしれない。


    薄明の河口湖と富士(平成21年3月)


    朝焼けの富士(同上)


    夜明けの富士と河口湖(同上)

 まだ林道が閉鎖されている3月中旬、月と一緒に富士山を撮ろうとしたのだが、予想したよりも月の位置が西側で、しかも凍りついた林道を歩くのに想定外に時間がかかった。予定時間より30分遅れたため、月の入った画像はいまひとつになってしまった。先客が一人。「ここはいつ雲海になってくれるんですかね〜。」などと会話を交わしながら、夜明けまでここで撮影した後、黒岳に登った。この日は空気が澄んで風も無く穏やかな日で、山頂からの富士山も絶景だった。その時撮影した黒岳山頂からの朝富士は放送大学のカレンダーに採用された。



    雲霞に浮かぶ月光富士(平成22年11月)


    雲海に浮かぶ朝富士(同上)

 満月に近い明るい月が昇った夜だったが、空は霞んで月は見えなかった。駅前の飲食店で夜の12時ごろまでお茶を飲んで遊んでいたが、外に出ると月が見え始めていた。三つ峠のライブカメラで富士山を見ると・・・雲海の上に姿を現し始めている。これは行くしかないだろうということで、車に積んであった登山着に着替えてさっそく出発する。未明2時に新道峠に登ると、河口湖を覆う雲海の上に月光に照らされた富士山が浮かんでいた。その上にはおおいぬ座シリウスが輝く。先客は3人ほど、おそらくはこの夜は徹夜で撮影に没頭したことだろう。新道峠のシンボルとも言える木を前景に配して10カットほど撮影させていただき、月の照らす登山道を黒岳に登った。この時の雲海が今までで最高のものだった。「雲海に浮かぶ朝富士」は下山際に新道峠付近で撮影したもの。まだたくさんカメラマンが新道峠で撮影しており、邪魔しないように手持ちで撮影。こんな機会が来るのであればきっちり三脚を立てて撮影すべきだったとやや反省している。



    盛夏、新道峠の富士(平成21年8月)

 比較的天候が良かったお盆ごろの富士山。富士登山者のハイシーズンなだけに、きっと照明光跡が見えるだろうと夕暮れの黒岳を目指して登った途中で撮影したもの。新道峠のこの岩は絶好の展望台になっており、左の木が新道峠シンボルツリーだ。山梨放送のテレビ取材を受けた時に撮影場所となったのがこの岩の上だった。



    夕暮れの富士(平成22年10月)


    同上(同上)

 紅葉を求めて釈迦ヶ岳に登ったが、この年の紅葉はいまひとつであまり良い景色とはならず、ならば夜富士でもと考えて夕方から黒岳を目指して登った時に撮影したもの。霞の上に富士山が顔を出してくれて、それなりに良い夕景ではあったが、空が霞んでいて星が映らず、山頂からの夕景富士は全く面白みの無い画像になってしまった。


 河口湖を眼下に望む新道峠は登山者ならずとも簡単に行ける絶景地である。富士山世界遺産登録とからめて、ここを観光開発の目玉にしようという動きがあるらしい。峠が荒れて自然が破壊されてしまうのはあまり好ましいとは思わないが、できるだけ自然な形でこの峠の景色を楽しんでいただけたらと願う。

樹氷の北横岳 

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 平成25年2月17日

 前日の強風が嘘のように止んで穏やかな朝となった。しかし強烈な冷え込み、甲府市内では朝の気温が氷点下4℃だった。予定通り、朝6時に起床し、ピラタス蓼科のロープウェイに向かう。中央道から見上げる甲斐駒ケ岳や八ヶ岳はすっきりと澄んで見え、雲ひとつない快晴の空だった。8時45分ロープウェイ駐車場に到着。大混雑かと思いきや、意外と駐車場は空いていて、楽々車を止めることができた。

    ピラタス蓼科駐車場。意外と空いていた。左に見えるのが蓼科山。


    ロープウェイから見る北横岳。山頂は左脇に隠れているところ。

 大半がスキー・スノボー客だが、スノーシューを持った客も結構いる。10分おきに発着するロープウェイは1本待っただけで、さほど混雑することも無く乗車できた。ロープウェイ山頂駅の気温は氷点下16℃、風が無いのが幸いしたが、それでも頬と鼻がヒリヒリする。登山者はアイゼン装着の人よりもスノーシュー装着している人のほうが圧倒的に多い。山頂駅から容易に行ける坪庭周辺はスノーシューハイクには絶好の場所だ。坪庭への道にはツアー客と思われる人の長い行列が出来ていた。

    坪庭・北横岳へのトレース。たくさん人が入っており、道には行列ができている。


    坪庭から見上げる北横岳


    縞枯山と坪庭

 坪庭を過ぎると樹林帯の中を通る北横岳への登りとなるが、ここは急斜面ながらジグザグにうまく道がつけられていて歩きやすい。本日は6本歯アイゼンを装着しているが、これで全く問題ない。1時間少々で北横岳ヒュッテに到着する。

    中腹から見下げる坪庭と、南八ヶ岳・南アルプス。10時を過ぎた頃には空に雲が広がっていた。


    北横岳ヒュッテ

 ヒュッテの前ではたくさんの登山客が休憩していた。時間は10時40分だが、朝食時間が早かっただけに空腹を覚え、ここで早目の昼食にする。この先が北横岳への急登となる。しっかり踏みつけられた道ではあるが傾斜が強く、スリップして登りにくい。キックステップでつま先を雪に蹴り込んで登り、25分ほどで北横岳北峰に到着した。眼前には格好の良い蓼科山の雄姿、その後ろには北アルプスの山並がずらりと並ぶ。朝のような青空だったならばさぞかし絶景であっただろうが、10時ごろから空には灰色の雲が広がってしまった。

    北横岳北峰。左が蓼科山。


    北横岳の樹氷と蓼科山


    北横岳北峰から見る南八ヶ岳

 三脚を立てて存分に撮影後、ザックを北峰に置いたままカメラ機材だけ担いで南峰に行く。樹氷はだいぶ落ちてしまってはいるが、それでも十分楽しめる。先ほどまで団体客で混雑していた南峰だったが、私が到着した頃にはちょうど空いたところで、数人の登山者のみだった。

    北横岳南峰


    南峰山頂と蓼科山。運良く、ちょうど人がいなくなった。


    蓼科山と北アルプスの山並


    浅間山。今年の浅間山は地肌が出ていて白く無い。


    樹氷と八ヶ岳

 北横岳山頂付近で1時間以上もぶらぶらしていて、時間は12時半を過ぎてしまった。しかし、このまま下山するには時間も体力もたっぷりある。岩峰のピーク、三ツ岳に立ち寄ることにした。以前来た時は早朝に先頭を歩いたのでトレースが無かったが、今回はトレースしっかりしていて歩きやすい。山頂直下の岩場には鎖がつけれれていて、以前はこの鎖につかまって登ったが、今回は脇をぐるりと巻いて後ろ側から登るトレースがついていた。分岐点から20分ほどで三ツ岳山頂(?峰)に到着した。先ほどまでいた北横岳が目の前に見える。

    目の前に迫る三ツ岳。一番高いところが?峰。


    三つ岳山頂(?峰)。すぐ向こうに北横岳が見える。

 三ツ岳の面白い場所はこの?峰ではなく、この先の?峰手前にある鉾岩と呼ばれる格好の良い岩だ。天を切り裂くように突き出た岩の向こうには浅間山の景色が広がる。途中に広がるシュカブラの景色を楽しみつつ、?峰まで下る。

    シュカブラと八ヶ岳


    ?峰頂上にある岩と浅間山


    鉾岩と浅間山。見たかったのはこの景色。

 再三写真を撮ったので三ツ岳界隈でも1時間ほど時間を費やしてしまい、時間は1時45分になってしまった。余裕があれば雨池峠側と坪庭をぐるりと周回してロープウェイ山頂駅に戻りたかったが、途中のピークを越える時に手こずると4時の最終時間に間に合わなくなるかもしれない。ここは無難に来た道を戻ることにした。休憩せずに下って、2時50分、ロープウェイ山頂駅に到着。


 北横岳は冬山初心者向けで、ロープウェイを使って簡単に行けるうえに抜群の眺望が得られる。ここの星空も素晴らしく、直下にある北横岳ヒュッテの食事はスキヤキやタラチリなどのなべ料理が振舞われ、これもまた凄い。あわせておすすめの山である。


精進湖越しの富士山は? 雪の三方分山  平成25年2月23日

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 甲府盆地はビュービューと風の吹き荒れる寒い朝となった。冬型の気圧配置の時は行きたかった北八ヶ岳は難しい。登り易い御坂山系に行くことにしたが、どこに登るかは決まらないままにひとまずは精進湖方面に向かって車を走らせる。ふと思い出したのが「写ば写ば」に飾らせていただいてあった写真の事。2月に入ってから店内の写真を全て栗林先生ご自身の写真に変えたそうで、写真を取りに来て欲しいという連絡をいただいていた。ならば、精進湖の上の三方分山を周回してそのあとに食事を兼ねて写ば写ばに立ち寄らせていただくことにした。愛用していたキャノンEOS40Dの調子があまりにも悪く、1ランク上のEOS7Dに機種を変更し、今回が初使用となる。

 精進湖のほとりに車を止めてまずは7Dの試し撮りをする。シャッター音が小気味良く、モニターに映った画像で確認するとかなり綺麗に撮れているように見えた。(実はこれはモニターの性能が良いためで、後にパソコンで見ると若干手ぶれと後方のピントが甘いことがわかる。)9時半、湖畔を出発し女坂峠に向かう。

    精進湖湖畔から見るパノラマ台方面。かなり雪が着いている。


    民家の間の道を抜けて登山道(旧中道往還)に入る。


    登山道に入るとすぐに雪道となる。アイスバーンでは無いのでアイゼンは終日装着せず。


    中道往還とは東海道と中仙道の中間にある道という意味らしい。古くは商業や軍事のために使われていたらしい。

 女坂への道はジグザグにつけられていて歩き易く、雪の積もる道ではあるがアイゼン無しで歩けた。1時間ほど歩いて女坂峠に到着する。ここで一休み。三方分山が目の前に見えるが、かなりの急登に見える。

    雪の積もる中道往還


    女坂峠手前の樹林帯から見上げる三方分山。


    女坂峠。別名阿難坂。甲府方面から2つの峠を越えて精進湖に至るこの道は、このあたりが一番の難所だったらしい。


    峠に立つお地蔵さん。かつて身重な女性が道中で子を産んだが母子共に亡くなってしまい、ここに子を抱いた地蔵を建てたと伝えられている。何故かお地蔵さんは首が無い。

 さて、いよいよ三方分山への急登となる。さらに雪は深くなるが、トレースがしっかりとあって、道もジグザグにつけられていてさほど辛くは感じない。急登を登り切って笹の混じる緩い傾斜になると山頂は間もなくだ。11時半山頂に到着、湖畔からちょうど2時間くらいだった。この頃には朝の強風が嘘のように止み、日差しにはぬくもりを感じる。山頂にいた単独登山の先客は穏やかな天気に日向ぼっこしながら気持ち良さそうに昼寝していた。

    山頂への登り。


    笹が混じり、傾斜が緩くなると山頂は間もなく。


    三方分山山頂


    富士山側の眺望が開ける。この時間には霞んではいるが富士山が見えていた。

 山頂で20分ほど休憩してパノラマ台方向に進む。恐れていた下り斜面は雪が少ししか無かったものの、雪解けのドロドロ道でスリップに十分注意しながら下りる。30分ほどで精進峠の展望台に到着したが、この頃には富士山山頂には雲が巻いてしまっていた。精進湖を真下に見下ろしながらその向こうに富士山が立つこの場所の景色は、このルートの中で一番のお気に入りだが今日は不発に終わってしまった。カメラ手持ちで数カット撮影し、先に進む。

    精進峠展望台から見下ろす精進湖。富士山は残念ながら雲に巻かれる。


    左手に見える王岳と鬼ヶ岳山塊。向こうの山も結構白い。


    右手にはこれから歩くパノラマ台への山並。結構遠いし、アップダウンもある。

 この先はいくつかのアップダウンが続く。そしてパノラマ台入口からの道と合流して最後の緩い登りとなるが、雪の量は本日歩いた中でこのあたりが一番多かった。登り切ったところで本栖湖外輪山の周回コース、中之倉峠への分岐があり、これを過ぎるとすぐにパノラマ台だ。中之倉峠コースも下見してきたが、籔道では無くてきちんとした道が続いていた。

    パノラマ台への最後の登り。雪はこのあたりが一番多かったが、トレースはしっかりある。


    中之倉峠への分岐。今回はこのコースも確認しておきたかった。


    パノラマ台。富士山は残念ながら霞と雲の中。


    冬の御坂山塊。明日はあっちを歩いてみようかな??

 山頂には先客が二人休憩していた。私は方位版の向こう側の土台石に座って軽食をとっていたが、間も無く烏帽子岳方面から10人ほどの団体さんがやって来た。記念撮影をするらしく、方位版周辺に集まって旗かなにかを準備し始めた。どうみても私が居るのは邪魔になる。さっさと切り上げて下山することにする。下山道は雪はあるがアイスバーンは無く、快調に歩いて40分ほどでパノラマ台入口に到着した。その後は「写ば写ば」に立ち寄り、ゆっくりと昼食をいただき、栗林先生と写真談義を楽しむ。新メニューか、グリーンカレーはとてもおいしかった。

 11月に雨ヶ岳に行った時、中之倉峠側から雨ヶ岳に登って来た人に出会った。山頂直下は笹籔らしいが、距離はほんの少しだけで普通に登れると聞いた。同じところを登って来た登山者の記載が「望の富士」にもあった。ということは、烏帽子岳からパノラマ台を経て中之倉峠まで行ければ、雨ヶ岳、竜ヶ岳を越えて本栖湖外輪山を1周出来るということになる。もちろん私の足で1日で歩くには無理な距離なので、テント1泊ということになるだろう。気になっていたパノラマ台からのルートを確認するのも今回の目的の一つだった。気候が良くなった頃に、時間が許せば歩いてみたいと思う。
 

冬の鬼ヶ岳周回(前編)  平成25年2月24日

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 写真の枚数が多いので、前編と後編に分けてお届けする。

平成25年2月24日

 前日と同様に朝から強い風が吹き荒れた。青空は広がったが、自宅から見る南アルプスには雲がかかっている。出かけるなら御坂山塊が無難そうだ。昨日三方分山から見た王岳・鬼ヶ岳の山並が白くて美しく見えたのを思い出す。広い駐車場のある西湖のほとり、根場いこいの里にまずは行ってみることにする。


    根場いこいの里から見上げる雪頭ヶ岳と鬼ヶ岳。向こうの赤いバスは登山にやって来た団体さん。

 いこいの里から見上げる雪頭ヶ岳、鬼ヶ岳、さらに王岳に続く稜線は、下から見上げる限りではさほど雪が無いように見受けられた。ちょうどバスでやって来て出発の準備をしている15人ほどの団体さんや、他にも数グループが登山の準備をしていた。こちらもさっそく準備して団体さんより一足先にスタートする。向かった先は雪頭ヶ岳への直登コース。こちらのルートは鍵掛峠のルートよりも歩きにくい半面、登山客も少ない。8時半スタートし、根場いこいの里のかやぶき屋根の建物を左に見ながら、道標に従って右に曲がり堰堤広場・雪頭ヶ岳方面に進む。堰堤広場を過ぎると植林帯の中の雪道に変わる。少し行くと枯れた沢を対岸に渡ってまたすぐに渡り返すところがあり、テープがたくさんついてはいるものの、ここだけ若干わかりにくい。さらに樹林帯の中の道を進み、大きな岩のところを左に曲がって登って行くとカラマツの樹林帯に変わる。標高は1,200m付近、カラマツ林の向こうに富士山が見え出し、ここで一休みする。

    堰堤広場。右手に登山道がある。


    雪の登山道。堰堤の向こうに見えるのが雪頭ヶ岳。


    ヒノキ樹林帯の中を行く。


    大きな岩に突き当たり、看板に従って左折。


    歩き始めて1時間ほど、カラマツに樹林帯に変わる。


    カラマツ林の向こうに見える富士山。

 カラマツ樹林帯は日当たりが良いためか雪は少なかったが、尾根に取り付いて西側斜面の紅葉樹林帯に入ると雪が増えて来た。登山道にはところどころツルツルのアイスバーンが現れ始め、さすがにアイゼン装着しないと滑ってしまう。軽アイゼンを装着して雪頭ヶ岳への急登を登り、11時40分、歩き始めてから3時間かかって雪頭ヶ岳に到着した。ここで後続の若者2人組に抜かれたが、彼らはノーアイゼンで登って来ていた。

    カラマツ林から見上げる雪頭ヶ岳。まだちょっと距離も標高差もある。


    登山道はところどころアイスバーンになっており、さすがに危険を感じて軽アイゼンを装着。


    雪頭ヶ岳の急登。左手のロープを使わせてもらう。


    西側の広葉樹林帯は雪が深い。トレースに助けられる。


    雪頭ヶ岳頂上付近の草地


    山頂から見下ろす西湖と富士山。残念ながら雲がかかってしまう。

 雪頭ヶ岳は眺望に恵まれており、眼下に見える西湖の他に左手には河口湖、その遥か向こうの富士の裾野には山中湖を望むことができる。さらに右手には広大な青木ヶ原樹海とさらに右手に本栖湖、そして竜ヶ岳、雨ヶ岳、毛無山、長者ヶ岳へと続く山並が一望できる。三脚を立てて写真を撮りながら食事をとり、ここで大休止する。

    東側の眺望。遠く山中湖まで望むことができる。


    西側の眺望。本栖湖とその先の毛無山・天子山塊が一望できる。


    冬の陽

 30分ほど休憩して隣の鬼ヶ岳に向かう。その先の下りはかなりの急斜面、しかもアイスバーンの上に雪が積もっていてアイゼンが効いてくれない。へっぴり腰で木の枝や根っこにつかまりながら慎重に下りたが、この場所が今回のルートの中で一番怖かった。そこを下ると今度はハシゴ登りだが、その先の鬼ヶ岳への道は問題無く登れた。雪頭ヶ岳で追い抜かれた若者2人は鬼ヶ岳山頂で昼食休憩中だった。相変わらずのノーアイゼン、こういう道にはかなり慣れているようだ。

    眼前に迫る鬼ヶ岳。しかし、足元はアイスバーンと雪の急斜面。


    ハシゴを登る。


    ハシゴの上の展望地から見る十二ヶ岳と御坂山塊。右下は手前が西湖、向こうが河口湖。


    同じ場所から見上げる鬼ヶ岳。もう少し。


    鬼ヶ岳山頂


    鬼の角と富士山

 富士山には雲がかかっていたので、三脚を出さずに手持ちで数枚撮って彼らよりも一足先に鬼ヶ岳を出発した。もちろん、その後簡単に追い抜かれたが、その先の鍵掛峠への尾根道は想定以上に雪が深く、岩の混ざった悪路になっていた。(後編に続く)

冬の鬼ヶ岳周回(後編)  平成25年2月24日

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 根場いこいの里から雪頭ヶ岳を経て約4時間かかって鬼ヶ岳山頂に到着した。時間は12時半、ここから鍵掛峠への尾根道を進む。夏場ならば富士山の眺望を楽しみながら、岩場が混じった少しばかりのアルペン気分が味わえる楽しい道だが、冬はどうなっているのだろうか?進行方向を見るとかなりの雪が積もっている。幸いなことに数人で歩いたと思われるトレースがあって、ラッセルはしなくて済みそうだ。


    鬼ヶ岳山頂の岩と富士山


    これから進む鍵掛峠への稜線。結構な雪がある。


    小さいが雪屁ができていた。御坂山系では珍しい。


    トレースに感謝。先頭を歩いた人はさぞかし大変だっただろう。

 緩く下ってまた登り、その先は急傾斜の下りとなる。柔らかい雪で足をとられまくり、3度もスリップ・転倒する。下り切ったところで前方に展望の良い岩場が出現する。この日は誰も岩に登った様子は無く、雪を踏みつけて岩に登り、ここで休憩しつつ富士山を撮影する。この間に鬼ヶ岳山頂にいた若者二人に追い抜かれ、その後は下山するまで山上では誰にも出会わなかった。

    展望岩から見る雪頭ヶ岳の斜面と富士山


    上ズーム  足和田山越しの富士山


    裏側に広がる南アルプス・八ヶ岳と甲府盆地

 岩の上に登ってみるとかなり風が強く、ゆっくり休めるような場所では無い。写真を撮ったらさっさと下りて先に進む。展望岩の下を大きく回り込んで下り、また登り返す。ピークを越えて少し進むとまた展望の良さそうな岩が出現、ここも誰も登った様子は無い。ここはスルーしようかと思ったのだが、折角雲が晴れて午後にしては珍しいすっきりした富士山が見えているのに写真を撮らないのはもったいない。一旦は通り過ぎたが、戻って岩の上に登り三脚を立てる。先ほどとは角度が変わって足和田山の全景と西湖の一部が見えるようになる。午前中の雲はすっかり晴れ、綺麗な富士山が「撮ってくれ」と言わんばかりに立っていた。

    これから歩く稜線。登り返してその先を下って鍵掛峠。ピークを越えるとまた素晴らしい眺望が得られる展望岩あり。


    鍵掛峠近くの展望岩から見る足和田山越しの富士山


    歩いてきた稜線を振り返る。右が雪頭ヶ岳、中央が鬼ヶ岳。

 その先の鍵掛峠への下りは雪と岩が混じった、ところどころロープ場がある歩きにくい道だった。岩にアイゼンをひっかけて転ばないように注意しながら、ロープを使わせていただいて慎重に通過し、ようやく鍵掛峠に到着、時間は午後2時20分だった。鬼ヶ岳から2時間ほどかかったことになるが、撮影時間を除けば1時間半はかかっていない。これもトレースがあったおかげだが、もし無かったらさらに30分以上は余計にかかっただろう。峠の下には富士山の展望台があるので、そこまで行って腰を下ろしてゆっくり休む。

    鍵掛峠への下り。岩と雪がミックスした道で、ロープが張られた場所がある。


    鍵掛峠。向こうは王岳への稜線。


    鍵掛峠の林から望む富士山


    鍵掛峠展望台。峠の下、根場へ下りる途中にある。木が切られていて展望岩に乗ることができる。


    鍵掛峠展望台から望む富士山

 展望岩側の斜面は稜線と違って風が吹かず、休憩には絶好だった。しかし、ここはまだ標高1,500mほどあり、根場までの標高差は600m、下山には1時間少々時間がかかる。山の上にはもう誰もいないようで、人の姿は無く声も聞こえない。時間はもうすぐ3時、あまりのんびりもしていられない。この先は歩き易い良い道なのでアイゼンをはずして下山開始する。

    鍵掛峠の道は広くて歩き易いが、西側斜面にはまだ結構な雪があった。アイゼン無しで足早に下りる。


    根場いこいの里の萱葺屋根の家と富士山。3時53分到着、思ったよりも早く着いた。

 やや急ぎ足で登山道を下り、1時間ほどで根場いこいの里に到着した。持って行ったラーメンは食べずじまいで下山してしまったので、駐車場の傍らにあるおみやげ物屋さんでソバをいただいた。お店のおかみさんに山の上は雪が深かったという話をしたら、2週間ほど前に来た登山者は鍵掛峠の先が腰まで雪があって登れずに引き返してきたと言っていた。今日はまだ良いほうだったようだ。この程度の時間で歩けたのは先行した登山者のおかげ、重ね重ね感謝である。


 さて、この日は十四夜の月が登って来る日だ。田貫湖あたりで富士山山頂あたりに月が登って来るはず。ソバをいただいた後は朝霧高原・田貫湖方面に向かって車を走らせる。(十四夜・十五夜の冬月に続く)

十四夜・十五夜の冬月  平成25年2月24日・25日

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 平成25年2月24日

 西湖のほとり、根場から鬼ヶ岳を周回して下山後、食事を終えたのが午後4時半だった。この日は夕方5時過ぎに富士山頂あたりに十四夜の月が昇って来る日だった。場所は田貫湖よりやや朝霧高原寄りだが、田貫湖でもおそらくは見られるだろう。ということで、車を田貫湖に向かって走らせる。朝霧高原で富士山を横目で見ると裾野にもう月が昇って来ていた。急いで向かうが途中で曲がるところを間違え、人穴方向に行ってしまう。するとそのあたりに車が4〜5台、カメラマンが三脚を構えて待っていた。ここでも良いのだろうが、湖の景色を入れたかったので方向を変えて田貫湖へ。すると・・・意外にも車が少なく、楽勝で駐車場に止められた。既に富士山の右側から月が昇っている。予想では剣ヶ峰からだったがだいぶ予想がはずれた。三脚とカメラだけ持って、足元はサンダル履きのままで湖畔に行き撮影するがあまり面白い写真では無い。前景に葦の穂を配して田貫湖らしさを表現するもいまいちだ。

    田貫湖と十四夜の月


    十四夜の月昇る

 十数カット撮って移動、夕陽に染まる富士山と月を撮る良さげな場所を運転しながら探すが、そう簡単には行かない。猪之頭公園のところで富士山が焼けておりそこで撮影して夕暮れとなる。もう少し場所と時間を正確に割り出さないとうまく行かなそうだ。

    夕陽に染まる富士と月


    残照と月


    下部をカットして撮影したが、その下にはトイレの建物がある。


 平成25年2月26日

 この日の月の位置はほぼ正確に計算してあった。場所は猪之頭林道下部。しかし、十五夜の月だけあって(正確には十五夜に近い十四夜の月)日が沈んで暗くなってから富士山頂に姿を現す。富士山に露出を合わせると月の模様は消えて光の塊になってしまう。甲府を4時過ぎに出発したが時間が遅過ぎて間に合わないかもしれない。前日同様、朝霧高原まで行くと裾野から金色の月が昇って来ていた。西の低空に雲が出たため残照はもう消えており、白い富士山が立つ。ギリギリで間に合う時間ではあったが、あたりの木や草を見ると日中の強風が嘘のように止んで動きが止まっていた。ならば・・・池に映る逆さ富士と月、ふもとっぱらに行き先を変更する。風が止めば水面に富士山が映ってくれるはずだ。

    池に映る月と富士


    同上


    暗くなるにつれて月の光は輝きを増し、光が拡散する。


    十五夜の冬月昇る  10mm超広角レンズで空に伸びる木を前景に配置。


    もうひとつの池は後ろ側にある建物の照明を浴びて妙な色に映る。

 富士山頂に昇るパール富士にこだわらずとも、前景を工夫すれば面白い写真が撮れるのではないかと思う。

「山と花と星の奏でる音楽会」開催します。

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 2月に予定していたスライド上映会でしたが、インフルエンザが流行していたために延期し、下記日程で開催することとなりました。一部You-tubeで公開していますが、今回は星空やダイヤモンド富士のインターバル撮影を動画編集したものを含めて上映します。お時間の都合がつきましたら是非お越しください。





 私の勤務する社会保険山梨病院は現在新築工事が急ピッチで進行しており、5月に移転する予定です。今回は現在の建物で行う最後のスライド上映会となります。パンスターズ彗星が観察できる位置まで来ていますが、なかなか撮影条件が整わず苦戦しております。今回の上映会になんとかお届けできるようにと奮闘しております。

パンスターズ彗星迎撃なるか? 金峰山  平成25年3月9日−10日

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 現在話題になっているパンスターズ彗星は、3月10日に近日点(太陽にいちばん近いところ)を通過後、高度を上げて計算上では13日ごろから甲府盆地からでも夕暮れの西の空で見えるようになってくるはずである。しかし、3月9日の時点でも日没時に水平線から5度以上の高度のところにあり、条件が良ければ山の上から見下ろせば見えるはずである。ここのところ冬山に登るトレーニングをしていたのはこの彗星を撮影するために照準を合わせていたこともある。山梨県で最初にこのパンスターズ彗星を撮影してやろうという意気込みでテントとカメラ機材を担いで山に登る。いざ参らん、冬の金峰山!

 冬の恒例だった金峰山だが、頸椎を故障後はテント泊の装備を担ぎ上げるのに不安があり、2年ほど冬山テント泊からは遠ざかっていた。雪があるので水はあまり持って行かなくても大丈夫なのだが、あのpm2.5が混入しているかと思うとあまり使う気にはなれず、3リットル近い水を持って行くことにする。レンズも3本、さらに寒い夜中の撮影を考えて防寒具たくさん・・・20kg近い荷物となる。業務を終えてからの出発となったので、瑞牆山荘を出発したのは10時半になってしまう。

    いざ出発!結構な荷物です。


    富士見平下から見上げる瑞牆山。雪はあまり着いていない。


    珍しく凍りついていた富士見平の水場

 1時間少々かかって富士見平到着。空は青空が広がったが、低空には春霞が出て富士山は白くボヤけている。気温が上がってすっかり春の陽気となったのでこの程度の霞は止むを得ないのだろう。テントが3張りほど、既に出発した後だ。トレースはしっかりしているが、大日小屋手前の樹林帯の中はアイスバーンになっており、アイゼンを装着する。大日岩下の林の中はさらにツルツルのアイスバーン、慎重に通過する。午後2時過ぎに大日岩を通過し、樹林帯の急登を登り切って千代の吹き上げに到着したのは午後4時だった。前回下見に来た時は荷物が軽かったので余裕だったが、今回は既にヘトヘト、足がかなり疲れた。目指す五丈岩はもう目の前、ここで大休憩する。


    大日小屋。鷹見岩の向こうに南アルプスが見えるはずだが、白く霞む。


    八ヶ岳も春霞の中だが、雲は巻いておらず姿は見える。


    千代の吹上到着。目指す五丈岩は目の前だ。

 日没は午後5時40分ごろ、その前に到着したいが、ギリギリといったところだろう。陽はどんどん西に傾いて行くが、疲れた足は全くピッチあがらず、足が攣らないように小休憩をとりながら稜線を進む。そして5時20分、五丈岩に到着、日没にはなんとか間に合った。


    西に傾く陽


    長く延びる影。(こんなに足長かったか?)


    斜光射すシュカブラ

 テント設営は後にして三脚を構える。霞が出たおかげで夕陽は大きく赤く見える。綺麗な夕暮れだ。目的とするパンスターズ彗星の位置は日没の太陽の位置の少し左側、中央アルプスの左上あたりに出現するはずだ。双眼鏡を片手にそのあたりを念入りに観察しながら、ひたすらシャッターを切る。


    夕暮れの富士山


    夕陽が沈む


    日没の空  この視野のどこかにあの彗星がいるはず。


    どこかにいるはず。ひたすらシャッターを切る。

 双眼鏡で見ると低空にはかなりの春霞が広がっていた。そのため夕陽の光が拡散してしまい、なかなか低空の夕焼けが消えない。おそらくはその夕焼けの中にパンスターズ彗星は隠れてしまったのだろう。双眼鏡では発見できなかった。しかし、写真では写っていることがあるので、帰宅後念入りに画像を見たが・・・やはり写っていない。残念ながら山梨県で最初にパンスターズ彗星を撮影してやろうという目論見は、今回は失敗に終わる。

 結構強い風が吹いており、風を避けるために五丈岩の裏側にテント設営する。眼下には甲府盆地の夜景が広がるが、霞んでいる。さらに富士山もほとんど霞の中。しかし、双眼鏡で見ると南の低空に輝くカノープスはしっかりと見えた。計算上では6時20分ごろ、あれと同じくらいの高度で彗星が輝くはずだった。 


    霞む富士山と甲府盆地  見えますか?富士山の右脇に輝くカノープス。上空の明るい星はシリウス。

 食事を終えて9時過ぎ、外に出てみると空には凄い星空が広がっていた。山上で見る星空はやはり格別だ。今年はオリオン座と冬の大三角形にさらに木星が加わって、そのあたりの星空は明るい星4つが輝いていてひときわ賑やかだ。カメラを変え、今度のEos7DはIso感度2000に上げてもノイズが少なく綺麗に撮れる。ハーフ拡散フィルターの効果も良く、安定した星空撮影ができるようになってきた。


    五丈岩に輝くオリオン座と冬の大三角形  右手のひときわ明るい星は木星。


    同上(縦位置)


    金峰山山頂に輝く北斗七星とカシオペア座


    おおいぬ座とオリオン座  この後インターバル撮影約2時間、オリオン座が西に沈むまで撮影を行った。


    五丈岩と沈み行く冬の大三角形

 深夜12時ごろから風向きが変わったようで、さらに風も強くなりテントは隅が持ち上がるほどの強風に煽られた。テントポールが折れるのではないかと思うほどテントが揺れて歪む。もし飛ばされたら・・・3メートル先は崖っぷち、落ちたら命は無い。とても落ち着いて寝ていられるような状況では無くなった。ピッケルを深く突き刺してテントは固定してあるものの、安心はできないし、歪んだテントが頭や顔を叩くのでとても眠れるようなものではない。結局ほとんど眠れず、まだ暗い早朝5時にテント撤収し始め、6時には下山開始した。


    朝の五丈岩

 空は曇り空、景色はほとんど見えず、目も開けていられないような強風が稜線上を吹き荒れた。千代の吹き上げまで下りて一休みし、その先の樹林帯の中は風を避けられた。足の疲れもあるが、それ以上に寝不足で体がだるい。当直の後もそうだが、最近はめっぽう寝不足に弱くなってしまった。休憩をふんだんにとりつつ、9時40分、瑞牆山荘前の駐車場に到着した。ちょうど富士見平小屋の小屋主相川さんが車でゲートを通過するところで、お会いすることができた。昨年瑞牆山での遭難者を救助する際に自らが怪我をされたそうで、今でもその後遺症に悩まされているそうだ。無謀な登山者も見かけるそうで、注意しても言うことを聞かずに困ると言っていた。シャクナゲ咲く季節にまた訪れることを約束した。

 下山時は空模様がいまひとつだったが、冬型の気圧配置となったこの日は夕方になると霞や雲がすっかり消え、澄んだ夕暮れ空となった。もう1日早くこういう空になってくれればとちょっと悔しい思いがした。さらに悔しかったのは翌日のインターネットで検索したパンスターズ彗星の映像だった。撮影地は長野県原村。追尾した映像を10数枚加算処理して合成したものだが、確かに彗星が映っている。山の上から苦労して撮った写真ならば「負けた!」と素直に思うのだが、車で行ける場所から撮ったものに負けるのはかなり悔しい。合成では無く、1枚の写真できっちりと撮ってやりたいと思う。

パンスターズ彗星迎撃なるか?(その2) 茅ヶ岳  平成25年3月11日

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 近日点通過の1日前に高所からパンスターズ彗星を撮影してやろうと、3月9日金峰山に登ったがそのもくろみは見事に失敗した。そして今度は3月11日、高度が上がって来たはずなので、この山からなら見えるはず。彗星軌道から推察すると、甲斐駒ケ岳の右脇を通過する良い構図で写真が撮れるはずだ。今度こそは!気合を入れていざ参らん、茅ヶ岳!!

 午後2時半に深田公園駐車場から出発。冬季は大明神林道は閉鎖されているため車の乗り入れができず、いつも使う林道沿い駐車場からよりも30分ほど時間がかかる。花の視察を兼ねて女岩ルートでは無く尾根道を登るが、まだ時期が早く何も咲いていない。南アルプスの山並を見ながらひたすら登るが、気温が上がった割には空深田公園駐車場には気が澄んで雲は巻いていない。これならばきっと見えるはず。期待に胸をふくらませ、5時15分、2時間45分ほどで茅ヶ岳山頂に到着した。深田公園駐車場には5〜6台の車が止まっていたのでまだ誰かいるかと思ったが既に誰もおらず、皆女岩側ルートから下山したようだ。


    きれいに刈られた尾根道。花はまだ咲いていない。


    茅ヶ岳山頂。もう誰もいない。

 午後5時38分、甲斐駒ケ岳の右裾に夕陽が沈む。本日のパンスターズ彗星の軌道はほぼ太陽の軌道と一致している。その軌道上を探せばきっといるはず。照準を甲斐駒ケ岳と鋸岳に合わせて、双眼鏡片手に星を探しながらひたすらシャッターを切る。


    南アルプスに夕陽が沈む


    甲斐駒ケ岳の裾に沈む夕陽


    夕暮れの富士山


    日没直後の甲斐駒ケ岳。この視野のどこかにきっと・・・

 この日の夕暮れの空は金峰山の時よりもはるかに条件が良く、若干のモヤがかかるものの春先にしてはかなり透明度が良い。双眼鏡ではまだ彗星が見えていないが、今日は絶対に来る!とこの時点では確信していた。写ると信じてひたすらシャッターを切り続けるが・・・
 

    空気が澄み雲が無く、撮影条件は良好。この視野のどこかに絶対いるはず。

 本日のパソコンソフトでの計算では6時40分ごろに甲斐駒ケ岳の裾に彗星が沈んで行くはずだ。最も撮影に適した時間は6時25分から5分間くらいと予想していた。ところが・・・陽が沈んで急に空気が冷たくなってきた頃、突然雲が湧き出した。最初は山裾だけだったが、あっという間にその雲は活発に上昇を始め、6時20分にはすっかり茅ヶ岳山頂は雲に覆われた真っ白な世界になってしまう。雲の切れ間を縫ってシャッターを切るが、露出が合わず、さらにレンズの先端が結露し、そのうえ流れ行く雲に山が霞み・・・まともな写真にならない。もちろん肉眼では全く彗星は確認できず、双眼鏡で観察する余裕も無くなってしまった。こうして、ほんの10分の違いで今回の撮影も失敗に終わってしまった。しかし、帰って来てパソコンで撮影した画像を良く見てみると・・・。


    6時23分、雲が湧き始めた頃の甲斐駒ケ岳と鋸岳。


    上の画像をズームして見てみると・・・甲斐駒ケ岳の右上に光るものが・・・。


    さらに拡大。光が拡散している。これこそがパンスターズ彗星。


    6時26分、雲の切れ間を縫って撮影した白っぽい画像をパソコンで処理したもの。見えますか?パンスターズ彗星。


    拡大してみると、確かに尾を引いているように見える。

 6時40分過ぎまでシャッターチャンスを伺って待っていたが、完全に雲に巻かれ、頭上の星すら見えなくなってしまった。残念、あきらめて下山する。女岩側ルートを下山したが、霧で視界は5mほどしか効かず、茅ヶ岳はこんな急斜面だったかと思いながらひたすら下山。樹林帯の中は落ち葉が深くて登山道が見えず、何度か間違えつつも無事女岩まで下りることができた。あとは広い道をテクテクと歩くだけ、帰路はずいぶん長く感じた。8時40分、駐車場到着。

 とりあえずは彗星が写ったが全く満足できるものではない。おそらくは、これが山梨県で撮影された最初のパンスターズ彗星ということにはなるだろうが、これでは論外。しかし、今回の収穫は大きく、彗星の明るさや高度がほぼわかり、使うべきレンズの長さもわかって来た。次に条件が整えば、きっと撮れる、そう確信した。

夕暮れに沈む彗星(山梨日日新聞記事から)

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 平成25年3月14日の山梨日日新聞に掲載された記事です。




 原図はこちら。帯那山でようやく撮影に成功しました。山梨県初かどうかはわかりませんが、めでたく新聞記事に採用されました。



 帯那山のレポートは後ほど掲載します。

パンスターズ彗星迎撃なるか?(その3) 帯那山  平成25年3月12日

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 前日の茅ヶ岳でなんとかパンスターズ彗星の姿を捉えることができた。このおかげで、彗星の大きさや輝度、高度がほぼ把握できた。軌道はパソコンで計算すればほぼ正確に割り出すことができる。気象条件が整えば、今度こそは確実に撮影できると確信していた。

 3月12日は朝から青空が広がった。気温はさほど上昇しなかったが、日差したっぷりで午後から雲が湧くのを心配しながら空を見上げた。本日の行き先は甲府市北部にある帯那山。ここは山頂直下まで林道が通っていて、10分も歩けば南アルプスの展望地に行ける。午後5時ごろ甲府を出発し、りんどう突き当たりのゲートに午後5時40分到着。前日の茅ヶ岳は、日没後カメラが凍りつくほど冷え込んだので防寒対策をしっかりして撮影場所に向かう。既に西の空に太陽が沈んだ後だった。西の空には若干雲が出てはいたが、南アルプスの山並は良く見え、雲と雲の間に隙間がある。この程度ならば、昨日の感触からすると十分に写ってくれるはずだ。


    帯那山の林道。この手前にゲートあり、その先は車が入れない。


    南アルプスと夕焼けの空


    この空のどこかに必ずいる。日が沈んだ位置の少し右寄りなので、この時間ならば地蔵岳の上あたりにいるはず。

 日が暮れるにつれて空の雲は次第に薄くなっていった。双眼鏡で念入りに探すが彗星は見つからず、ズームレンズで撮影してもなかなか捉えることができない。だが、この空の状態ならば絶対に見えるはずだ。


    この視野の中に絶対にいるはず。


    パソコンでズームをかけてみると、予想通り、地蔵岳のほぼ真上で小さな光が輝いていた。

 時刻が午後6時半を回った頃、鳳凰山の右上に輝く彗星をカメラでようやく捉えることができた。予想通りの高さ、位置、大きさだ。さらにズームをかけて彗星を追い続ける。肉眼で確認しようとしたのだが、乱視混じりの近視の私の眼では見えなかったが、双眼鏡では確認できた。


    夕暮れの鳳凰山と右隅にパンスターズ彗星。


    鳳凰山地蔵岳とパンスターズ彗星。その右奥は仙丈ヶ岳。


    夕空に舞うパンスターズ彗星


    同上画像を拡大


    南アルプスに沈み行くパンスターズ彗星

 金峰山、茅ヶ岳と続いて、3度目の正直でようやくまともな彗星を撮影することができた。帯那山は標高約1,300m、前日の茅ヶ岳に比べると400mも低い。この日は条件が良かったのでおそらくはもっと低いところから撮影された方もおられただろう。
 自宅に帰ってパソコン処理後、職場でプリントして山梨日日新聞に投稿しようと思ったのだが、誰にどうやって渡せばよいのかわからない。こういう時は新聞社関係、県庁関係の人たちが集う焼鳥池田に行けばなんとかなる。池田の店長さんやお客さん等、新聞社関係に電話をしてくださり、午後11時に山梨日日新聞本社にプリントした画像とデータを届けた。さすがに翌日の新聞には間に合わなかったが、14日の新聞にはありがたく掲載していただいた。山梨県で最初にこのパンスターズ彗星を撮影して新聞に載せたいという夢を叶えることができた。

パンスターズ彗星を追って 帯那山再び  平成25年3月14日

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 山岳会のメンバー4人とともに、予定では山中湖の外輪にある鉄砲木の頭から富士山の裾野に沈んで行く彗星を見るはずだった。甲府を出発する時には西の空に青空が広がり始め、甲斐駒ケ岳が姿を現し始めていた。ところが、御坂峠にさしかかるあたりからみぞれとなり、トンネルを越えると雪になった。河口湖のコンビニに立ち寄り、雲画像と天気図を見ると回復してきそうな様子だ。とりあえずは山中湖のパノラマ台まで行ってみることにする。3時半パノラマ台到着したが、そこもまた小雪が舞っていた。空を見上げても青空はどこにも見えない。しかも風が無いので急速に天候が回復するとは考えにくい。ここで待っても彗星の観察は無理と判断し、甲府に戻っていちばん行き易い場所、前日と同様に帯那山に行くことにした。


    到着したのは日没後。西の空が赤く染まっていた。


    雲は多いが空気は澄んでいる。これならばきっと・・・

 到着したのは午後5時45分、ちょうど西の空に日が沈んだころだった。雲は多いが前日雨が降った後で空気は澄んでいる。これならば彗星は観察できそうだ。観察地までは10分ほどで到着し、まずはみんなでワイワイ騒ぎながら腹ごしらえをする。時間が6時半近くになった頃から双眼鏡片手に本格的に撮影開始する。


    今日の彗星の位置はこの月の真直ぐ下あたり。雲が多いが隙間からきっと姿を見せるはず。


    雲の切れ間に突然姿を現したパンスターズ彗星。位置的には甲斐駒ケ岳の左上あたり。山が写らないのが残念。


    パンスターズ彗星

 この日は空気の透明度が良く、近眼・乱視の私の目でもオレンジ色に光るこの彗星を確かめることができた。6時45分、ほどなく彗星は山の上にかかった雲の中に吸い込まれてしまった。偶然にも月と一緒の構図で構えた中に、1カットだけ雲間に輝く彗星が写っていた。


    雲の上を流れるパンスターズ彗星


    同上(拡大)


    月と彗星


    同上、彗星部分を拡大

 これから日ごとに光度を減らして行くパンスターズ彗星、かつ月の明かりで観察条件も悪くなって行く。あと何日追えるのか、追えるだけ追ってみたいと思っている。

あの彗星はいずこへ? 夕暮れの三ツ峠  平成25年3月15日

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 春めいた陽気となり気温が上昇し春霞がだいぶ多くなってきた。高気圧におおわれたこの日、日中は雲ひとつない青空が広がった。しかし、甲府盆地から見渡す山並は霞んで見える。しかし、この程度の霞ならばきっとあの彗星は見えるはずだ。夕暮れ時を狙って三ツ峠に登る。

 平日のしかも夕暮れ時の午後4時ということだけあって、駐車場に止まっている車はほんの数台だった。林道はアイスバーンになった雪が残り、登り始めてすぐに軽アイゼンを装着する。登りながら4〜5人の登山者とすれ違ったが、アイゼン無しで登っている人がいるのにはちょっと驚いた。

    まだ雪が残る登山道。アイスバーンになっていて滑る。


    振り返ってみる夕暮れの陽。日没にはギリギリ間に合いそうだ。


    三ツ峠到着。夕暮れの陽に赤く染まる。

 夕暮れギリギリの5時半、三ツ峠裸山に到着する。裾野は霞んでいるが、眼前に富士山が大きくくっきりと見える。山頂に登る前に、山頂下の展望地(カメラマンが良くいる場所)で三脚を構えて日没を待つ。西には御坂山塊越しに南アルプスの山並がずらりと並ぶが、こちらは霞が多い。そして間も無く黒岳の左側、荒川岳あたりに赤い夕陽が沈んで行った。

    裸山から見る富士山


    南アルプスに沈む夕陽


    夕暮れの三つ峠


    雲流れる富士


    残照富士


    夕焼け空の富士  雲が赤く染まるのを期待したがあまり焼けず。

 富士山の残照がすっかり消えたところで山頂に移動する。時間は6時10分、そろそろヘッドライトが必要だ。空には美しい三日月が輝く。双眼鏡を取り出し、西の空を探すが西の空は低空に霞が多く黒い雲も出てあの彗星は見えない。おそらく見えてくるのは6時半ごろからだろう。望遠レンズに切り替えて、本日沈んで行くであろう白根三山に照準を合わせて待つ。

    夕暮れの三ツ峠山頂


    三日月が昇った西の空。低空には黒い雲、しかし、その隙間からきっと出る!

 2等星程度の明るさとは言え、肉眼で見るのはかなり難しいパンスターズ彗星だが、カメラで撮影すると少しの霞ならば十分に透過してくる明るさだ。雲の切れ間からきっと出ると信じてシャッターを切っていると・・・突然雲間から尾を引く彗星が姿を現した。やはりこのくらいの霞みと雲ならば十分に写ってくれる。この日は肉眼で見ても双眼鏡で見てもこの彗星は確認できなかった。

    雲間から現れたパンスターズ彗星


    白根三山を舞うパンスターズ彗星


    同上、拡大。農鳥岳に向かってまっしぐら。


    農鳥岳に沈むパンスターズ彗星

 ズームを最大の300mmにして撮影を試みたが、光量が減るため画像が暗くなり解像度も落ちる。さらにピントが合わず、農鳥岳に沈む直前の画像はいまいちになってしまった。

 ついでといってはこの星に失礼だが、きっと三ツ峠からならば見えるだろうと予想していた星、カノープスにレンズを向ける。オリオン座と冬の大三角形が南中した頃に富士山の左裾に見えるはずだ。肉眼では見えなかったが双眼鏡で探すと容易に見つけることができた。

    町明かり灯る夕暮れの富士  右裾野にはあの星が輝く。


    町明かり輝く富士とカノープス


    雲間の月と甲府盆地の明かり

 7時20分ごろまで撮影して、さて下山。アイゼン装着していたので土の道よりむしろ雪道の上のほうが歩き易い。ところが、あと10分ほどで駐車場というところで左足のアイゼンがガチャガチャと音を立て始めた。見れば、アイゼンの鎖が見事に切れて外れていた。左足のアイゼンを外し、右足だけで下山することとなったが、駐車場が近かったので難無く下山した。ついでに、翌日別の山に行こうとした時に愛用のストックを駐車場に置き忘れて来たのに気付く。さらに、アイゼンが壊れたのをすっかり忘れて出かけたため山に登れずにあきらめるという失態。ストックは数日後の山帰りに立ち寄ったところ、トイレの外壁に立てかけてあった。傷だらけの年季が入ったストックだけに誰も持って行かなかったようだ。

 

富士に沈むパンスターズ彗星撮影ならず 金時山  平成25年3月17日

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 朝から好天となったこの日だが、低空には春霞が出てしまった。気温が上がり過ぎたのだろう。予定ではこの山に行くのは3月20日のはずだった。この日の夕方、追いかけているパンスターズ彗星がちょうど富士山の真上を飛ぶからだ。しかし、天気予報から推察して20日に彗星を撮影できる可能性はきわめて低い。山頂からは外れるが、富士山と彗星を同時に撮影出来るチャンスは本日と19日のみとなる。夕方の空模様が気になるが、まずは御殿場まで行ってみることにする。

 金時神社からの入山を予定していたが、その前に足柄峠に行ってみることにした。金太郎富士見街道なる道を行くと、右手に御殿場の町並み越しの富士山がきれいに見える。途中で写真を撮りながら足柄峠に到着したのは10時40分だった。城跡、関所跡、聖天堂などを見学する。
    金太郎富士見街道から見る御殿場の町と富士山


    足柄峠城跡


    城跡から見る富士山


    足柄峠関所跡(この関所は本物では無く、黒沢明監督が映画で使ったセットをここに設置したもの)


    聖天堂

 30分ほど見学したところで時間は11時を回る。夕暮れの彗星狙いならば、金時神社から1時間半もあれば山頂に到着できるので、時間的にはまだ相当の余裕がある。しかし、空模様を見ていると富士山のまわりにはどんどん雲が増え出して、夕方までは持ちそうに無い。彗星を撮影出来る可能性はきわめて低いので、本日は下見に行くつもりで足柄峠から歩いてみることにした。
 峠の先まで林道が続いているが、その先はダートの道になっており、入口には「この先チェーンが必要」なる看板が立っていた。きっと悪路なのだろうと思って峠から歩くことにしたが、それにしては林道に入って行く車を何台も見かけた。歩いてみると、ダートの道はほんの少しでその先は立派に舗装された道になっていた。距離にして2km強だろうか、30分ほど歩いて林道突き当たりゲートに到着、そこに駐車スペースがあり、たくさんの車が止まっていた。

    足柄峠の先は悪路・・・かと思いきや、すぐにアスファルトの良い道になっていた。


    歩くこと30分強、ゲート前の駐車場に到着。林道を歩いていたのは私だけだった。

 ゲートを過ぎると今度は本当の悪路になる。子供連れの登山者がたくさんおり、どうやら相当整備された道らしい。折角山に来たのにこんな林道を歩くのは面白く無いので、林道を逸れて右の林に入ると、そこはティッシュペーパーが散乱。トイレ代わりになってしまっているようだ。今度は左の林に入ると、そこには林道に沿って明瞭な登山道がついていた。誰も会わなかったが新しい足跡がある。山に来た雰囲気を味わいながら、向こうに見える金時山目指して進む。

    ゲート先のダートの道


    左の林に入ると、笹原と広葉樹林帯の良い雰囲気。向こうに見えるのが金時山。


    発見、ウバユリの種

 やがて道は林道と合流し、再び林道を歩くことになる。ほどなく猪鼻砦跡の休憩地に到着する。時間は12時35分、予想通りこの頃には富士山はすっかり雲におおわれて姿が見えなくなってしまった。

    猪鼻砦跡の休憩所。向こうに見えるはずの富士山はすっかり雲に巻かれる。


    林道終点。荷揚げをするためと思われる小屋がある。車は金時茶屋の方のもの。

 林道終点からはいよいよ本格的な登りとなる。階段12本が連なる急登だが、ステップがしっかりと作られていて整備されている。途中には休憩ベンチも設置されている。普通の人ならば30分ほどの行程らしいが、ここを45分かけて登り、午後1時40分、山頂に到着した。足柄峠から2時間半かかったことになる。

    林道終点からは本格的な登り。階段12本が連なるかなりの急登だ。


    途中に設置してある休憩ベンチ


    こんな急登りのところもある。


    ようやく山頂。


    山頂は人がたくさん。あちらこちらの登山道から次々にやって来る人、下山して行く人。

 人気の山だけあって山頂にはたくさんの人がいた。有名人の金時娘さんお目当てに金時茶屋に立ち寄ると、腰は曲がっているが元気いっぱいの声、金時娘さんがお出迎えしてくれた。お歳は80歳になるそうで、数日前に産経新聞に記事が載ったばかりだそうだ。お店のお得意さんが次々にやって来て声をかけあっている。食料と水、バーナーは持ってきたが、ここは金時茶屋の名物金時豆入りおしることソバをいただくことにした。2人で来たと思われたらしく、箸が2膳出て来た。

    金時茶屋でいただいたおしることソバ


    見渡す箱根の山々と芦ノ湖

 おいしくいただき、ゆっくり休憩させていただいて2時20分から下山開始。急傾斜に気をつけながら下山し、林道は小走りに歩き、3時半に足柄峠の駐車場に到着した。

 パンスターズ彗星と富士山のコラボレーションはおあずけとなってしまったが、チャンスがあればもう一度登りたいと思っている。
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